紙の本
ベストセラー「失敗の本質」の続編。
2012/08/19 21:44
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
ベストセラー「失敗の本質」の続編。続編といっても前作が出版されたのは1984年です。
しかも前作は、組織論的なアプローチからの旧日本軍の「失敗」を分析したものでした。
本書は同じ旧日本軍(陸軍がメイン)の「失敗」を、その組織を率いていたリーダーたちの行動・考え方を中心に分析が行われています。
今も昔も日本では、強力なリーダーシップをもって組織を動かしている人は少ないです。本書が取り扱う、旧日本軍においては他の国のリーダーたちとは違い、どちらかというと集団指導体制というイメージがあります。
日本人は、歴史的に聖徳太子の時代から「和をもって尊しとなす」とする考え方があり、それが戦時では意思決定過程のあいまいさにつながったことも分析されています。つまり、トップがリーダーシップをもって決定しないため、現場のいわゆる中間層の将校の行動が既成事実をつくり、意思決定機関である政府は追認するしかないということを繰り返すことになります。
強力なリーダーシップがない組織は、セクショナリズムが進み官僚化していくプロセスが描かれています。
まさに現代の日本。
また、本書では、リーダーシップの理想とその行動様式も実例をもって紹介しています。
旧日本軍の将校たちは、まぎれもなく優秀な人材であるにも関わらず、リーダーシップが欠如している者も多かったのです。成績がよいだけでは、平時ではそれほど問題にはならなくても戦時においては、組織にとっては致命的な失敗をしてしまうことになります。
興味深いのは、リーダーシップにとって必要なものとして、リベラルアーツを挙げている点。特に哲学を勧めています。哲学は、存在論、認識論から事象を考えることから、物事の大局観を持つことや関係性を見抜く力が養われるのです。
それと大切なことは「率先垂範」。
本書は、これらリーダーシップに大切なことが、歴史的な事実から抽出されているため、説得力があります。しかも、戦争という非日常でのリーダーシップの現れ方は、真実性とその典型を知ることができます。
現代の組織のリーダーにはお勧めです。
龍.
投稿元:
レビューを見る
最初の「失敗の本質」を読んだのは何時だろう。手許にある本の奥付には"昭和60年2月15日 20版発行"とある。おそらく大学時代に紛争論か何かのつながりで落手したのだろう。
あれから幾度読み返しただろうか。少し難解だか、戦史に基づいた論証は、その後の様々な局面で、幾度勇気付けられただろうか。
今回の新版は、随分読み易くなったなぁ、というのが第一印象だ。このシリーズに触れていない人は、まずこの新版を読んでから、「戦略の本質」、そして「失敗の本質(初版)」を読まれることをお勧めする。
ともかく、初学者にとっても勇気付けられる一冊だ。
投稿元:
レビューを見る
日本軍の敗戦と、3.11における東電/政府の失敗が見事に重なる。
悲しいくらいに、この国のリーダーは歴史から何も学んでいない。
名著「失敗の本質」の筆者陣による組織のリーダーの人間力、判断力、マネジメントに注目した続編だが、史実を知らないと今一つピンとこないかも。
『ノモンハンの夏』はじめ半藤一利の戦争関連の著作、猪瀬直樹の『昭和十六年の敗戦』などを読んでからの方がハラに落ちるかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
ロングセラーとなった前作から二十数年振りの続編である。前作が日本軍の戦闘のおける失敗の要因を戦略論的に解明しようと試みているのに対し、本書は副題の通り、リーダーシップに焦点を当てて、リーダーが本質的に備えるべき能力の解明を試みている。
日本軍の敗北の原因は総じて、軍部を支配していた官僚主義(無責任主義)にあったことは明確だが、この状況は現在の日本の政治状況と酷似しているといえる。まさにリーダー不在である。
本書に挙げられている「リーダーの備えるべき6つの能力」を兼ね備えた人材は稀有だと思うが、人を動かしていくには「品格」が最低限必要であり、その基礎となるのが「教養」(特にリベラルアーツと呼ばれる分野)であることを本書は改めて気づかせてくれる。
投稿元:
レビューを見る
既読感のある章がいくつかあると思ったら、DIAMOND HARVARD BUSINESS REVIEWに掲載されたときに読んでいたのですね。
そんな訳で、名著『失敗の本質』の続編と銘打っていますが、あちらが共同研究の成果であるのに対し、こちらは各著者の論文の寄せ集め的であり、前著のような全体としての完成度はありませんが、いくつかの論文は大変興味深く読みました。
山口多聞少将の評伝は、いくらなんでも絶賛し過ぎでは?という感も無きにしも非ずですが泣けます。
投稿元:
レビューを見る
第二次世界大戦における日本の敗戦と現代の日本の状況を重ねて分析した同名シリーズ第二弾。今回はリーダーシップについての内容だが、正直、読む価値なし。
結論への持って行き方が強引、何だか急いでこの夏に間に合わせたような拙速さに、読みながら疲れだけが残った感じ。
早めにブックオフへGO!
