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味の記憶と書いて、味憶(みおく)と読む。なるほど。
食エッセイの命とも言える、たべものの表現が素晴らしい。
読む時間に気をつけないと、おなかがへって困る。いや、そのほうがいいんだけれど、でもやっぱり困る。
普通、昔たべたものの記憶は美化されていて、今同じものをたべるとがっかりすることが多いと思うのだが、このエッセイでは今も変わらない味が保たれている。
この前向きさも、この人の魅力だ。
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著者山本一力の思い出に残る味とお店のエッセイ。けっしてグルメな料理店紹介エッセイではない。著者の記憶に残る幼い頃の出来事、若き日の想い出と料理店との出会いを書いている。このように「味」と出来事の「記憶」というものは結びつくものか。確かにあるものを食べると昔の出来事を思い出すと言うことはある。これを著者の巧みな筆によって至極のエッセイにしているのである。著者の半生を知ると共に昭和の懐かしく、暖かい雰囲気の料理と店(当然今も続くお店ばかりである)を知ることができる。ほとんどが東京の店であるが、京都の2店も登場。なるほどと思わせるレトロでありながら、老舗の紹介だと感じ入った。
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作家さんが記した食に関するエッセイにはハズレがほとんどない。ましてやそれが時代小説家によるものであれば。本作も期待に違わず食事やレストランに関する珠玉の文章に溢れている。「味憶」という造語はしっくりこないが、味覚がいかにプリミティブに記憶を刺激するかを言外に説き、うまそうな食い物をどんなグルメレポート番組より見事に具象化してみせる著者の力量には敬服するのみである。
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歴史小説家、山本一力さんのグルメなエッセイ。
山本さんが出会ってきたステキなお店と食事について、
エピソードとともに綴っている、
味の記憶=「味憶(みおく)」のエッセイ集。
この人の小説がけっこう好きで、
周五郎読み終わったらたくさん読みたいなと思ってるんですが、
山本さんについて知らないことがけっこうたくさんあった。
まず、会社員経験がかなり長いんですね。
小説家デビューは50近くになってから。
この本で紹介されているお店の多くも、
会社員時代に見つけたお店だったり。
そして、山本さんは1948年生まれ。親父と一緒だ。
うちの親父はそれほど美食家じゃあなかったから、
どうということもなかったんだけど、
子ども時代に何食ってて、大きくなるにつれて出会った食べ物への感動とか、
やっぱり高度経済成長の時代に育った人とはちょっと感覚違うんだろうなーと、親父の飯の好みを思い出したりながら読みました。
面白かったです。
そんなに行きつけのお店って持ってないけど、
おいしい食事をいっぱい知ってるというのは、
やっぱり人生が豊かになりますよね。
外食にしろ、自炊にしろ、食事を大切にしよう、と
就職以来すっかり乱れまくった食生活を改めたくなりました。