紙の本
武士の若者の生き方がしっかり描けている感動作。
2015/09/09 09:59
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
とてもよかった。登場人物の性格づけがきちんときていて、若者同士の友情が嘘くさくなく描かれているのが何より素晴らしい。剣でやり合う場面もあるが、決して立ち廻りに比重が置かれているわけではない。あくまでストーリーの中で本当に必要なものとして、剣での闘いが描かれる。
ハッピーエンドとはいえない。何しろ主人公の親友は、職務の中で「斬らねばならぬ」という強迫観念からおかしくなってしまうのだから。しかし、そのような悲惨な流れがありつつも、決して読後感は悪くない。暗くない。むしろすがすがしい。武士であることのジレンマを抱えつつ、しかし武士として生きることを決めた青年の在り方に、希望を見いだせるからだろう。いい話だった。
電子書籍
デビュー作
2022/03/16 10:56
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
「つまをめとらば」が良い意味での「佳作」で感銘を受けたので、この作品も読んでみた。時代小説 剣豪もの 人情物 推理モノ と複数の要素をうまく混ぜながら、上品で端正な文章で描きあげている。読み終えてからこの作品がデビュー作と知った。デビュー作からこの様な完成度の高い作品を書く作者だったんだな と改めて認識し直した。
紙の本
白樫の樹の下で
2018/08/24 22:04
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投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代は天明の、田沼意次から松平定信に移った頃の貧乏御家人である村上登とその道場仲間、またその周辺の繰り広げられる出来事を推理させながら最後へと導いてくれる時代小説である。
主人公の村上登はある縁から名刀の一竿子忠綱を手に入れるが、様々な事件に遭遇することとなる。最後まで飽きさせない工夫もされていてとても面白かった。
紙の本
人を斬る凄み。
2016/01/16 09:08
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
夢見る三人の青年の前途有望な話しかと思ったが、そこにはどこにも夢を見いだせず鬱屈した闇が広がっていた。
そんな時に町では辻斬りの事件が起る。
主人公村上登も名刀を手にしたことから事件に巻きこまれる。
そして幼なじみの佳絵との思いが通じたが、佳絵は辻斬りに遭ってしまう。
時代小説ながらミステリーの面白さが際立つ。
第18回松本清張受賞作。
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【いまならば斬れる!】田沼時代から清廉な定信時代への過渡期。人を斬ったことのない貧乏御家人が刀を抜く時、なにかが起きる。第18回松本清張賞受賞作。
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時代ミステリーの形をとっているが、いろんな読み方ができ、作品の主題も人によってはいろんな風に捉えるのではないだろうか。
現在にも通じる格差と貧困、若者のアイデンティティ探し、友情とは?様々なテーマを含んでいるので、読む人によって違う読み方が出来るでしょう。
文章が良いので非常に読みやすかったのですが、もう少し書き込んで欲しいところもあったかな。
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L
背表紙のあらすじはあてにならないので鵜呑みにしないように。
武士であるがゆえに捨てられないもの、刀に魅入られること、人を殺めること、出世、恋、剣技。そうだよ、武士が悩んでしかるべき!の中身。剣の腕があったって人を殺めれば刃毀れもするし、買い替えや研ぎには金がかかるから悩む。真剣を持てばいつ抜くか、抜かざるをえないとき、抜きたい衝動を抑えては悩む。
途中、登の悩みに引き込まれそうになったよ。
名刀を預かることになった登の悩み、とある事件を解決したことで役を得た昇平の悩み、役もなく自身の剣の腕にも限界を感じていた兵輔の悩み。3人の悩みのタイミングにあることが重なって、さらにあらぬ方に転がっていく。
3人が友人だからこそ、重みが増す。感じ。
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未来の展望が開けない青年たちの夢をかけた、切なくて苦しい青春時代小説。悪政で有名な田沼意次の時代から、松平定信の時代に移り始めた頃の江戸が舞台。御家人の村上登は、道場仲間と貧しいながらも、清浄な武士への鍛錬に勤しむ日々を暮らしていた。そんな時手にした一振りの名刀が大きく三人の運命をかえていくことになる。。本作品、友情と反目、はかない恋など時代に翻弄された士分たちの心の機微を巧みな言葉とともにあぶり出しつつ、辻斬り犯を巡るミステリアスな面など多彩な要素を含む。がすべての要素は、天下泰平の時代に巣くう”貧困”の一点に集約されるよう区切りなく物語は進んでいく。それにしても精緻なロジックと貧困がもたらす悲劇を余すことなくつまびらかにする切れ味抜群の筆力が凄すぎ!筆者の時代小説にかける真摯な想いを強く感じる秀逸な作品です。
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先日読んで良かった青山さん。これもなかなかです。
田沼政治が終わった頃、流行の竹刀剣道ではなく木刀による型中心の剣術道場に通う三人の若い剣士を描いた作品。
時代小説で三人組といえば、武闘派、頭脳派、癒し系の仲間が力を合わせて事態を打開して行くというのが王道です。しかし、この作品で描かれるのは剣の道に邁進するがゆえに壊れて行く若者たちです。
爽やかな感動のようなものはありません。妬みや破滅があります。しかし、それは道を究めようとする清冽さが、誤った方向に流れた結果です。
純文学を目指いしていた著者の再デビュー作と言える作品。その主人公の一人の名前が青木昇平。著者のペンネームに模した名ですが、何か思い入れがあるのでしょうか。
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描写がとても丁寧で細かいのが今回はあだになって、少々時間をかけて読了。
もともと「つまをめとらば」で直木賞を受賞されたのがきっかけで、読了後に手にした本だった。
これまで他の作家を含めて、何冊かの時代小説を読んできた中で、青山氏の小説はとても「上品」な印象を受けた。
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時代小説ながら、途中までのミステリー感はすごかった。これが最後まで続けば文句なしの五つ星だったが。。ミステリーなしとしても、一人の青年の成長の物語として読み応えがあった。
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剣の道に生きることで未来を切り開いて行こうとする
幼馴染の貧乏御家人3人
その純粋さゆえに壊れてゆく。
1本の刀と出会ったことで転がりだす過酷な運命
青年たちの必死さと純粋さがヒリヒリとする1冊
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ミステリとしては素直。主人公の迷いも誠実で、重たい荷物を負うことにはなったが、読後感は重苦しくはない。
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内容(「BOOK」データベースより)
いまならば斬れる! 人を斬ったことのない貧乏御家人が刀を抜く時、なにかが起きる――。
幕府開闢から180年余りが過ぎた天明の時代。江戸では、賄賂まみれだった田沼意次の時代から、清廉潔白な松平定信の時代に移り始めた頃。二本差しが大手を振って歩けたのも今は昔。貧乏御家人の村上登は、小普請組の幼馴染とともに、竹刀剣法花盛りのご時勢柄に反し、いまだに木刀を使う古風な道場に通っている。他道場の助っ人で小金を稼いだり、道場仲間と希望のない鬱屈した無為の日々を過ごしていた。ある日、江戸市中で辻斬りが発生。江戸城内で田沼意知を切った一振りの名刀を手にしたことから、3人の運命は大きく動き始める。
令和3年2月26日~3月2日
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ミステリー仕立てでなかなか面白かった。しかしヒロインも脇役も唐突にあっさり死に過ぎ。江戸の頃は箱崎のあたりに中洲なんてのがあったんだねえ。