紙の本
なかなか描けない
2019/07/30 17:25
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投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近流行りの日常の謎ミステリーとは一線を画す作品。
サハラ砂漠、スペイン、アマゾン等を舞台とした連作ミステリー。
トリック、ミステリーとしては荒削りな部分があるものの、
とてつもない技術の高さが感じられます。
紙の本
通用しない価値観
2017/05/17 22:48
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投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界各地をめぐるジャーナリスト斉木の前に数々の事件が巻き起こる。どの事件もその土地の環境や風習などが反映された濃い内容になっています。全体を通してみると胸がすくような話が少ないので、好き嫌いがわかれるかもしれませんね。
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世界を又にかけるジャーナリストの斉木が各国で遭遇する事件の連作短編集です。
その場所でないと成り立たない舞台で、その場所故の価値観により起こる事件の数々。納得するには場所の描写が欠かせません。色や空気感の表現にかなり力を入れているのは分かるのですが、抽象的なイメージで止まってしまって、そこから想像ができませんでした。動機についても、その場所特有の考え方により起こしたというよりは、大した理由なく被害者が増えていくミステリに慣れてしまっている読み手からすると「こんな理由でも殺せるよね」と作られたもののように感じられます。砂漠の事件では本筋と関係ないところで疑問が残り、スペインの事件ではトラップをあちこちに仕掛けすぎているのが目につき、さらには文章や言葉の使い方などに違和感を覚え、これは外したかなぁ?と思ったのですが。
偉そうな言い方をさせてもらうと、後半の「叫び」と「祈り」で一気に化けました。著者が言いたいのはこれだったのかと。よくぞこの流れを作った。自分が自分である以上、どうやっても求めずにいられない理想や希望を追っていこうとする、まるで著者の決意表明のような二章でした。
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旅とミステリー。5つの作品がおさめられている。個人的にはこれらの物語そのものに魅力を感じた。そこにミステリーの要素が加わり、より深いものになっていると思う。
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砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人を始めスペインの風車の丘、ロシアの修道院などひとりの青年が世界各国で遭遇する数々の異様な謎を解き明かしていく。
なんとも不思議な雰囲気の話。
最初の「砂漠を走る船の道」はミステリーとしてとても面白かったが他は微妙。
謎解きというより異国文化を描いた作品。
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砂漠を行くキャラバンで起きた連続殺人、スペインでの風車から消失事件、ロシア正教会のとある修道女の聖列、南米のある集落で起こった感染病・・・ある青年が世界各地で出会った謎の短編集。
その国、民族、思想が事件の動機となってるので読んでて新しい感覚でした。日本住んでる私では想像つかなかったりするので、面白かったです。
砂漠のキャラバンの話が一番好きかな・・・そういう動機か!?とビックリしました。
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受賞作がやや作為が目立ち、「白い巨人」が好きなタイプでなかったので途中で放置していたが、「凍れるルーシー」と「叫び」は評判通りとてもよかった。
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取材で世界各国を巡る斉木が旅先で遭遇する事件。砂漠のキャラバン隊、風車に伝わる伝説、ロシアの修道院、アマゾンの原住民村、戦地、その地だからこそ起きた事件。その地だからこその論理。ミステリの魅力がそこにあります。
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先の気になるストーリーも相まって、とても読みやすい。
日本ではないどこかの、文化や風土に基づいた謎解きということで、
非常に面白く読んだ。
しかし、最終章”祈り”の位置づけは、とあるサイトの解説を読まないと理解できなかった。
この1冊が、最初は探偵役であった主人公が、自分の理解できない何者の存在に心情を打ち砕かれていく
という構成だったとのことで納得。
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【感想】
・叙述トリックもあるけど、それよりも価値観や状況が異なりすぎる世界で発生した事件の動機が意識に残る。これは、トリックはさほど重要ではなく動機を推理するけっこう珍しいミステリだ。
【一行目】
風が走る音は、誰かの悲痛な泣き声に似ている。
【内容】
・「砂漠を走る船の道」砂漠を渡るキャラバンで殺人が起こった。少人数しかいない中での殺人はリスクが高すぎるが。
・「白い巨人」僕の目の前で一年前「彼女」が消失したその地には不思議な伝説があった。
・「凍れるルーシー」ロシア正教会の女子修道院。二百五十年前の修道女の聖人認定のため審査をする修道士が派遣された。
・「叫び」致命的な感染症で滅亡寸前の集落で起こる殺人。なぜ?
