紙の本
運命の正体に迫る勢いの完結編!
2016/06/04 17:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
が、『2』に入るとどうも雲行きが急速にあやしくなる。 史学生は歴史に関与してはいけないというか、そもそも関与しそうなときにはネット(タイムマシンのことです)は開かないから、<ネットが開く=その時代に行けた>ということは学生が何をしたって大きく歴史には影響を及ぼさない、というのがオックスフォード大学史学部ダンワージー教授の大前提だったのだが、『ブラックアウト』冒頭でイシカワ教授に「それはあまりに楽天的な考えで、目に見えないような小さな積み重ねが大きなうねりを引き起こすこともある」的なことを警告され、ダンワージー教授はずっと不安を抱えていたわけですが(学生たちの降下スケジュールを次々キャンセルしたりね)、ここにきて再登場したダンワージー教授はすっかり老けこんでしまって、『ドゥームズデイ・ブック』で発揮していたリーダーシップは影も形もなくて、すごく悲しくなってしまった。
そして1995年の大英戦争博物館での出来事もはさんで、大方の流れはわかってきたぞ、と思っていた私に、ラストまであと80ページを切るぐらいのあたりから怒涛のように感情の波が押し寄せてきて、取り囲まれて、ポリーのことを自分勝手だと思ってイライラしたこともあったのに、全部そんなのすっ飛ばしてもう最後のページまで涙が止まらないのである。
名に聞こえし悪童、さんざん手こずらされたビニーとアルフのホドビン姉弟がこんなにも成長するなんて!(泣いてしまう要因はそれだけではないんだけど、これ以上語るとネタバレになるから)
サー・ゴドフリーも、教区のグッド牧師も(絶対帰ってくると思ってた!)、大好き!
だからコリンとポリーは結構どうでもいいや、とか思っていたのですが、ラストシーンでわかる事実に、またも「うおぉ!」と叫びたくなって(はっきりとは書かれてはいないんだけどね)、時空連続帯はカオスだけれど必要なところはちゃんとつなげていくんだなぁ、という、運命の正体のようなものを見たような気がしました。
でもそのために、大きな犠牲を伴った・・・。
だが、それはタイムトラベルをする学生たちだけに起こることではなくて、大きな災厄を前にした時代人(つまりはあたしたちのことである)すべてに共通すること。 いきなり死んでしまうかもしれない、誰かのために自分の身を顧みず行動しなければならないときもあるかもしれない、からくも生き残ったら次代のために何ができるかと精一杯生きなければならない。 ロンドン大空襲を生きのびた人々のように。
・・・はぁ、魂を持っていかれた感じ。
泣きはらした顔で仕事場に行けないぜ。 濡らしたタオルでまぶた冷やそうっと!
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どうなるかなー、絶対まとまらないだろうなー、と思いながら読んでいましたが、
全ては収まるところに収まるのでした。
コニーウィリス恐ろしい。
泣きそう。
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タイムトリップの話は、コニー・ウィリスが一番だと思う。
超長編作品である本作品は読み応えがあった。
1941年~1944年~2060年との行き来が描かれているのだが、第二次世界大戦の様子やその時代から生きて帰れるか帰れないかの瀬戸際のハラハラドキドキ感がよかった。
登場人物がたくさん出てきて、どの時代の誰だったか理解するのに大変だが、人物それぞれの個性や、戦争時代を生き抜く強さなどが表わされていてよかった。
結末もすがすがしい。
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コニーちょっと書きすぎ.
第二次大戦下の英国が舞台のタイムトラベルSF.
ヒューゴー、ネヴィル、ローカス三賞を総なめにした傑作大長編の完結編.
人物、場面があちこちに飛びまくるので、ついていくだけで精一杯.
でもSFの枠に収まらない、不屈の人間ドラマは静かな余韻を、どこかに残していくのでした.
