紙の本
勇気づけてくれる一冊
2016/03/01 08:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆっき - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の河合隼雄さんは、日本人として初めて、スイスのユング研究所でユング派分析家の資格を取得し、日本の分析心理学の普及に大きく貢献した方。長年、文化庁長官を務められ、また日本に「箱庭療法」を広めた方としても有名です。
さすが、それだけの経験と知識に裏打ちされた言葉には、大変な重みがあります。
講演内容をそのまま本にしたスタイルなので、関西弁混じりのおじさんがフツーに雑談するのを聞く感覚でスルスルと読めますが、その中に、さりげないけれどものすごい重みのあることがワンサと書いてある。
心の問題を抱えるクライアントに、カウンセラーはどのように向き合っているのか。
河合先生ぐらいの大物にも、「こんな時にはこうすればよい」という単純なノウハウは、実はないようです。
心がものすごく「しんどい」状態のクライアントを、「正解」がない中で、見守りながら、カウンセラーはカウンセラーなりに精いっぱい、真剣に、考え抜き、悩む・・・その一番厄介で面倒くさいところから「逃げない」のだそうです。
カウンセラーを志望する人には、その道の重大な意義と険しさを教えてくれる一方で、
「カウンセラー対クライアント」の枠を超えた人と人との関係、「社会」でのあらゆる人間関係や、自分自身との向き合い方にもヒントを与えてくれると同時に、
こんなにも、人間と関わることに誠実で、真剣で、「逃げない」人達がいるのだということに、勇気がもらえる一冊だと思います。
じっくり噛みしめながら読み返しています。
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カウンセリングをする方に向けた講演をまとめた本。カウンセラーは人間力が問われますね。図書館予約数は8(09/09/05現在)です。
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相手が考えるための問いかけのしかたや
東洋思想か西洋思想かにより言葉かけが変わる
瞬時の判断が大切など、講演の時の言葉のまとめでしたので
だぶっている部分もありましたが、納得の内容でした
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カウンセラー向けの講座をまとめたものらしいが、臨床例を元に展開されていて、とても理解しやすかった。言葉がスッと頭に入るのも、河合先生の人柄あってのことのような気がする。
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この頃河合隼雄さんの本をたくさん読んでいます。
どの本を読んでも人と対峙することについての示唆をたくさんもらえてます。
惜しむらくはもっと早くご存命の時に存在に気づいていれば・・と悔やまれます。
この本の中で、棋士の谷川さんとのエピソードが載っているのですが、すごい棋士もカウンセラーも、研究者で勝負師で芸術家だというくだりがとっても印象的でした。
アロマのこと・人の身体のこと・心の事、このお仕事についてから、深く知りたいことがたくさんで研究してきたいことが多く、そしてその内容を実践で生かすには、書いてある事を自分なりに咀嚼して、トリートメントで結果を出せるように勝負に出る。そーしたときにきっと芸術的なトリートメントができるんだろうなぁー。
とどの職業でも極めていけば、ここに収束するような気がします。
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カウンセラーに必要な事を、将棋士の方の言葉を使って、研究、勝負、芸術、と仰っておられたのが印象的だった。
自分の事についても、知識についても研究をしなければならないが、その時その時にどうするかは勝負をしなければならない。そして、全体を見てどうか、何が必要か、という部分は芸術家と同じで、感性のようなものが必要なのだと思った。
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キャリアカウンセリンを学ぶなかで、何か知識が点在してしまい、線や面になっていない悩みを感じていた。この本を読み進めると、つながっていき、知識が体系化されてくる実感がある。
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今週おすすめする一冊は、心理学者で元文化庁長官の河合隼雄氏に
よる『河合隼雄のカウンセリング教室』です。タイトルからもわか
るように、本書はカウンセリングを学ぶ人のための連続講座を文章
に起こしたもので、もともとは専門家向けのものです。しかし、基
本的な内容ばかりですし、一般向けと考えて問題ありません。
特に、人との関係のあり方を考え直してみたいと思っている方、人
の話を聞くことに苦手意識を持っている方、人を受け入れることに
困難を感じる方、には得るところの多い内容になっています。
対象が仕事であれ、家族であれ、私達が向き合うのは人間です。人
間を離れた抽象的な仕事や家族は存在しません。そして、具体的な
人間と向き合い、関係し合う時に問われるのは、自らの人間観です。
ここで言う人間観とは、その人なりの人間に対する理解と言い換え
ても良いでしょう。そして、人間に対する理解を深めるためには、
自分自身に対する理解を深めないといけません。結局、人と向き合
うためには、自分と向き合うことが不可欠なのです。
人と向き合い、自分と向き合う上で、臨床心理学は多くのヒントを
くれます。特に、向き合う「態度」については多くを教えられます。
日本における臨床心理の第一人者である河合氏の「態度」を貫くの
は、「全体性」と「関係性」という二つの言葉です。「全体性」と
は、人を部分では見ず、常に全体として見るということ。つまり、
