紙の本
傍観者なんていない
2004/09/21 18:24
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごがゆうこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
新しい文庫版が出たので、読んでみた。
といって、グリーンのよい読者ではないので、この小説を読むのははじめてだ。
何と言って、グリーンの場合、驚くべきことではないのだが、
ほんとに底知れない読ませる力があって、それは、底知れないと言ったわりには
かなりありふれたもののようにも思える。
しかしどうなんだろう、いまは、それを論じている場合ではないのかも。
訳者は1960年のあとがきでこう書く。
「いつの日か冷戦がやみ、この物語が一篇の歴史小説として読まれるときが来ても...」
冷戦がやもうが何しようが、この物語も、広場で手製爆弾が炸裂するシーンも、いまなお歴史にはなっていないし、
早い話、書かれたときよりも、作者が死んだ今の方がもっとリアルに生きているではないか。
そういうことが永遠に終わらないのかもしれない現在、
結局傍観者にはなれなかった主人公ファウラーの苦悩は、正しくわたしたちに受け継がれている。
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「無邪気」は、たいていは肯定的に受け取られることが多いと思う。天真爛漫で裏表がない感じ。でも、誰か周りの「無邪気」に、ある種の傲慢さや脳天気さ、無神経さを感じたことのある人は、決して「無邪気」を好意的には受け取らないだろう。
この小説に出てくるアメリカ人のパイルは、無邪気で正義感と理想に燃えている善良なアメリカ人青年。なんだか読んでると、ブッシュを連想してしまうのは偏見かしら。小説の舞台がインドシナ戦争だから、よけいにイラク戦争下のブッシュを連想してしまう。パイルが良かれと思ってやっていることは、じつはちっとも事態を好転させはしない。でもパイルはそこに気づかない。
この小説は、2つの場面がすごくリアル。ひとつは、淡々と描写される戦争の様子。もうひとつは、小説の語り手で老年にさしかかったシニカルなイギリス人、ファウラーの嫉妬。ファウラーの愛人である若いベトナム人女性フォンは、パイルにとられてしまうのだが……「が」がポイント。
淡々とした語り口だから、かえって胸に迫るといえるかも。でもひとつ文句をつけるなら、フォンがまったく受動的で人形みたいなところ。これって、ヨーロッパ男の、アジア女への幻想なのか。それとも、人種や文化的背景は関係なく、単に男の幻想なのか。ちょっと都合がよすぎて、できすぎの感じがするのだった。
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ベトナム戦争直前、アメリカの介入が目に見え始めたサイゴンを舞台に、「アジアを救う」という理想に燃える純情なアメリカ青年と引退間際のイギリス人記者がベトナム人女性を争う話。
それぞれの登場人物が国を体現しているような構成になっていて、アメリカ人が単純な机上の空論で正義を押し付け、他国を引っ掻き回すことへの不快感が作品全体を覆っています。
イラク戦争でも状況は変わっていません。何しろ大統領が「悪の枢軸」という、あなたテレビゲームやりすぎじゃないですか的表現で他国を指弾し、戦争を始めてしまうのですから。
無邪気な人は残酷だから苦手。
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図書館で。主人公が苦手なタイプでどうにもお話に集中して読めなかったんですが。なんというのかパイルさんは頭が良いんだけどバカっていうか融通が効かない。こういう人居るよなあ…と思いながら読みました。
男性にとって女性って結局理解出来ないというかしたくない存在なんだろうか?とフォンさんと元奥さんの描写を読んで思いました。他のことには理路整然と解釈つけるのにね。女性の考えとかは察したくないのか察することができないのか。フォンの存在が男性にとって肉体だけで、意思も理想もなく男に寄り添う風なのが不気味でした。でもある意味それが男性の理想なのかな。
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第一次インドシナ戦争のころの話だけど、雰囲気とか舞台設定とか目線とかが、そのまま第二次インドシナ戦争(ベトナム戦争)と変わらないのが不思議。
フランス軍の戦い方が、その10年後のアメリカ軍と変わらなくて、いやそこは10年前の日本軍と似ていてくれよ裏切者、とよく分からない気持ちになる。
そういう与太話はともかくとして、この本は実に面白い。ミステリとして読んでも抜群に面白いし、文学としてとらえても面白い。いや、そんな直木賞か芥川賞かみたいな分類そのものに意味がないのだろうけど(だいたい、文学ってなんだよ)、ともあれ面白い。
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タイトル買い。アメリカ人がおとなしいとは?アジアのベトナムにおけるフランス人とアメリカ人。ヨーロッパの男ととアメリカの男がアジアの女を取り合う話。作者は真剣だろうが、少し馬鹿げた話。良し悪しの分別は別にして、アジアを下に見てしまう無意識の根源をみせられる。