紙の本
著者はこうして大人になったのだな、と思わせる痛快青春記
2004/11/27 09:48
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
1989年から2000年まで東京・早稲田のボロアパート野々村荘で暮らした著者の摩訶不思議な青春記です。
早稲田大学探検部員として世界の秘境に身を投じてきた著者ですが、一番の秘境は自らの下宿にあったと思わせる内容に驚きます。そこに住むのは個性的というよりは奇人と呼ぶべき面々ばかり。40歳の司法試験浪人生ケンゾウさん。奇妙な食べ物の腐臭をアパート中に垂れ流す通称・守銭奴。幻覚物質を著者と共に体を張って試してみる探検部の後輩イシカワ。大家さんは齢七十にして卓球で学生と互角に戦う剛の者。
著者も風呂がわりに区立プールへ通い、俄か占い師になり、さらには流しの三味線引きを目指すなどハチャメチャな日々を送るのです。
私も東京で家賃1万9千円/月の四畳半で80年代前半に学生生活を送った口です。西日が厳しく、夏ともなると机の引き出しにしまってあるだけの体温計の目盛りが40度を指してしまう下宿部屋でした。そこで私は友人と酒を酌み交わし、薄い壁を通して聞こえる両隣の住人の不思議な生活に目を丸くし、大家さんがかつて味わった姑による陰惨ないじめの体験談に耳を傾けたものです。他人との距離が今よりも近かった時代の良き思い出です。
ボロアパートに愛着が湧くのは、住めば都の言葉通りだからなのか、それとも出来の悪い子ほど可愛く感じる愛情の類いなのか。いずれにしろ、著者ほどのスケールではないにしても、古びたアパートの小さな一室で何年か暮らした経験のある私には、この本に書かれている挿話の数々には甘酸っぱい懐かしさを感じるのです。
著者が野々村荘を「卒業」するに至る経緯を綴った第六章は出色の出来です。
大人になるとは企業に就職するというようなことではなく、このように安住の地に背を向けて新たな旅に出ることなのだ。そんな風に感じさせてくれる好編です。
「その人」(265頁)の言葉通り、「粋な文章」で綴られた清々しい一冊です。
紙の本
笑い転げる
2016/05/30 11:26
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投稿者:ぽにょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
探検家高野秀行の自伝的小説。
ワセダにあるアパートを中心に繰り広げられる物語。
なかでも、風呂に入る代わりにプールにいくくだりに笑えた。
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笑えます!
2018/09/20 17:10
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投稿者:しんごろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のエッセイというよりは自伝的青春小説!笑った笑った!バカだアホだとツッコミながら読んでしまいました。住人や探検部のメンバーの個性が強すぎ(笑)大家のおばあちゃんもいい味だしすぎ(笑)きっと本人にとって楽しい青春だったんだなと思いました。(このハチャメチャさは俺には無理w)笑ってばかりいましたが、ラスト辺りは、心温かくなり、そしてしみじみともなりました。これは笑い声がでてしまうので公共の乗り物で移動中に読んではいけない本ですね。ああ面白かった。
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タカノさん……個人的に名前がトラウマなので、うっときたけれども、
miti、こういう方ダイスキなのですわ。なんか、しんぱしーちうのを感じちゃうのよねぇ。
それにしても、幻覚サボテンを試す方って多いのねぇ。失明する危険あるので注意ですよ。
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これは、彼の大学生活のお話。やっぱり普通じゃない。というより、彼の周りにはきっと変な人が集まっちゃうんだろうなw
気分がどんよりしてる時に読むと、笑えて、なぜか元気が出る!!
