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みんなのレビュー8件

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紙の本

狭い地域の無形で貴重な観光・文化資源を知る

2009/10/18 21:35

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 内田康夫の浅見光彦シリーズである。今までも作者自身がこのシリーズに登場することはままあったのだが、今回は出ずっぱりである。こうなると、浅見以外の他の登場人物は不要となってしまう。現に今回は兄の刑事局長の出番すらない。

 その代わりとなるのは内田自身である。自分の名前で自分の小説に登場するというのも臆面もない話である。舞台は富山県の八尾である。私は全く知らなかったが、注意して見ると、新聞の旅行広告には季節になるとこの「風の盆」を見に行くツアーが所狭しと掲載されているのを目にすることができる。

 一集落の季節の盆踊りが情緒があり、一般受けするというので狭い街に大集団が押し掛けることになってしまった。この踊りのあり方を巡って、内部の対立があるという。実際にそうであるか否かはよく分からない。ストーリーではそれが伏線となっている。

 例によって殺人事件が発生するのだが、その事情を浅見と内田センセが解決するものである。内田センサの個性が強く描かれ、読後は何やら浅見名探偵の影が薄くなっていた。それでよかったのであろう。たまにこういうストーリーも結構だと思う。今回は浅見のマドンナも登場しない。しかし、たしかにマンネリは打破されていると思う。

 今回は場所もほとんどこの八尾だけである。この地方が舞台としてたっぷりと描かれている。あちこちに飛び回るよりも、この方が落ち着くような気がする。しかし、現実にはこの狭い地域に住民の人口をはるかに上回る観光客が押し掛けるわけで、シーズン中の宿舎の混雑や交通の渋滞など、問題は多いようだ。しかし、内田も描いている風の盆の雰囲気や幽玄を感じさせる踊りは是非実際に訪れて見てみたいと感じた。

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