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確かに面白い。でも長過ぎ。長かったゆえに読み終えた時の達成感はあるが、それとこれとは別だろう。後半は飛ばし読み。それでも十分楽しめた。
ここから先はネタバレに近い。
この構成力には驚かされる。よく考え抜かれている、の一言で終わらせるのは失礼。素晴らしい。そこに感動する。
でもいわゆる叙述トリック。このトリックに気が付けば、面白さは半分。
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後半一気にきました!
さすが女王!さすが大森訳!
コリン良かったね!と思うも、ダーンワージ先生がなにか「ドゥームズディブック」の仕切りのよさの片鱗もなく・・・頑張って欲しいです。
都合3冊。面白かったー!
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『ブラックアウト』『オール・クリア1』まとめて。
途中、本筋にからまないドタバタ続きにちょっと飽きてしまっていたのだが、さすがに物語巧者、『オール・クリア2』では話のスピード感も緊迫感も増して、一気に読めた。ポリーとサー・ゴドフリーの別れのシーンや、アイリーンの決意にはつい涙腺が潤み、これまでの長い長いドタバタは、ラストで感情移入させるためにあったのか、と思ってしまったほど。
…というわけで、ポリー、アイリーン、マイクの「喜劇」には惜しみない拍手を送るのだが、話の背景となる戦争やロンドン空襲については、どうも皮肉な感想が出てしまう。空襲に耐えた人々を「戦争の被害者」ではなく「名も無き戦争の英雄」として描くのは、結局最後がVEデイで終わるからなんだろうな、とか。時空連続体からも「悪」として真っ向から否定されてしまっているドイツだけど、史学生がオックスフォードではなくミュンヘンとかベルリンの大学生だったら、どういうことになるんだろうかな、とか。
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前半話がすすまなかったその伏線たちを全て拾って歩いて、急展開して何もかも一気に収束させる技術はさすがとしか云いようが無い。そして3賞総ナメで予想はしていたが、後半至る所で泣かせに来る。でも先生も意気消沈しちゃったし、危ないし、これでもう史学生ものは完結、ということなんだろうか。何が泣いたって、大人になったコリン。青春の全てを費やして先生とポリーを探すなんてね。でもアイリーンが未来の家族について一言も言及しないのは気になった。そして読み終えたらすかさず「ドゥームズデイ・ブック」を開いて確かめるべきことがあるので、やっぱり完結なのかなあ。このシリーズ大好きなのに。
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全3冊読み終わったけれど、どうなんだろうな~?これは、時間ものと言えるのかな?評価しずらい作品と言える。
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最高です。もう夢中になって読みふけってしまった。こういう読書がいったいどれくらいできるものだろう。早くも今年度ベスト1に決定!
まずは目次を見て、ああかこうかと推測する。一九九五年?帝国戦争博物館?なんだそりゃ? ラストが一九四一年のロンドンになってるよ? 二〇六〇年のオックスフォードに帰るんじゃないの? 頭に渦巻く疑問。でもでも、読み終わる何時間後かにはすべて明らかになってるんだ。これほど楽しい気分もそうそうない。なんてったってコニー・ウィリスだもの。
「ブラックアウト」「オール・クリア1」の二冊を横に置いて、む?と思ったらすぐ前のところを読み返しながら、ずんずん読み進む。なかなかお話が進まずもどかしかった「1」とは打って変わって、三人の運命はスピーディに展開していく。読者の予想を小気味よく裏切りながら、これまでの伏線がどんどん回収されていく後半は、お見事!の一言だ。
いったい三人はどうなるの?と息を詰めて見守りつつ、全体を貫く強いメッセージに何度も何度も心を揺さぶられた。それぞれの場でそれぞれの「分をつくす」名もない人たちの営為によってこの世界は成り立っている。自らの努力の成果を知ることなく、讃えられることもなく、死んでいった膨大な人たちに対する心からの敬意がここに込められていることを、ひしひしと感じた。
