紙の本
マッチで吸う煙草の味
2015/09/27 03:51
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投稿者:タンポポ旦那 - この投稿者のレビュー一覧を見る
SPレコードを軸に、時間と空間を行き来しつつ、集束へと向かう物語は、吉田篤弘ならではの面白さに満ちている。
だが、最も引きつけられたのは、バンシャクとハイザラの鉄道終点への冒険。この部分のワクワクする感じは、稲見一良の「男は旗」や「花見川のハック」を読んだ時の高揚感を思い出させた。これは、少年時代に親しんだマーク・トゥウェインやアーサー・ランサムの雰囲気でもある。他の吉田作品には余り見られない魅力を感じた。
また本作には、今では希少価値となったマッチ(燐寸)で火をつける煙草の味が良く似合う。
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投稿者:september - この投稿者のレビュー一覧を見る
回るよ回るレコードがいつかの78回転だったあのころへ。つながり触れかすめときおり顔をのぞかせる。吉田さんの本は不思議な感覚につなげてくれる。
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もし私に小説が書けたなら、こんな小説を書きたかった。
読み始めて半分を過ぎたころ、そう思った。78回転のレコード。空気を震わす音の波。
古くて傷のついたレコードがぼくの宝物だ、でも蓄音機がないから聴けないんだ−−。そう嘆く少年、バンシャク。
音はどこへ行くのだろうか、と、行き詰った三角関係から逃げ出してきたマスター・アイボリー。
父親の残した形見の楽譜の曲を求めて旅に出る青年、塔に住む七人姉妹。
短い十三のお話が、静かに音を立てて胸に落ちてくる。
胸の中でふだんはしまっておく部分、−−人に話したらロマンチストだと笑われてしまいそうだから−−そんな部分をかすかにくすぐる。
この本はそんな本だ。
事情があって急いで読了してしまったが、この本は本来そういう本ではない。絶対にない。
できることなら一日に一話ずつ読む、くらいがベストなペースだと思う。
前半は音楽やレコードに直接まつわる話が多くて、「二段ベッドの神様」や「第三の男」は短いながらもその発想力と見事な完成度に惚れ惚れする。
中盤くらい(「ゆがんだ球体〜」あたり)から色々な世界の話が錯綜し始めて、ほとんど寓話的と言ってもいいような話が続く。
正直なところ、ずっとゆるやかにゆるやかに物語を進めてきたのに、収束部分は唐突な印象を受ける。
クローディアの物語とジングルの物語とカナさんの物語と「靴」という媒介を通じてリンクが増えていって、「さすがにそれは無理じゃねえか?」と思ってしまう。
オチの付け方がすごく惜しい本だと思う。
前半はものすごくものすごく良かったのだけど、「七つの夜の箱」あたりからさすがに風呂敷を広げすぎて散漫じゃないだろうか。
とはいえ、そうだなあ、紅茶かコーヒーを入れたブレイクタイム、ゆっくりと日差しを浴びてこの本を読んだりしたら、実に最高なんじゃないだろうか。
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最近注目している作家さん。ひさしぶりに文庫が出たよう。過去と現在とごちゃごちゃになっちゃう時があるけど、やっぱこの作家さんおもしろーい
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ブラシで洗いこまれた、もう何年も使っている木の机に、さりげなく置かれているような本というか
古いものを懐かしむような、
慈しむような、
「レトロ」では足りない、セピア色の記憶に、
鮮やかな赤と黒の境界がある感じ。
(それはきっと私の「レコード」のイメージ)
わたしは、
そんな、
そんなこの人の魅せてくれる世界観が、大好きで。
こんな雰囲気をいとおしく思い、分かち合える人がいたらいいなぁと、思う。
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吉田さんサイコーっす。
クラフトエヴィング商會さんたちの作る世界は失われたモノとかどこかへ行ってしまったモノに溢れていて当て所ない郷愁があってすごく素敵。
そして中身の短編小説の重なり具合が素敵すぎです。
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珍しく恋愛が絡んでる。
どこが現代でどこが過去で?
ごちゃまぜになって、ターンテーブルの上で回されてる気分になるけれど。
私は世界が78回転で回ってた時代を知らない。
そんな寂しさ。
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江戸っ子的な粋と西欧的なチャーミングさの、細い共通の糸をきれいに回収してくれる数少ない作品だとおもう。
なかでも『クローディアと靴箱の都』神懸かっていて、小説だけども、一編の詩のようで、あまりにうつくしいので、想像の世界から抜け出せない。
デタラメに響き合う世界のことがかかれているが、どれも細い糸で繋がっている。
各章のタイトルが日本語と英語で表記されていて、英語をYouTubeで検索して、レコードをききながら、読んでいました。なので愛着も深いのかな、とおもいます。
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吉田篤弘さんらしいオシャレな大人のおとぎ話のよう。やっぱりこの雰囲気が大好き。
吉田篤弘さんの著書を読んでると、自分がとてもオシャレな人になった気分にさせてくれる。
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2011年9月7日読了。
「その昔、もうずっと昔のこと、世界は78回転で回っていた」
SP盤と呼ばれたレコードの話から始まり、様々な時間と場所で繰り広げられる物語が響き合う、不思議な連作集。
吉田さんの文章を読んでいると、なんだかふわふわっとした気持ちになります。優しくて、切なくて、心地良い。
好きな音楽を聴いているような感じです。
ゆったりと大人の童話を楽しみたい、という人にオススメですね。
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78回転レコードから着想された短編が、さりげない共通点で繋がり合い、ひとつの物語となっている。
浮世離れした雰囲気ではあるが、描かれる人の思いは素直で共感できる。
どの短編でも明確な答えや教訓めいた結末は描かれず、まるで音楽の終わりを憂い寂しがるように、次のレコードに針が落とされ、新たな物語が静かに紡がれ続ける。
好みが分かれる作風だが、物語の風合いに浸るタイプの読み手とは相性がいいと思う。
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ちょっと風変わりなタイトルですが、〝78(ナナハチ)〟とはレコードの回転数のこと。蓄音機でないと聴くことのできないSPレコードの回転数が78なのだそうです。その78回転のレコードにまつわるいくつもの味わい深い物語が、時を越え、場所を変え、くっついたり離れたりしながら、いつしかひとつの流れにたゆたうように紡がれていきます。ノスタルジックで、センチメンタルな雰囲気を醸しだす物語世界に、いつまでもゆったり身を浸しておきたくて、ページ数が残り少なくなってくると、読み終えるのを先延ばししたくなるような一冊でした。
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「78回転のレコード」にまつわるお話がいくつもあって、
それらが後々つながっているところが面白かったです。
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基本は短編なんだかど、全ての物語が微妙にリンクしてます。
しかも、リンクの仕方が凄く面白い。
時代も国も超えてリンクしていって、次はどことどこが繋がるんだろう?とワクワクしながら読みました。
78回転のレコードがちょっと欲しくなりました☆
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世界が78回転で回っていたあの頃。
文庫版にのってるイラストの曲を聴きながら読むのがオススメ。