見えていない部分も含め、その人の可能性を信じるということです。
そして、「関係性」とは、自分から相手との関係を断ち切らない、
なんとしてもつながろうとする、その関係性の中で相手とのあり方
を考えるということです。どちらも人間として、とても大事な、基
本的態度ではないかと思います。
本書の中には、「カウンセラー」「クライエント」という言葉が頻
繁に出てきます。「カウンセラー」を「自分」、「クライアント」
を「自分の相手」と置き換えて読んでみてください。「相手」は上
司でも部下でもパートナーでも友人でも恋人でもいい。きっとより
深くその相手と向き合い、関係し合うためのヒントが見つかるはず
です。是非、読んでみてください。
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▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)
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「ここは何でも話をしていいところですから、十分に話をしてくだ
さい。何でもいいんですよ」と言う人がいるんですが、そういうこ
とは言われれば、言われるほど「こんなやつに言うか」という気が
起こってきたりするんですね。(中略)大事なのは言葉で言うこと
ではなくて、自分の態度がどんなに開かれているか、どれだけ待つ
ほうに傾いているか、ということです。
一般にわれわれは「なぜ」と言うのが好きです。(中略)しかし、
「なぜですか」というのをしばらくやめてみませんか。直接「なん
でです���」と言うよりも、この人間はいったいどういう考え方で生
きているのだろうか、どんな生き方が好きなのだろうかというよう
に考える。すぐに、「なぜ」とか「どうですか」と言うよりは、ゆ
っくり構えていこうとするほうが、人間理解というのが意味をもっ
てくるかもしれません。
結局、人間理解というのはだんだん自分自身をどれくらい理解する
かという問題になってきます。そして、それをやり抜かないと人間
理解はなかなか深まりません。
ある意味で言うと、カウンセラーは試されていると言えます。「い
ったい、あなたはどんな人ですか」ということを、正面からぶつけ
てきていると思ってまちがいありません。
人間には考え方がいろいろあるし、生き方もいろいろあるのだと思
いながらやっていないと、クライエントが来たときに、自分の考え
方で「こうしなさい」「ああしなさい」と言いたくなったり、こち
らの考えを押しつけてしまったりすることになりかねません。(中
略)われわれの考え方をクライエントに押しつけるためにわれわれ
は仕事をしているわけではありません。話をじっくり聞いて、一緒
に考えていくということがとても大事だと思います。
不思議ですが、変化するときにはいろいろマイナスのことが起こっ
たりします。(中略)マイナスのことが起こることによって転機が
訪れるということは、よく覚えておいてください。そのかわり、そ
れはまさにのるか反るかの事態です。ほんの少しでも悪いほうへい
くと、ものすごく悪いほうにいきます。逆に、少しよいほうへいけ
ば大きく変わります。
「悩んでいる人」こそが強いのです。悩んでいる人は何とかしよう
という力をもっているし、何とかしようという意欲をもっている。
(中略)悩んでいる人、悪いことをしている人、変なことをしてい
る人というのは、可能性を秘めていると思えばよいと思います。可
能性をもちながら、その可能性を生きられないので、何か変なこと
が出てくるのです。健康な人というのは、ある意味処置なしで、そ
れ以上変わる可能性はありません。
対話というのは、相手の痛いことを言わないと本当の対話にはなら
ない。「あなたはこういうところがある」「おまえはこういうとこ
ろがある」と、そこに踏み込みながら、しかも仲よく家族としてや
っていけるか。そういうことを本気でやろうと思うと、普通ではで
きない。子どもが学校へ行かないとか、子どもが万引きしたとか、
子どもが死にたがっているとか、そういうことがあって、「これは」
というときから本当の対話が始まるのです。
家族のことをよく見ていると、自分がどう生きるとよいのかがわか
るように思います。家族が私の職業によって何か損なわれるという
のは、やはりクライエントのためにもよくない。そこが大事だと思
います。(中略)全体としてバランスがとれてうまくいくようにす
る。その「全体として」という中に自分の家族が入っているという
ことはすごく大事なことではないかと、私は思って��ます。
家族というものが単に自分を支えてくれるというだけではなくて、
家族とのあり方ということで自分がチェックされている。家族を見
ていると自分がどの程度に生きていたらよいかがわかる。そう言っ
てもよいのではないでしょうか。
人間の心というものも、酒造りと似ていて、ゆっくり醸成されるも
のではないでしょうか。ゆっくりつくり上げていかないとだめなよ
うなところがある。せっかく麹がうまくできかかっているのに、
「まだできあがらんかな」と何回も覗いていたら、だんだんおかし
くなって酸っぱくなってしまいます。
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●[2]編集後記
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先月三歳になったばかりの娘は、今、トイレトレーニングの真っ最
中です。まだまだ漏らしてしまうことも多いですが、出したい時に
出すことを随分と覚えたようです。オシメはもうほとんど卒業です。
初めておしっこが出来た時の娘の嬉しそうな顔は今でも忘れられま
せん。何とも言えない達成感と満足感に満ちた笑顔でした。できな
かったことができるようになるというのは、本当に嬉しいことなの
ですね。人はこの喜びを感じたくて自ら成長するのでしょう。
娘の成長を見ていると、当たり前のことが当たり前にできることの
凄さということを痛感します。寝返り、ハイハイ、歩行、言葉、お
