紙の本
こういうの、大好きです
2002/04/02 19:18
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
大きな屋敷に住む老富豪。そこに集まってくる彼の財産を頼りに生活している甥・姪たち。誕生パーティーの席で告げられる財産相続に関係する重大発表。時を移さずにおきる殺人事件。名探偵登場、一見全員にアリバイがあるようにみえる屋敷に集まった人々の中から犯人を探し出す。と、よくありがちな、時代遅れで典型的な「館もの」なんですが、読んでいて、自分はつくづくこういう古臭いミステリが好きなんだなあと思いしりました。もうおもしろくておもしろくて。
事件がおこるのは、物語も半ばを過ぎてから。それまでは、この屋敷に集まった一族の、うわべでは平和で友好的に見えても、裏ではお互いに蔑みあって憎みあっている様子が執拗に書かれ、不安感を盛り上げていきます。探偵役が登場後は一気呵成、快刀乱麻を断つような推理で犯人を名指しするあたりは、とても興奮します。
探偵の謎解きがはじまってからはじめて出される重大な証拠という、一部アンフェアなところがありますが、それでも「館もの」の名作の部類に入る作品だと思います。
ロジャー・スカーレットというと『エンジェル家の殺人』だけの作家だと思っていたのですが、訳されていないだけで、こんなおもしろいのを書いていたんですね。
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殺人が起こるのは全体の半分以上が過ぎてからで、それまでは特殊な一族の描写に費やされている。でもそれで特に飽きるとかうんざりするということはなく結構興味深く読める。んで満を持して起こる殺人と探偵役のケイン警部の捜査と推理はいかにも黄金時代って感じでわくわくしながら読んだ。真相も意外な犯人意外な動機と驚かされること請け合い。二重底の下の真相は多分見抜けない。
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古典とは言え、このような典型的な本格を読める機会は滅多にないので、期待と勢いに任せて一気に読んでしまった。読了後、なぜ一気読みできたのか自分でも不思議な気がした。思い当たるのは登場人物の奇妙さ。誰ひとり共感できず、誰ひとり好きになれないキャラばかり。それが逆に「小説の中の出来事」という印象に拍車をかけ、期待感の後押しもあって余計に新鮮に感じたのだろう。事件は物語の中頃まで起こらない。それまでを、容疑者たちの不思議な性格や不安感にページが費やされている。しかし退屈するシーンはほとんどなく、奇妙で理解しがたい人物たちから目が離せない。事件そのものはありふれているし、解決にいたってはずるいような気もしないではない。また、探偵役の登場が遅いのでそれまでに回り道をするが、それは決しては無駄ではない。手がかりはすべて提示されているので、「読者への挑戦」が挿入されても面白かったと思う。一番気に入ったのはラスト。一瞬呆気にとられるが、潔さと作者の勇気(?)に感心した。
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ノートン・ケイン・シリーズ
休暇から帰国したケインへの事件の報告。アンダーウッドとモーラン部長刑事の証言。大富豪マーティン・グリーノウが殺害される。容疑者は当日屋敷に集まっていた親族たち。ハッチンスン、アーミリア、ジョージ、アン、フランシス、ブラックストーン。ブラックストーンが連れてきた婚約者ステラ。かつてフランシスと婚約しマーティンの反対で破断した経緯を持つステラ。再びの反対。マーティンの遺産を当てにする親族。マーティンの愛人イーディス・ウォーデン。マーティンの誕生日を祝う打ち上げ花火。「F」からの謎の手紙。愛人に向けた手紙に隠された秘密。
2009年7月28日初読
2011年3月5日再読
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年老いた、子のない大富豪の豪邸。彼の誕生日に集まった肉親たち。その夜起こる殺人事件。複雑な謎が絡みあう事件の手がかりはどこに?本格派ミステリの王道を行く傑作。