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紙の本
西遊記を徹底的に「探偵」
2009/12/30 21:51
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:狸汁 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「西遊記」の解説本と思って購入したのですが、これは「解説」ではなく「解読」といったほうがいいでしょう。さすが中国文学の第一人者で、西遊記を翻訳した方だけあり、まるで探偵のような緻密な推理力で、西遊記という大伝奇小説を探究しています。3章からなりますが、第一章は、三蔵法師、孫悟空、沙悟浄、猪八戒の主要メンバーを考察しています。
なぜか日本のテレビや映画では、故夏目雅子さんをはじめ、深津絵里さんや牧瀬里穂さんら「女優」が演じています。なぜそんな「女々しい」というイメージが出来上がってしまったのか、本書はその考察から始まります。
三蔵法師はインドの向かってお経を手に入れるため長い道のりを踏破したわけですから、いってみれば冒険家です。業績をもとにイメージすれば、強く、いかつい男でも不自然ではありません。著者は莫高窟の石像や昔の図版をもとに、時代ごとの三蔵法師像を探ります。すると、「ハンサムで女々しい」というイメージではない時期もあったことが分かりました。虎を連れたむくつけき法師の姿もあったのです。
詳しい説明は本書に譲りますが、女々しいというイメージになったことは、物語として伝承される間に、従者との関係性から女性的いなっていったようです。力強さは孫悟空に。俗人性は猪八戒になどとイメージが「譲渡」されていったというのが、著者の推理です。西遊記は史実をもとにして、長い間に脚色され、明代に小説として成立するまでに、それぞれがキャラ立ちしてきた、と著者はにらんでいます。
孫悟空については、こう書いています。「『西遊記』を注意深く読んでいくほどに、『孫悟空』はサルかな?という疑問が次々と生まれてきました。そしていろいろ考えているうちに、孫悟空は龍でもあり、石でもあり、金属でもある、と結論づけることができました」。孫悟空にまつわる伝承をひもときながら、孫悟空のイメージの多様性をたどっています。
ほかの2章は「『ならべる』世界」「『もぐりこむ』世界」とユニークなタイトルがついています。なぜ西遊記は、百科事典のように羅列が多いのか、洞窟や瓶のなかかに「もぐり込む」というエピソードがたくさんあるのか、なぜ猪八戒はダジャレばかり言うのか…楽しい話題が続いています。
西遊記は単なる娯楽作品ではなく、「迷路」のようだと著者は強調します。「家一軒を建てるような建築思考なしには『西遊記』の世界は成り立たず、いかにもエピソードを「ならべた」だけの並列構造であるかに見せながら、じつは建築物にも似た緊密な立体構造になっている」という分析をします。
西遊記研究では右の出る人のいない碩学であり著者が、西遊記を「迷宮を探偵のように探っていく」という一冊。読者もわくわくするような迷路・迷宮のなかに連れていかれることでしょう。
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