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時代を感じさせる、古き良きミステリという印象。オーソドックスで安心して読めるし、短編集なのでとっつきやすい。
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アユテツ初心者向き。多分、ここから鬼貫シリーズに向かうのが正解なんだと思う。
小さいネタを少ないページ数できっちりまとめ上げたという印象。探偵役を設定してないが故の違和感もあり、自由度もありで、たまにはこんなアユテツもいいのかな。
物足りないけど、ちゃんと本格してるし、完成度も高くて読みやすい。はっきり断定する台詞回しが新鮮でした。本格ってやっぱり昭和向きよね。
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『離魂病患者』
同期でありライヴァルの柊屋との恋の争いに勝って映子と結婚した曾根。ある飲み会の後電車で女性と一緒にいる曾根を目撃したという柊屋。出張中に曾根にプレゼントを持ってきた女。謎の女・石田照子と心中したと思われる曾根。曾根と照子の写った写真。曾根に謎の女の事で相談を受けていた作家・杉の推理。
『夜の断崖』
ミナが打ち合わせに行った翌日に断崖から転落死した作家・茅野。遺体の身元確認のために病院を訪れたミナ。ミナが気がついた違和感。前夜に来ていた浴衣に残っていたはずの焼け焦げの痕が無くなっている。茅野の妻の証言。眼鏡なしで行動できない茅野の残された眼鏡。ミナの同僚・吉岡が話したサングラス越しの茅野のまなざしの不気味さに隠された秘密。
『矛盾する足跡』
推理小説家数人でこうにゅうした別荘で過ごす冬の夜。近所に別荘を持つSF作家・月村ルナ子の訪問。会話の中で起きた小さな口論。足跡のない殺人についての話。翌日発見されたルナ子の遺体。鮎川哲也の推理。
『プラスチックの塔』
大学助教授・和気順三の死。死の前夜何者かに呼び出され会いに行った順三。順三の遺体が握っていた何かの本の切れ端。和気が殺害された夜に列車から転落した黒柳教授。黒柳教授が争う学部長選挙。和気が握っていた切れ端に隠された秘密。
『塗りつぶされたベージ』
フランス人の経営する会社に勤めていた妻・町子の失踪。捜索願を出した夫・昭夫にもたらされた遺体発見の情報。町子が勤めていた会社が見つからない。町子の証言で夫殺害の容疑者から外れた勝子。町子の口座に振り込まれていた金。何かの強請りか?彼女の日記にある塗りつぶされたページに隠された秘密。
『緑色の扉』
あるファッション誌の秘密のファッションショーを撮影にきたライヴァル誌の記者・森と助手の佐里。当日何者かに睡眠薬を飲まされて病院に運び込まれた佐里。撮影したフィルムは何者かに破棄された。緑の扉のロッカーにしまわれていたはずのフィルム。疑いをかけられた海老原。殺害された森。容疑者として会社を追われた森。退社の日森に話をした用務員と用務員の飼っている小鳥の秘密。
『霧笛』
客船に乗り合わせた客たち殺害された乗務員。乗務員の首に残された留美のベルト。自分の書いた小説の為のメモに事件の状況が似ているとおびえる大本。何者かに襲われ重傷を負う大本。殺害されたさち子。さち子の聞こえないはずの片耳につけられていたイヤホンの秘密。
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短編集。
シリーズ探偵は登場せず、事件関係者が素人探偵として活躍します。
【離魂病患者】自分に会うと死ぬというドッペルゲンガーの都市伝説を利用するおもしろい事件です。ドッペルゲンガーの不気味さと、不倫疑惑の世俗的な胡散臭さが混じって良い雰囲気を醸し出しています。
素人探偵をする杉が疑惑を抱いた理由が自然な流れなのも良い。杉の私情が混じった結末も印象的です。
被害者が可哀想でした。
【夜の断崖】素人探偵を務める記者の女性が溌剌として楽しいです。恋人が足を使って頑張っている間に、彼女が宿で温泉に入りつつも事件を解決してしまうのがおもしろい。
【矛盾する足跡】洒落っ気があって楽しい一編。作家の集まりで事件が発生。雪に残る一筋の足跡といういかにもな状況から意外な方向に展開していきます。
ラストに一捻りあって登場人物のやりとりにもニヤリとさせられます。
【プラスチックの塔】ちょっとした電車のトリックもありますが、被害者が握っていた本の紙片の謎が主。この紙片の真相は意外でここからのアプローチというのはおもしろかったですが、地味な1編でした。
【塗りつぶされたページ】終始重苦しい雰囲気が漂っていました。病気をして主夫として家にいる男が、働きに出ている妻への負い目と疑惑に苛まれ、孤独や無力感を噛み締めているのが悲しい。苦味の残るラストまで不穏な空気です。
【緑色の扉】殺人事件にまで発展する産業スパイものですがあっさりとしています。犯人が分かりやすいですが、ロッカーを開けられる人物、睡眠薬を入れることのできた人物、と条件を絞ってから反転するのは楽しいです。疑惑をかけられた素人探偵もおもしろかったので、もっと厳しいラストでも良かった。
【霧笛】航行中の旅客船の中で推理小説の通りに起こる連続殺人というミステリのガジェットたっぷりの事件ですが、展開はあっさりで結末も物足りない。
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(収録作品)離魂病患者/夜の断崖/矛盾する足跡/エッセイ 日記/プラスチックの塔/エッセイ 南区南太田/塗りつぶされたページ/緑色の扉/霧笛/エッセイ ペテン術の研鑽
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どれも良質な推理小説だった。ミステリとか本格派とかそうでないとかはよく分からないけれど、推理ものとしてとても楽しめた。正直、一つ前に読んでいた短編集よりこちらの方が断然好き。
推理小説を読んでいると、誰がこんな手の込んだトリックを使ってまでこの程度の動機で殺人を犯したりするだろうか、と思うことがしばしばある。ミステリとしてはそれで良いのだろうが、筋は通っていてもあまりにも現実離れしたトリックの犯罪は、できれば現実離れした設定や舞台の上でやっていただきたい、と思う。それならお話として大いに楽しめる。
この作品は、手は込んでいるがやろうと思えばできないことはないトリックが用いられているのがすごい。各作品の舞台に応じて、トリックの“やりかねない度合い”がしっかり調整されているように感じる。
どのお話でも突っ込みどころのない練られたトリックが披露されていて、面白かった。
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離魂病患者
小説宝石 1969年9月
夜の断崖
婦人公論 1961年10月
矛盾する足跡
小説サンデー毎日 1970年12月
プラスチックの塔
小説現代 1965年3月
塗りつぶされたページ
小説宝石 1969年2月
緑色の扉
漫画文芸 1964年8月
霧笛
推理ストーリー 1964年9月
解説 山前譲