紙の本
醜聞の作法
2021/04/02 10:13
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
フランス革命前夜、貧乏な弁護士ルフォンは友人である「私」にそそのかされ、ある侯爵が養女を大富豪でロリコンの友人と無理やり結婚させようとしているという誹謗文を、「奥様」という人物の依頼を受けて書く。その様子は「私」が「奥様」に送った書簡や同封された誹謗文によって描かれていく。
内容は架空のものであったはずが、次第に虚実が混じり、大衆の熱狂や上流階級からの報復を恐れてルフォンは「私」のもとから姿を消す。フランス革命前夜という状況で、大衆に火をつけてどのように消すのか、といったところも見所。文章も語りかけるような口調で読みやすい。
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講談社創業100周年記念出版の文庫化。
単行本の装丁が新聞っぽくて面白かったのだが、文庫ではシンプルになった。ちょっと残念だが文庫の小さいサイズであの装丁だとちょっと煩い感じがするので、仕方がない。
手紙と小冊子からなる、やや変則的な書簡体小説。
文体は端正で、内容はスリリング。ストーリー的にはラブロマンスだが、書簡と冊子のバランスが絶妙で読んでいて飽きない。
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軽妙な文章で面白かった。18世紀仏文学の素養があればさらに楽しめたのだろう。歴史的な状況はなんとなく知識があったが。。
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読みやすかった。
バルタザールの遍歴、ミノタロスに次いで好きな佐藤亜紀さんの作品。
でもごくたまーに佐藤さんからウンベルト・エーコの匂いを感じるのは何でだろう。鏡の影が特にだけど。
エーコの外側というか枠組みというか。
共感して頂けたら嬉しいけど、きっといなさそう…。
大衆=愚者、素直っぽい表現もわりと好き。
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1779年のパリが舞台の小説。ルイ15世とルイ16世の頃にフランスで流行った地下出版から発行された中傷文書がモデルとなった話です。
庶民は貴族のネタを楽しみ、あることないこと噂して中傷して、それはどんどん広まって…というのは現代と何も変わらず、そういうところに目をつけるというのが佐藤さんの凄いところだと思います。中世と現代のリンクのさせ方が本当にうまいです。
本当にすごい作家さんなので是非佐藤さんの作品を読んで欲しいです。
佐藤亜紀さんの作品を読む度に、その知識と才能に感服します。調べて書いた現代文学という感じがなく、どの作品もタイムスリップしたような気分になります。どの作品も日本人が書いた作品とは思えません。
ヨーロッパが好きで何度も旅をしている私には、匂いや空気や喧騒がありありと浮かびます。エスプリの効いた書き方とか有名な作品を暗示させる書き方とか、様々な技巧が作品に深みを与えているのだと思います。
印象に残ったのは、後半に書かれたある男の語りで、この作品が発表されたのは2010年ですが2011年の震災を暗示するかのような内容で驚きました。また、その哲学的な内容も非常に興味深いし、パリっぽいエスプリ感に溜息が出ます。
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こいつは18世紀のインターネッツや!
フランス革命前夜のパリ、ある貴族の養女が不本意な結婚を強いられようとしているのを、醜聞を以て大衆の「噂」を捏造し、ご破算にしようとする。書簡体小説として話が進みいずれ真実が不透明になるのはミステリーっぽさもある。
小さな火付けから一気に延焼し炎上する様は、時代を超えても変わらないなと思う。一見凡夫のような書き手の変貌も面白い。
ちなこの本、友人からのバースデー文庫(誕生日が同じ作家の本)としてプレゼントされたもの。こうして読んだことのない作家の作品に触れるのはとても面白い。