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もうかなり前のことになりますが、大学で金属工学というものを学びました。学部卒業と同時に「材料工学」に学科の名称が変わり、それから何年かしてさらに変わったという通知を受けましたが忘れました。1年ほど前に出身大学のサイトを覗いてみたら、名前が殆ど変わっていて本当にこの大学を卒業したのか不安になりました。
さておき、大学で学んだ知識も何年も経つと殆ど忘れるものですが、当時の授業の科目名程度は覚えているので、図書館でこの本のタイトルを目にして何気なく手に取ってみました。
学んだ当時、あれほどわかりにくかった熱処理及びそれの基礎である鉄の状態図・組織変態について、こんなに分り易く丁寧に書いてあるなんて、今学ぶ人は羨ましいです。
熱処理の仕事ではありませんが、金属材料については打ち合わせで名前が登場することもあり、話の流れで熱処理の知識が活かされることもありますので、そのようなときにはこの本があったことを記憶していたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・熱処理は加熱と冷却の組み合わせ、重要温度は、加熱中の約700℃(赤づく)と、冷却中に黒づく550℃である(p12)
・赤づく温度は鋼の変態開始温度、黒づく温度は冷やすスピードで、オーステナイト組織から、硬いマルテンサイトとなるので、550℃は冷ませ方の重要温度(p12)
・鋼の組織は、炭素濃度と鋼の温度で決まる、高温での組織はオーステナイト、温度が下がるとフェライト、パーライト、セメンタイト、マルテンサイトと呼ぶ結晶構造が出現する(p14)
・JIS鋼材の種類は、大きく普通鋼と特殊鋼にわかれる(p17、55、59)
・変態とは、金属成分は不変で、温度や圧力変化により、結晶構造が変わる現象、溶鉄は1536℃で、δフェライト(体心)へ、1394℃で、γオーステナイト(面心)、911℃で、アルファフェライト(体心)へ変態する(p26)
・γ鉄は炭素なら2%固溶する、α鉄は0.0218%しか溶けない、余分はセメンタイトという鉄炭素化合物として析出(p26)
・水冷は焼入れ、油冷は焼きもどし、空冷は焼なまし、炉冷は焼ならし(p37、53)
・鋼材は、1)化学成分、2)形状(鋼板、線材、鋼管等)、3)鋼の組織(フェライト等)から成立する(p48)
・鋼材の性質を整える元素は、大きく4種類のグループがある、第1グループは、C・Si・Mn・P・S、第2グループは、鉄の不純元素(O,N,H,P,S)、第3グループは合金を形成する元素(Cr,Ni,Co)、第4グループは炭化物などを生成する元素(Mo,V,W,Nb,B)がある(p50)
・ステンレス鋼において、マルテンサイト系はクロムを13%含有、フェライト系はクロムを18%含有、オーステナイト系はクロムを18%、ニッケルを8%含むSUS304が有名(p74)
2012年3月3日作成