投稿元:
レビューを見る
「失敗の本質」が面白かったので、期待して読んだが、期待したほどではなかった。焼き直しの感が強かったし、情緒的な章もあって、教訓となるところが少なかったように思う。
投稿元:
レビューを見る
前作があり、しかも良書として認知されているため、どうしても前作との相対評価となってしまうのがつらいところであるが、前作が組織論書として、ガツンと頭に入って来たのに比べ、今回は戦史評価書との読後感が強く、リーダーシップ論の部分が希薄に感じられた。
投稿元:
レビューを見る
名作『失敗の本質』スピンオフ。
他のレビューにもある通りリーダーシップという共通テーマのもとに各人の論稿をまとめたもので、学際的共同作業が行われた『失敗の本質』には深み、厚みとも及ばないのが正直なところ。
個別具体的な事象から普遍化一般化を導き現代の組織にフィードバックする意図ならば、いきなりリーダーシップ不在を嘆くのではなく、「なぜ不合理な失敗を繰り返したのか」をまず組織自身の中に求めるべきでしょう。
実は第11章「戦艦大和特攻作戦で再現する合理的に失敗する組織」にその視点が見られますが、上述の通り論稿集であるため他の章に同じ視座が共有されていないのが残念。
同章の取引コストを使っての分析は有用なアプローチと思いつつ個人的には同意できませんが、山本七平「空気」悪者論への反論については同意なのであります。
投稿元:
レビューを見る
リーダーに求められる能力は、現場感覚、大局観、それらを踏まえた判断力だという。そして哲学、歴史、文学などの教養も重要であると。
組織にとって不都合な真実を隠蔽し、硬直的な組織体制を続け、科学技術への先見性も欠如していた日本帝国軍の失敗。
リーダーも組織も悲しいくらい反省する点が多いが、果たして現代の日本は歴史の失敗に十分学べているのか?
名著「失敗の本質」を近い内にまた読み直してみよう!