しっこ・・・。何一つこちらは教えていません。教えないのに、気
付くと勝手にできるようになっている。遺伝子にインプットされて
いると言ってしまえばそれまでですが、それにしたって、どうして
こんなふうにできるようになるのか不思議でしょうがありません。
そういう目で見ると、生物が生きて動いているということ自体が本
当に不思議に思えてきます。この週末、畑で娘と一緒にミミズを観
察していたのですが、ミミズというのも改めて眺めてみると相当に
不思議な生き物ですよね。くねくね動くその動きも、何色とも形容
しがたい光り輝くお腹の色も。この世界は本当に不思議に満ち満ち
ています。
そうやって世界の不思議さに気付くと、世界の有り難さを実感しま
す。当たり前だと見過ごしていたことがいかに、特別なことなのか。
それは「なかなかない」という意味で「有り難い」ことなのだと今
更ながらに教えられます。娘のおかげでこの有り難い世界に自分が
生きていることに感謝ができるようになりました。本当に有り難い
ことです。娘の存在には感謝しても感謝しきれません。
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温かい関西弁が読んでいて心地よい。
カウンセラーは研究者であり勝負師であり芸術家であるという言葉が印象的。
筆者の事例を読むと、勝負師と芸術家というのは言葉がぴったりだと思う。
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カウンセラーじゃないけど人と接する仕事をしていて、時々人の成長とか変貌を目の当たりにする。週1会うだけことにも意味がある、という言葉は励まされもするし、共有することの大切さを改めて感じる。
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善意というものほど怖いものはない、闇のなかにどれほどの光が入っているのかわからない
身近な人の力になりたいと考え、カウンセリング・マインドを身につけるために購入した。河合隼雄の本は『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』で対談を読んだだけだったが、そのときの話の内容にいたく感銘を受けたのを覚えている。
傾聴、受容が何よりも大切であることを思い知らされる。聞き受け入れることはたやすいことではない。つい何かを言ってしまいたくなる。それは、自分がその人の悩みをともに悩むことがしんどいからだ。ともに悩んでくれ、話を聞いてくれる存在がいてくれるだけで救われるのに。
反省の意を込めて読んだ。大切な人が悩み苦しんでいるときに心ないことばをかけた。その人がよりよく生きるための物語を紡ぎ出す手助けができなかった。
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「四天王寺カウンセリング講座」で開催されている講座のうち
2007年に亡くなられた心理学者の河合隼雄氏が講演されたものを
「カウンセリング教室」と「カウンセリング講和」の
2冊に息子の河合俊雄氏がまとめておられます
どんな方を対象に開催されている講座なのかよくわかりませんが
語られている内容から 多くの人はカウンセリングの現場に
携わっている(女性が多い)方のように思えました
村上春樹氏との対談を読んでから この方の名前や肩書くらいは
知っているものの どんなことを書いておられるのか
どんな方なのか知りたくて この2冊を図書館で借りました
話し言葉でそのまま収録されています
ああ実際に聞きたかったなと思わされる語り口と内容でした
カウンセリングについて体系的に書かれている専門書とは違い
そうしたことに携わっていない人にでも 自分の生き方について深く考え
何か考え直すきっかけを探そうという人にもお勧めと
前書きにも書かれていたとおりの内容でした
そして氏が生前どのようなカウンセリングを行っていたかと
いうこともおぼろげながら感じられたように思います
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2009年刊行。
カウンセリングと倫理、友情、時間、家族等について講演した記録。
最近カウンセリングを受けて、正直うさんくさく、一体カウンセリングって何なわけ?と思って手に取った本。なかなか含蓄に富んだ内容だった。
わたしをカウンセリングしたカウンセラーにも読ませてやりたいと思った。
正直、流派や経験値、年齢世代性別等によっても相当に左右されそうな内容で、カウンセリングの技法と呼べるものを定型化(河合先生言うところのマニュアル化)は難しそう。しかしそうすると普及や習得スキルの標準化は難しそう。
文中、将棋の名人の、研究者、勝負師、芸術家が同居するのが勝てるベストバランスという発言に、まさにカウンセリングも同じと頷く場面がある。
…だとすると、名人芸の先生に当たったクライアントはいいけれど、そこまでいかないカウンセラーに当たったらハズレってことだろう。
お金を払ってカウンセラーにかかるのに、あまりにも当たり外れがあって、カウンセラーみずから人間修行中と言うなら、あんまりお金払って利用したくないなと思った。
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カウンセリングを学ぶのみならず、自分の生き方を考えなおすきっかけとなる本。
最近、リーダーシップの分野で自己認識の重要性を良く聞く。カウンセリングについての本ではあるが、自己認識へのヒントがたくさんあった。
講演記録ということで、分かりやすい言葉で書かれていて、読みやすかった。
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『カウンセリング入門』のほうが、ライブ感があってよかった。
カウンセリングの本というよりは、日本文化論に近い。モヤモヤした感覚を、的確に言葉で切り取る"鋭さ"は、さすがという他ない。
カウンセリングの難しさ、奥深さを思い知らされる。