この物語には実にたくさんの人が登場するけれど、ストーリーのためだけに存在する人がいない。みんな、その人として生きている(こういうところも含め、宮部みゆきさんとの共通点をよく感じる)。セント・ポール大聖堂のミスター・ハンフリーズ、教区牧師のグッドさん、サー・ゴドフリー、ダリッジの看護部隊の面々…、忘れがたい人たちばかりだ。
ラストに近づくともう涙をこらえられない。いくつもの別れの場面に泣けて仕方がない。トラファルガー広場でアイリーンがポリーの後ろ姿につぶやく言葉「私たちこれから大親友になるのよ」には、タイムトラベルの切なさが詰まっている。
八年がかりで執筆されたというが、まったく複雑な構成で、しかもそれがわかりにくくないところがすごい。非常に綿密に組み立てられているからだろう。読み返したらいろいろ発見があるに違いない。これも楽しみだが、しばらくはこの余韻に浸っていたい気もする。いやあ満足しました。
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アイリーンちゃんが終わり間近でいうセリフで涙腺決壊。その前にもダダ漏れでしたが。
古典的解釈のタイムトラベルもののスペックをフルに使い切って書かれた物語。
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やっと完結・・・。待ち遠しかった・・・。
長編は読みごたえがあってとてもうれしいのだけれど、待つのはつらかった!ブラックアウト、オールクリア1、と、もう、なんでここで終わる~~、というかんじだったので。
でも、待ったかいがありました。やっぱり面白かった!
読み始める時は、こんな長いの読めるだろうか・・・という不安があるのですが、読み始めるともう止まりません!!
後半は、これまでの謎がどんどんと明らかになってゆくので、ノンストップで一気読み!
「ドゥームズデイ・ブック」「犬は勘定に入れません」ときて、このシリーズの中では一番のめりこんだし、登場人物もみんな好きでした。楽しくて切なくて、読み終わった後、しばし余韻に浸っていました。長く待った分、余計にそう感じるのかな。並んで食べたラーメンがとってもおいしいように(?)
今度は、ブラックアウトからもう一回、通して読み返したいです。
細かい部分を忘れていて、たぶん面白さを100%味わえていないので。
さらにそのあとは、シリーズ全部読み返したいかも。ほかの方のレビューを見てさらに思いました。
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待ちに待った完結編.怒濤の展開で土日の2日だけで読み終えてしまった.全てのエピソード(人物)がハッピーエンドを迎えるとは言いきれないが,でも,ねじくれたストーリーの全部にちゃんと落とし前つけて終わっているところはお見事.後半でポリーがたどり着く”連続体の理論”は,果たして正しいんだろうか? 分厚い3冊を読み通す価値はありますよ.
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ついに来ました完結編。溜まりに溜まったフラストレーションも怒涛の伏線回収で一気に解消。ちょっぴり切ないラストも素晴らしい。
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遂に読み終わってしまいました、怒涛の完結編。こんなに待ち焦がれた最終巻もありませんよ、ホンマに。
「オールクリア1」まで拡げるだけ拡げた風呂敷が次々に畳まれていく、しかも綺麗に丁寧に。
新たに1995年(帝国戦争博物館)が挿入され、これがまた涙を誘います。約束通りあきらめずに何年も(8年!)ポリーを探し続けたコリンの愛情と執念。そして、タイムパラドックス上止むを得ない事ながら苦渋の決断をしたアイリーンの使命感とホドビン姉弟への愛情。
「悪名高きホドビン姉弟、恐怖のホドビン姉弟、恐るべきホドビン姉弟」全編を通じて大迷惑の姉弟が、アイリーンの愛情に応えて最後は時を超えたメッセンジャー役を演じます。
そしてそして待ってました!満を時して回収チーム、コリンが登場、全員が帰れないのはちょっと悲しい、でも素晴らしいエンディングでした。新しい仕掛けは何も無い、タイムトラベルとタイムパラドックスだけでこれだけ読み応えのある大長編にしてしまう、コニーウィリス凄いです。
昨年10月に「ブラックアウト」を読んでから約9か月、1770ページ!(ページ数勘定したら卒倒しそうになります)読み応えありました。暫くは余韻に浸りたいと思います。