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紙の本
中国人には理解できない「海洋民族のエートス」
2005/05/23 07:06
12人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたつみの自游人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近慶応大学の阿川教授の書かれた「海の友情」という本を読んだ。第2次大戦中南太平洋の海で、死力を尽くして戦った米海軍と日本帝国海軍の生き残りのセイラー達が、死力を尽くして戦ったもののみが知る相手への敬意をベースにして、戦後お互いに深い友情を培いながら日本海軍=海上自衛隊の再建に邁進する物語である。
この物語を読みながら、最近中国荒れ狂った反日デモや昨年8月の初めに北京で開催されたサッカーの第13回アジアカップで日本選手が3‐1で中国を破り、優勝した時の中国の観客の異常とも言える反日行動を思い出してしまった。真珠湾を奇襲攻撃し、マニラや、ラバウル、ガダルカナル、レーテ沖、沖縄と米海軍側の人的損害も莫大であったにも拘わらず、何故両者の間には深い友情が生まれ、片や中国とは国家斉唱にはブーイングで、場外では日の丸が焼かれ、選手を乗せたバスが襲撃されると言う悲劇が生まれるのか? 中国とは国交回復以来多額の経済援助をつぎ込み、それが今日の中国の経済発展の基礎となっているにも拘わらずである。 やはり真剣に戦ったもの同士が懐く相手への敬意が中国との間では欠けているのが一因であろう。中国との間では海戦は勿論、陸上での正々堂々の大会戦もなかった。中国で行われたのは果てしないゲリラ戦でしかなかった。
しかし、それよりも大きいのは海洋民族と大陸民族との違いであるようにも思える。海洋国は大陸国に比べて、気候も温和であり、そこで育まれる民族性も温和で、執念深くなく、中庸、公正なのではないかと思えてくる。海は時には荒れ狂う。時化がおさまるとまた平穏な海に戻る。海上の戦闘で相対峙しても、嵐が過ぎてしまえば、共に海の仲間としての友情が戻ってくるのではないか?
中国は経済大国としての平和台頭を目指していると言う。しかし経済大国は何れも海洋通商国家として、相互信頼と相互依存の関係を築いたことがその基礎となっている。次代の経済大国を目指すのであれば、中国は武士道にも似た海洋民族のエートスを理解し、身に付けなければなるまい。
紙の本
日経ビジネス2001/05/07
2001/05/08 22:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:谷口 智彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る
米国潜水艦事故で日米関係の錯綜した今、時宜を得て現れた本だ。
何者かに導かれつつ書き進んだと著者は語る。扱う物語はまるで本歌取り、登場する語り部も偶然から出会い松明たいまつを受け渡してきた人々で、ここに著者の手で活字に定着されるまで、ストーリーは1本の糸で織られでもしていたかと思わせる。
湾岸戦争後中東に赴いた海上自衛隊の知られざる活動を描く本書大団円は、NHKの人気番組「プロジェクトX」数回分の感動を呼ぶと言ったらいいだろうか。この挿話には伏線がある。朝鮮戦時米軍の要請で出動した日本掃海部隊を巡る話がそれである。
封印されてきた史実を闇から発掘した米国海軍将校が、本書の狂言回しである。後、昭和天皇が井上成美に贈ったカフスボタンを身につけ米国政府勲章授与式に臨むこととなるこの男が見いだしたものこそ本書の主題で、それは熾烈に戦い合った男たちを結ぶ「海の友情」、背筋を伸ばした人同士をつないだ畏敬の念にほかならない。
戦後まだ10年と経ない頃、海上自衛隊の創設からその初期にかけての時期に日米双方でどんな人間同士の交流があったか、著者はくだんの米国人将校に導かれつつ初めて明らかにした。それは激しい敵意を敬意に変えていく改心のドラマである。
米国の首都に立つ硫黄島メモリアルを見、「あのゲッソリと頬の肉を落とした海兵隊の兵士たちの顔にはっとし、それから急に涙が流れてきた」旧日本海軍軍人がいた。像は勝者の凱歌でなく戦いの哀歌を低い声で謳うものだと悟って、この人・内田一臣海上幕僚長の改心は始まる。
内田やその同僚はまた、戦後の日本にわだかまりを抱いて訪れた米国海軍将校たちを深く感化する。こうして、日米関係を根元で支える無名の人々の強固な交流が生まれた。
畏敬の念で結ばれた関係は強い。逆に、苦痛を伴う改革を避けてばかりきた昨今の日本人に、米国人(であれ誰であれ)は頭を垂れるに値する人間像を見いだせまい。両国関係の悪化・希釈化はそこに根因がある。と、そんなことを本書は語っていない。しかしおのずと考えさせる力を持つ。
海の守りにつく男たちの友情を通じてあるべき日本人の姿とは、日米関係とは何か、静かに描破した本だ。作家・阿川弘之氏を持たなければ日本人は旧海軍について無知なまま過ぎただろう。今その息子を得て、知らずに済んではあまりに惜しかっただろう戦後日米の友情がこうして後世に残るのだとは、本書の出現自体因縁めいている。
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