・「祈り」とある病院のようなところにいる人物のもとに自称「旅人」という男が現れとある寺院はなんのためにあるのかと訊ねる。
▼簡単なメモ
【アシュリー・カーソン】アマゾン先住民族を巡回診療している英国人医師。NGOには属さず個人で活動している。
【アヤコ】一年前、「僕」の目の前で風車に入り消失した。《やっぱり、旅に出たら、時計は外さないといけません。》p.79
【アリミリ】デムニの一人。杖を持ち全身を赤と黒にペイントした屈強そうな男。
【ウエムラ】「僕ら」を世話してくれる住み込みのおばさん。
【ウラディミール】ロシア正教会の修道士。
【エボラ出血熱】アシュリーの判断ではデムニの集落を襲った伝染病はエボラではないかと思われる。空気感染はしないが致死率の極めて高い感染症。南米では発症例はないが絶対に発症しないとは言い切れない。
【岩塩】板の形で採掘する。だいたい二枚で大人一人分の重さ、ラクダはそれを左右に二枚ずつ振り分け運ぶ。
【キャラバン】岩塩を採掘する各地の集落と契約を結び交易する。斉木が参加させてもらったキャラバンは長、ケンプ、バルボエ、カスランの四人で構成される。
【ケンプ】塩を交易するキャラバンのメンバー。斉木の面倒をみてくれる。
【ゴア・ドア】「祈りの洞窟」と呼ばれる天然の洞窟を寺院に改造したものらしい。東南アジアのモルッカ諸島にあるらしい。
【斉木】「砂漠を走る船の道」の語り手。情報誌の記者か。七か国語を駆使できる。全編を通した探偵役と言える。ヨースケ、サクラとは大学のサークルで知り合った。
【サクラ】「白い巨人」の語り手の「僕」。斉木、ヨースケとともに大学で同じサークルだった。MBA取得のために大学に通いながら働いている。
【修道院】一日の始まりは日の入りのとき。次の日の入りまでが一日。物語の時季は午後七時頃が日の入りに当たるようだ。
【修道院長】ロシア正教会のある女子修道院のトップ。「生ける聖人」と呼ばれている。
【スコーニャ】「凍れるルーシー」の「Я」の章の語り手の「私」。三十歳くらいと思われる修道女。リザヴェータを崇拝している。
【ダビ】デムニの一人。ポルトガル語を使える。《世界は自分だけですよ。デムニだけですよ》p.240
【長老】デムニの長。知恵を持つ者が選ばれアマゾンで生きるためのさ���ざまな行為を行う。《知識を得なければ、知恵はまわらない》p.222
【デムニ】アマゾン奥地に住む五十人ほどの部族。
【バルボエ】キャラバンのメンバー。
【メチャボ】キャラバンにいる子ども。長にしか懐いていない。
【森野/もりの】男。自称「旅人」。《旅人は物語を伝えることができる。》p.289。
【ヨースケ】斉木、サクラとともに大学で同じサークルだった。明るい性格。
【夜】《そう、夜が世界に訪れるのではない。世界が夜の闇を走り抜けるのだ。》p.175
【リザヴェータ】ロシア正教会の女子修道院に二百五十年ほど前いた修道。三十歳で亡くなったが死後も当時の姿を保っており、聖人認定の申請が出されている。
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異国ならではのホワイの種明かしと犯人絞り込みの過程が面白い。解説にある通り現地に行かずに読んでいて違和感を感じない舞台を作り上げる力が凄いなぁ。謎のアレコレは気になれどある男女のお話とスペインのとある街に伝わる昔話が交錯する『白い巨人』が好き
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ミステリ新時代の到来、と言ってしまうと多少オーバーな表現になるでしょうか。なるか←
ですが、私は日本の推理作家が、推理小説飽和状態(飽くまで私見ですが)の昨今にあって、この作品を書いてくれた点だけを取っても評価したいのです←謎の上から目線( ^ω^ )←←
日本のミステリ界の未来は明るいぜ\(^o^)/ひゃっほー
ワイダニット〜?イマイチ!ハウでなんぼよ〜!な、ミステリスキーを自認する方にこそ読んでほしい作品です。
とにかく、この動機は、新しい!
一言で言うと、それに尽きます。
個人的怨恨ではなく、その土地土地の文化や慣習に根差した、非常にシンプルな価値観によって引き起こされた事件が、端正な筆致で描かれています。
「何故、殺さなくてもよい人間を殺したのか?」ーー平和な日本に安穏と暮らす私達からすれば想像だにできない驚愕の犯行動機が、日本人青年の目を通して明らかになります。
それと同時に、作者が巧妙に張り巡らせた第二・第三のミスリードに気付いた時の快感といったら、もう…至福〜!(笑)
読んだ人と意見交換したくなるミステリですね( ^ω^ )
そんな風にミステリスキーを喜ばせながらも、「叫びと祈り」というタイトルに込められた意味が明らかになる最終章では切ない余韻も残す読み応えです。前の話までエキサイトしていた私は激しすぎる温度差にほんの少し戸惑ってしまいましたが、それも込みで普通のミステリではなかなか得られない読後感を味わえました。
続編も書けそうなのに、ここで潔く完結させたのも素敵。しかしシリーズ化は希望←←
◉砂漠を走る船の道…砂漠を行く行程の中でキャラバンのメンバーの1人が殺害される。キャラバン以外に犯人の存在し得ない中、犯人は何故、自らの命を危険に晒してまで殺人を冒したのか?