投稿元:
レビューを見る
28年前に刊行され、いまだに売れ続ける名著「失敗の本質」の、”正統な”続編と位置づけられているのがこの本。前作の著者6名のうち、3名が引き続き続編でも執筆している。(新たに4人の著者も加わって、計7名の共同執筆となっている)
「続編」と言う位置づけではあるが、前作の知識を持っていることは前提にしておらず、この続編から読み始めても問題は無い。むしろ前作が、軍事的にマニアックで、かつ文語的な表現を多様していたために、一般人にとってかなり難解な書物だったのに対し、続編は時代を反映してか相当に読み易くなっていることが第一印象。名著と言われる一方で難解だった前作に対しては、読み解くための入門書まで出版されていたが、そのような”非公式な”関連書籍に対する対抗する意図もあったのだろう。
平易で分かり易くなった一方で、前作ほどの重厚さは期待してはいけない。前作では、個別の戦闘のケーススタディを、一般人には難解なほどに突き詰めたうえで「一般論としての教訓」を導きだしたことに対し、続編は個別事例の深堀が徹底できていないため、どうしても薄っぺらな印象を受けてしまう。私にとってこの本を読んだことの最大の成果は、「もう一度前作の『失敗の本質』をじっくり読み直してみよう。」と思わせたことだろうか。
もっとも、名著と言われる前作と比較されるのも酷な話で、一般的なビジネス書としてみれば、読むのに十分な有益な本と言って良い。前作と同様に、この本を読むと、「過去の失敗事例を分析して、同じ轍を踏まないようにする。」と言う、一見簡単に思えることが、現代でも十分になされていないことに愕然としてしまう。
投稿元:
レビューを見る
ベストセラーとなった「失敗の本質」の続編。今回は、単に戦闘場面の分析のみでなく、国内での「総力戦体制の構築」や「日独伊三国同盟を舞台にした情報戦」「統制派と皇道派の派閥抗争」なども分析対象としている。
冒頭で著者が、原子力事故をめぐる管首相の対応を、激しく非難している。終戦から67年経っているが、極限の状態では日本の指導者は全く変われていないのだろうか。
内容は、「特攻作戦をめぐる空気の研究」とか「特異な人物(石原莞爾とか辻政信)の研究」が面白かった。
投稿元:
レビューを見る
「ところで、あるべきリーダー像、あるべきリーダーシップってなんだろう?」というのが、読了直後の感想。
戦争というイベントを通して、経営学的な見地からリーダー像、リーダーシップを再考するという試みは面白いのですが、残念ながら、分析後に得られる示唆がまとまっていないような気がします。
そういう意味で、惜しい本、という印象です。
投稿元:
レビューを見る
『失敗の本質』は難解な専門書、『戦略の本質』は少し砕けたビジネス本、そして本書は魅力的な語り口で紡ぐ読み物だ。面白い。前2作とくらべものにならないくらい、組織と人間について、熱を込めて語っている。それは、本書が日本の敗戦についての分析を主眼にしているわけではなく、敗北という現実をまえに組織があるいは人間がどのように振舞ったのか。運命というか所与というか、ある意味避けられなかったのではないか。「そうとしか生きようがなかった」という事実を感情を織り交ぜて語るさまは僕らの日常と近しい。日本は負けた。たしかにとんでもないやつもたくさんいたし、組織も腐敗してた。でも、がんばってるひとだっていたんだよ、と誇らしげに語ってもいいと思える。「昭和の軍隊」について好意的に評価するのを心情的に躊躇っていたのだが、山内昌之さんが描写する山口多聞の人物像を知ったら、どんな腐敗した状況でも、良心というものが残り、自分の存在を未来に向けて力いっぱい投げつける生き方は素晴らしいと思えた。また、菊澤研宗さんの「取引コスト理論」を駆使して「大和特攻」や「陸軍の派閥」を説明する下りは、肩がほぐれる感じで良かった。いまのところ今年一番です。
投稿元:
レビューを見る
うちの社長の本で紹介されていたので読んでみた。
敗戦の原因をリーダーシップの観点から考えた内容だった。
当時の日米の組織のあり方からも物資、兵力の差以外でも敗戦は必然であったと思ってしまう。
歴史の本ではなく歴史から現代に求められるリーダーシップを考えたものなのでとても参考になった。
リーダーシップには下記の6つの能力が必要。
・「善い」目的をつくる能力
・場をタイムリーにつくる能力
・ありのままの現実を直観する能力
・直観の本質を概念化する能力
・概念を実現化する政治力
・実践知を組織化する能力
過去はともかく現代にもこれらをすべて併せ持つリーダーは少ない。
最後は折れが責任を持つと言って任せるではなく大丈夫かと聞くだけで自分の部下がどういった状況に陥っているのかが判断できないリーダーがあまりにも多い。
人間力を上げるには仕事のスキルだけではなく哲学をはじめとしたリベラルアーツを学習して人間としての能力を上げることが必要。
誰よりも大局観をもって目的のために今何をするべきかを考えることで目的に近づくことができる。
状況は常に変わるので昨日の成功も今日では疑ってかからなければならない。
歴史の面白さと仕事でのスタンスの持ち方を考えさせてくれた良書だった。