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タイトル通り全編アリバイ崩しの短編集。それぞれ趣向が異なり、エッセイも2本挟まれていて充実した内容でした。
【北の女】タイトルがサスペンスっぽくて好きです。ある事が思わぬ方向を示して、そこから一気に真相が引っ張り出されていくのが気持ちいい。
【汚点】アリバイ崩しに鉄道ミステリと贅沢な一編。トリックを見破った瞬間、その場所で犯行時の映像がありありと浮かんでくるような様がぞくぞくしました。用意周到で冷酷な犯人のラストが感慨深いです。
【下着泥棒】下着泥棒事件の瑣末な事が殺人事件の解決に繋がっていくのが流石。濡れ衣を着せられた記者がなんとも哀しい。
【霧の湖】発見者だったり、温泉旅館の叔父さんだったり、ただ日々を生きる何気ない登場人物達が魅力的でした。
【夜の疑惑】濡れ衣を着せられた男が真犯人を捜査→その友人記者が真相を看破の流れがサスペンスフルで楽しいです。そこからラストの一捻りに唸ります。
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『北の女』
アパートで殺害された坂内信子。容疑者として逮捕された新藤勝。東京への異動を条件に取材に当たる記者。木賊病院で耳鼻科医である磯原との口論を目撃された被害者。磯原と坂内の過去に隠された秘密。バーで目撃された被害者の電話の謎。麻雀を開催していたという磯原のアリバイ。
『汚点』
バー「愛子」の近くで殺害されたいた間宮銀蔵。会社を出るときに「愛子」に行くと残した間宮。間宮の上司と恋のさや当て押していた岩尾のアリバイ。
『エッセイ 時刻表五つのたのしみ』
『下着泥棒』
殺人事件の取材中謎の男と格闘し殴打された峰。下着泥棒と勘違いされ会社から白眼視される。殺人事件の被害者・阿久津のり子。
『霧の湖』
女を殺害したとして逮捕された専介。着物の襟の右左。被害者は専介の元愛人・山根夫人。被害者の肺から検出された温泉の成分に隠された秘密。
『夜の疑惑』
女の素行調査を依頼された瀬戸。その間に殺害された会社社長。瀬戸が強請っていた会社社長。犯人がとった最後の行動。
2011年9月7日読了
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ノンシリーズの短編集。もっさりしたタイトルが多いのだが、中身は相変わらず容赦ない。
密室同様、アリバイのバリエーションも多くはない。そこを全編違った味付けで勝負してくるのは、逆算プロットの美学か、それとも緻密なトリックのなせる業か。
アリバイを組み立てた犯人と、それを崩していく探偵役ふたつの視点が、地味ながらてきぱきと描かれ、短いページ数の中に極上の本格空間が広がっている。やはり完成度と安定感では群を抜くなあ。時代を感じさせる表現が多少気になるが、それはそれで雰囲気は出ている。
『夜の疑惑』のラストは好き。ちゃんと三段オチになってるのが巧くてニヤリとさせられる。
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鮎川哲也氏の短編集5話とエッセイ2話。
時代を昭和時代の話で、その当時の貨幣価値、社会観など、今にないストーリー。
医師免許も持たずに診療で、恐喝、、、電車の時刻トリック、、、、など、鮎川氏だけでなく、沢山の小説家が、ミステリーを生んでいる。
後半の「下着泥棒」など、大スクープものなのに、証拠が無いのと、社会部から外された報道マンの無気力感。
「夜の疑惑」は、父の事故殺害の復讐で娘が、仇(?)を打つ格好になっている。
短篇なのに、アリバイトリックを、見事に解明していく面白さが、作者が、亡くなっても継続されているのだろう。
昭和の時代に後戻りしながら、その社会観への思いをはせて読んでしまった。
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北の女
小説現代 1966年8月
汚点
推理ストーリー 1964年3月
下着泥棒
小説現代 1967年6月
霧の湖
サンデー毎日特別号 1960年10月
夜の疑惑
週刊大衆 1961年7月3日~31日
解説 山前譲