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5月31日購入。6月9日読了。普通に読んでて面白いんだけど,"コンビニ"って単語が異常に違和感を覚えるほど時代が逆行してて素直に凄い。
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笑いあり、ほろ苦さあり、甘酸っぱさありの一作品。大学近くの安アパートでくり広げられる高野氏と周囲の人々との不思議な生活。だけど、最後はちょっと切ない。「旅立つ日」を近く控えた人や、逆に「行き詰まり」を感じている人に薦めたい。
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2009/01/27 やっぱりおもしろい。かつ泣ける。
2007/01/09 再読 絶妙。
2006/10/10
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筆者が早稲田大学から徒歩五分の三畳一間のアパートで、約十年間を過ごしたのを描いた青春記。住人も変人ばかり、馬鹿馬鹿しくて笑えます。
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おもしろい!最初は背表紙にやられて買ってしまった本だけれども、一度読んでしまうと一気に読みたい!って思ってしまう。また「飯作りは危険がいっぱい」「人体実験で15時間、意識不明」など、まさに読むことを誘うようなフレーズ満載。人を誘い込むフレーズが上手過ぎる。こんなにおもしろいのに、最後の最後には、『あぁ、ついにこの本の最後がやってくる・・・・』っていう寂しさの思いと共に、心の中に小さな幸せが芽生えてくる。昔学生だった人、現代の学生の人。全ての学生に読んで欲しい一冊。
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ワセダ後輩として、ただただ敬服いたしますです。ハイ。とても東京ていうか日本とは思えぬ人々と暮らしのほんとにあったお話。
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<三畳一間、家賃月1万2千円。ワセダのぼろアパート野々村荘に入居した私はケッタイ極まる住人たちと、アイドル性豊かな大家のおばちゃんに翻弄される。一方、私も探検部の仲間と幻覚植物の人体実験をしたり、三味線屋台でひと儲けを企んだり。金と欲のバブル時代も、不況と失望の九〇年代にも気づかず、能天気な日々を過ごしたバカ者たちのおかしくて、ちょっと切ない青春物語。>
思ったより笑えた。探検記のほうの著作も是非読みたい。
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2007/3/28 高野秀行という探検家(でいいのか?)が書いた本が面白いらしいという話は以前から聞いていたのだが、何となく読まずにいて、たまたま先日本屋で時間を潰していた時に手に取ったのが本書『ワセダ三畳青春記』(集英社文庫)。
立ち読みしながら、笑いを堪えるのが必死になるほどオモシロイ。
早稲田にある三畳間の下宿を舞台にした著者の青春時代の物語なのだが、80年代から90年代にかけて、こんなバカなことをやっている人がいたのかと呆れるくらい、おもしろい。
下宿の住人や著者の友人など、一般人から見ると奇妙奇天烈な人々が多数登場して、こんなにオモシロイ人が世の中にいるんだと驚きを通り越して感心してしまった。
この本のような突飛な生活はしてませんでしたが、自分の大学の頃の一人暮らしをちょっと思い出して懐かしい気持ちになりました。
その一人暮らしをしている時のことで思い出したのが、先輩と2人で一晩中、スプーン曲げをしてたこと。なんでそんな事をしていたのかは、全くもって覚えてないのですが、何時間もやっていて、しかも、最終的には僕が持っていたスプーンが曲がったんですよ!ちょっとだったんですがね、大驚きです。しかも、スプーンが曲がったのが恐くなって、2人でビビッたのを覚えてます。曲げようとしていたのに、曲がったからと言ってビビる必要は無かったのに^^;。
というわけで、たった今思い出したのですが、実は僕は超能力者だったのです\(^◇^)/
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なんという傑作。
コンゴの怪獣探しで、ある筋に有名な著者が「野々村荘」で濃ゆい人たちと暮らした11年間を描いたエッセイ。
狭いアパートだけども、大家のおばちゃんも他の部屋の人たちも一癖あるが愛嬌もあり憎めない人ばかりで楽しい貧乏暮らし。
まわりが就職していく中で、会社勤めもせず、ずっと変わらない自分にじたばたする著者にも共感できる。かわるものかわらないもの、それとゆかいな早稲田大探検部の面々。突然訪れる転機。巣立ち。
文章もとても素直で軽快、
思いがけず心にぐっとくる一文なんかもあります。
500円くらいでこんな作品が読めるなんて奇跡のようです。
皆様も電車の中や布団の中で是非どうぞ。
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バブル期、バブル崩壊もそっちのけ、11年間、三畳一間、家賃1万2千円の野々村荘に住んでいた高野さん。そこに集まる奇怪だけど愛嬌たっぷりの面々たちのお話。