◉白い巨人…風車の内部に入って行った恋人の姿が消えたーー中世時代 に同じ状況下で消失した兵士の謎に迫る中、思わぬ真相が明らかになる。
◉凍れるルーシー…修道院を訪れた斎木が目にしたのは、死してなお朽ちることない聖人の遺骸。ところが、聖人に祈りを捧げたいという司祭の一言から、状況は一変する。
◉叫び…アマゾンの奥地で、致死率の高い役病が発生する。ところが死を待つしかない人々が殺害されるという奇妙な事件が発生する。
◉祈り…「密林の奥地にある洞窟に掘られた寺院は、なぜ作られたと思う?」ーー患者を訪ねてきた友人が出す謎掛けの意図、そして驚愕のラスト。
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外国の特殊条件下での推理劇の短編。
なかなか考えるのが楽しい。
と思いきや、最後のどんでん返しもきれいでした。
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独特、ですね。文体も、取り上げている題材も。
世界各国を旅する斉木が、訪れた先で出会う事件。どれも、「極限状態で」「その場所でしか起こりえない」物語ばかりの短編連作。
衝撃的だったのは、1作目。なるほど、国によって、民族によって、環境によって、そしてそこではぐくまれた人とその文化によって、「常識(価値観)」というのはここまでも違うのか、と。日本人の生きている世界はなんて狭くて平和なんだろう。
そう思い知らされたのに、2作目以降でも同じように引っかけられる。
ただ、最後の1篇がどうもすっきりしない。それまで描かれてきた様々な物語を、斉木個人の背負う「彼の生」へ収斂していく作りなのでしょうが、今一つわかりにくいというか、まわりくどいというか、謎めいたやりとりに終始してしまった印象。
いずれにしても、どれも異世界のような不思議な余韻が残ります。描かれている舞台とそれを描写する文章の相乗効果なのだと思います。
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いやぁ~、しかし
これまたとんでもない新人が現れたもんですね(笑)
ブクログで仲良くさせてもらってる我がミステリー小説の師・kwosaさんのオススメで読んでみたけど、
いや、ホンマ、ワクワクドキドキするような
至福の読書時間を堪能させてもらいましたよ(^^)
(そしてそれを僕より先に読んでいた我がパートナーにも感謝!)
物語は死んだと言われるこの時代に
ミステリーという謎解きの魅力と
共に、
詩情溢れる美しい言葉で
語るべき『新しい物語』を紡いでくれる
文句ナシの傑作。
(自分が言うまでもなく、2010年~2011年の各種ミステリ・ランキングで軒並み上位入選しています)
海外の動向を分析する雑誌を発行する会社のジャーナリストであり、
7ヶ国語を操る主人公の青年、斉木。
この斉木がどの物語にも登場し、
世界中を飛び回る中遭遇する事件の顛末を描いた連作短篇集となってます。
サハラ砂漠に残る「塩の道」で起こる殺人。
限られた人数の中行われる殺人に疑心暗鬼になる人間心理の妙と
意外な結末にニヤリとした
『砂漠を走る船の道』、
スペインを舞台に
風車から忽然と姿を消した兵士の謎に挑む
斉木とその仲間たちの推理合戦が楽しい
『白い巨人』、
南ロシアの修道院に眠る
死してなお、腐敗しない遺体(不朽体)の謎を巡るホラーテイストなミステリーで
ラストはタイトル通り凍えます!
『凍れるルーシー』、
アマゾン奥地の先住民が住む村でエボラ出血熱によく似た伝染病が猛威を奮う中起きる不可解な連続殺人。
どんなに言葉を尽くしても届かない
価値観や異文化の決定的な違いが胸を締め付ける
『叫び』、
そして、理解の届かない存在の前で絶望し、
心を閉じた男の再生を描いた
『祈り』
の全5編。
散りばめられた伏線とその見事な回収術。
一話一話に周到に用意された衝撃的な展開と
トリックの解明ではなく
あくまで『物語性』に重点を置いた作者の視点。
そしてなんと言っても
豊富な語彙や独特な比喩を駆使した
異国情緒に溢れ
読む者を一瞬にして旅人にしてしまう
引きのある美しくロマンチックな情景描写は
まさに錬金術のごとき見事な腕前。
それにしても
読み終わった後に残るこの余韻の心地良さよ。
物語は終わっても
彼らは読み終わったそれぞれの読者の胸で、
記憶の中で、
いつまでも生き続ける。
小説の中に血を通わせ
人生に流れる時間を定着させる新人らしからぬ筆力に
梓崎優の真髄を見た気がする。
(それにしても価値観の違いからくる断絶や絶望という深く重いテーマを、デビュー作にして題材に選んだその気概に惚れた!日本という国の中でさえ、何度この価値観の違いからくる巨大な壁の前に無力感を感じたことか…)