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上巻の怪しい雰囲気がさらに加速する下巻。
いったい何が正しくて、何が嘘で、何が錯覚で、何が思い込みなのかますますわからなくなっていく。。。
混沌とした展開にどうやってケリをつけるのか?という一点が気になって、結末に向けて一気に読めるのだが、夢オチに近いような第三者的視点が覆いかぶさるだけ。
ここまで混沌とした大きな風呂敷を広げたならば、どっかから吹いてきた風に風呂敷が吹き飛ばされて終わり、のようなスタイルではない終わり方がよかった。
阿部和重氏にしてなお、こういう展開の決着は、神様みたいな感じの視点で締めるしかなかったのかと思うと、かなり残念な結末であった。
無理に決着をつけなくてもいい物語だったのでは?
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「シンセミア」の続編。
同時期のまた別の奇妙な家族のお話。
ここでもまた、長さを感じない、話の展開と
流れっぷりが堪能できました。
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川上未映子の夫である点と、筒井康隆の帯で手に取った。
最初は可愛い感じの文章とイメージだと思った
だんだんどろどろワクワクのSFっぽくなって来た。
読み進むうちに文章自体の発想のすごさに驚いた。
日記や古文やガイドブックやブログなど様々な様式の文章が織り込まれる。
この小説を解説しているプロの作家さんも文章自体に注目している感じだ。
僕は、文章にも驚いたけどストーリーもとても興味深く楽しめた。
この小説で語られる「家系の中で秘儀を伝承して行くという宿命」は、
実はどんな家族においてもあることなのではないかと思う。
もちろん小説の様な秘儀ではないけれど、なにか独自の習慣。
そして家族の中で洗脳されるかのように、その伝承される習慣、考え方からは逃れられない。
そういうテーマもありつつ、可愛くてドロドロしててワクワクする小説だ。
解説でびっくりしたのは、神町が実在する町だということだ。
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読後感がとても気持ち悪い。嫌いな登場人物がいるわけでも結末が許せないわけでもないのにこの後味の悪さ。解説の筒井康隆氏の言う通りだと思う。あと、世の中って、人間って怖い。
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「シンセミア」の続編や言うから読んだんやけど、シンセミアがおもしろすぎるからなぁ、なかなかあのレベルを想定しちゃうとキツいわね。いや、コレはコレでおもしろくないかと言われれば十分おもしろいねんけども。やはりスケールの違いか。
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本作は神町トリロジー三部作の二部作目に当たる。前作の『シンセミア』とは少々違った書かれた方がされており、一貫して回想形式のような語りになっているが、その理由は記憶を操作する術を代々受け継ぐ菖蒲家が舞台であるからであろう。
その菖蒲家が記憶を操作する以上、何を語られても信用していいものなのか疑惑が残るはずだが、それが最小限に抑えられてるように感じるのは、語り手が重層的に変わるからである。主に語り手は菖蒲家の二女の菖蒲あおばと書店の経営者の石川の2人であるが、最後は、また別の怪しい組織が調べた菖蒲家についての報告書のような形式の文章で終わる。
第三者からの視点が複数あるために、記憶を操作する菖蒲家の内実についての語りがある程度の信用を担保され、『シンセミア』ほどの急展開はないにしても、ダレずに読めるのであろう。
『シンセミア』と『ピストルズ』の関係でいえば、前作は謎や空白をあえてそのままにしたアイロニカルな語りであったが、本作はその謎や空白に対して謎解きのようなある種の解答を与えた部分があった。
それゆえにストーリーの展開が相対的にゆっくりめであり、書かれた言葉もそれに合わせるように静的でいて幻想的なものが多かったように感ぜられた。
ゆっくりな展開をどう評価するかは、本作を一つの作品としてみるか、三部作の他の作品との関係や位置づけを加味するかでかなり変わってくるのかもしれない。
それゆえにますます三部作最後の『オーガ(ニ)ズム』が楽しみである。
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タイトルは「めしべたち(Pistils)」の意。
一子相伝の秘術の継承候補者がすべて女子(4姉妹)だから。
とても長い。しかも大半が登場人物が回想を語っていく形態。物語への引き込まれ感が薄く、これは紙の本だと挫折したかも。
オーディブルで半ば流し読み気味に読了。
しかし、ストーリーというよりこの冗長さに意味がある。解説の筒井康隆氏によれば、文章だけをもって読者を一種の幻覚に引きずり込もうと企んだ壮大な文学的実験なのだそうだ。
ー 真に小説が好きな人間へのプレゼント
…というが笑。
小説好き上級者こそ楽しめる作品、なんだろう。
阿部さんの小説は定期的に味わいたくなる不快さに満ちている。不思議な魅力がある。
♪The Sky Children/Kaleidoscope(1967)