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紙の本
土は偉大な存在だと再認識させてくれる
2010/08/08 18:18
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者が冒頭で述べるように、一日のうちで土を一度も踏むこともなく、毎日を過ごしている都会人には、かなり興味深いことが書かれている。何しろ、すべては、この大地に由来するのだから、その働きは多岐にわたる。著者は、務めて分かりやすく書いたとあとがきで述べているが、それなりの教養と、関心の高さはあらかじめ必要としそうな内容である。
前半は土の果たしている機能について書かれている。動植物を養い、これらの寿命が尽きたあとに、分解し、土に返す働きもある。こうした土の働きの多くは、土壌の中にある微生物による。1グラムの土壌には1億から10億の微生物がいるのだそうだ。ほかにも窒素やリン、カリウムなどの養分があり、複雑な働きをして、地球を支えている。
母なる大地とはよくいったものだが、著者はその機能を多面的に解説してゆく。理科の時間にもこうしたことの断片は学んだのだろうが、こうして総合的に論じてもらうと、土への認識が新たになる。「呼吸する土」というのは、なるほどと思いつつ、もはや単なる物質を超えて、土壌自身が生命体のように思えてくる。
「土は化学的にも物理的にも簡単な外的条件の変化では動かされない強靱さをもっている」という「緩衝能」の説明では、実に頼もしく感じさせてくれる。たくさんの種類と数の土壌生物たちが、酸性雨や多雨・小雨、病害・虫害による生態系の破綻を防いでいるという。
ところが、本書の後半に来ると、一転して、近年の大規模に効率性のみが追求された農業のために、土が疲弊している事実が述べられる。窒素が工業生産されて、化学肥料として大量にまかれる。農薬も多用される。
こうしたことは、単一作物を何年も続けて同じ土地で栽培し続けるために必要とされる。かつては、輪作によって畑が休まされたり、家畜が放牧されて自然と肥料が戻されたりしていた。それがなくなったために、肥料の過剰、農薬の多用が起きている。
著者の言葉によれば「土力の低下」が起きている。緩衝能によって破綻を防ぐシステムがあるはずなのに、こうしたことが起きているとしたら、深刻だ。
米国、EU、日本で80年代、90年代以降に環境保全型農業が提唱されている。このことを引き合いに出して、もはや大規模で効率性だけを追い、単一作物を連作し続けるのは、大地でも悲鳴をあげる事態であることを著者は指摘する。
やはりそうなのか、これまで技術革新によって、農業生産高がどんどん向上し、地球上の人口が増えてきたが、限界が見えてきたのかもしれない。著者はリン酸資源の有限性がネックになるだろうとしている。
最後に著者は、土を利用しない「植物工場」の可能性と限界にふれる。通常の農業において、太陽エネルギーによって供給されるのに見合うエネルギーを、植物工場には人工的に投入しないといけないという点で限界が生じるとする。
やはり、長い長い地球の歴史が与えた土を抜きにして、私たちはやってはいけない。それにしても、著者の言うように、その割には、土についての本格的な学習を私たちはしていないという感がする。著者は高齢ではあるが、こうした普及活動の労を執る意義は大きいと思わせるものがあった。
紙の本
題名通りの内容
2023/03/18 11:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界中の人類を始めとして様々な生き物の命を支える「土」の働きを大変に平易にわかりやすく解説している。まさに題名通りの内容である。後半部分ではその「土」に対する過負荷の問題を取り上げている。近年のSDG'sにもつながる問題である。土を始めとする環境破壊の最大要因である「人口増」の問題をなぜ正面から取り上げないのか、大変に疑問に思う。
紙の本
「土からものを考える視点」に貫かれた本
2010/08/02 10:15
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
京大農学部で「土壌学講座」を担当していた現在京大名誉教授の著者が、一般向けに土の重要性を解説した本。
「土からものを考える視点」が全編を一貫している。
土(土壌)はもちろん農産物を育む基盤であるが、農業という視点だけでみていては、土のもつ意味を理解したことにならないと著者はいう。
著者「まえがき」で、孔子のコトバを引いている。「土が植物を育て、それによって動物を養うだけでなく、生き物たちが死んでまた還りゆくところもまた土であること、さらに土を通った水が美味しい泉となることまで良いことをしながらも、それを誇らないゆかしさ」。紀元前一世紀のある中国人が紹介したものでるという。
土がどうやってできたのか、土のなかはどうなっているのか、なぜ日本を含めたモンスーンアジアでコメ作りが定着したのか、そして土のなかに生きる微生物について、土のなかの栄養とその補給、「土壌浸食」や「砂漠化」といった土の危機、耕作用の家畜を飼わなくなって以降の近代農業が土にとってもつ問題、水耕栽培の限界など、広範囲のテーマについて、自ら語らない土にかわって著者がわかりやすく説明してくれる。
土壌は、もっぱら農業や園芸の対象であるが、同時に地質学でもあり、微生物学でもあり、植物学でもあり、動物学でもあり、化学でもあり、地球環境問題でもありと、かなりの広範囲にわたる総合科学なのである。
「土からものを考える視点」に貫かれたこの本は、ふだんあまり意識していない観点からものをみるための、格好の一冊となっている。
「そういえば土を踏む生活になっていないなあ」と思う人は、ぜひ目を通して欲しい一冊だ。
紙の本
土
2020/01/17 06:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
土壌というのは不思議でその成り立ちが興味深い。様々な生き物を育ててくれるこの環境を解説してくれる。その源泉は魅力的な環境だ。
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