投稿元:
レビューを見る
『新興国の企業が、多様多種な手段を駆使して引き抜きにかかる現状において、競争力の源泉たる「グローバル統合に対応できる人材」を、集団としてのつながりや、日本人としての責任感というような、重要ではあるものの、弱まりつつある日本独自の価値観のみで縛り続けることが、果たしてこれからも持続可能なのでしょうか。
国際的に競争力のある人材に対して正当な対価を与えることができないのであれば、正当な価値を与えることができる企業に人材が流出するのは当然の成り行きにも思えます。』
非常に勉強になった一冊。
「グローバル統合に対応できる人材」と「ローカル適合を実現させる人材」の違いに納得。
日本人で、日本語が出来て、日本文化を理解して、英語がそれなりに話せて、少し海外経験がある人材は、後者でしかなく、前者にはそう簡単になれない。この違いを日本企業が明確に意識して人材獲得競争に本気で臨んでいるようには思えない。という筆者の意見にものすごく納得。
投稿元:
レビューを見る
類似本としては
入山先生の「世界の経営学者は今何を考えているのか」が挙がると思うが、
あちらの本は実践レベルに応用出来るTipsをアカデミズムから紹介しているのに対して、
こちらの本は国際経営学(それは2面性があり)とはどのようなものかをアカデミズムから紹介している、
という違いがある。
なので、純粋に学問としての経営学に興味がないと読んでいてしんどい本だろうし、
その点がAmazonでの評価の低さに繋がっているんだろうと思う。
帯にマッキンゼー、とかオックスフォードとか書いて一般読者を釣っているからこういうミスマッチが起きる。
もったいない。
経営学にはサイエンスとしての普遍性を目指す方向性と
実学としての実践への応用を目指す方向性の2面性がある。
この2つの方向性は相反しているため、
経営学を論じるときはこのことを認識しなければならないと筆者は主張する。
本書は起業経験とコンサルタント経験から実践を追求する視点と
欧米大学院でトレーニングを積み、現在も学者としてサイエンスに向き合っている2つの視点を有している筆者ならではの両面に応じた議論が展開されている。
国際経営学におけるアカデミズムの蓄積を両面から紹介しており、内容は決して易しくない。
特に後半の比較制度から見る国際経営学は難しく、ロジックは理解出来たつもりだが、
どうも具体的なイメージまでは出来なかった。
これは読者の力量不足だが、
参考文献(全部英語だが)も豊富に紹介されているため、
やる気があれば自分で補うことも可能だ。
投稿元:
レビューを見る
本書の目的は「経営学の学問的価値の底上げ」にあるようで、いわゆる経営ノウハウ本の類とは全く内容を異にしている。従って、実際の現場における意思決定にすぐに役に立つというものでは少なくともない。
経営の現場に役立たないものは経営学とはいえないのではないか、という声も聞こえてきそうだが、こうした学問としてのアプローチは、学問領域における本質を理解する、という意味で極めて有効だと思う。本書においては、経営学の本流をなす学説とその成り立ち、更にそらら成立の背景や境界を接している学問との関連などをかなり網羅的に論じており、経営学の領域での知見を広げるという目的においてはよき手引書だと思う。
思えば、15年ほど前に某大学で経営学という学問を初めて学んだときには、「量的適応」という極めてミクロな領域がテーマであったが、本書は国際経営論という、まさに対極であるマクロ経営学とでも呼ぶべき内容で、私にとってはこれまでもっていた学問としての経営学に対するイメージを修正する内容であった。
ただ、残念だったのは、想定する読者層が今一つ明確でないことだ。内容としては、最大手の企業関係者ではなく、そのフォロワーのポジション向けと思われるのだが、提起されている戦略理論を実務に落とし込んでいくには、フォロワーの組織能力レベルではかなり厳しいと思われる。特に、バリューチェインの中で影響力を行使できるポジションをとれるようにするというのは、現実的には最大手でも難易度が高いと思われる。やはりマッキンゼー流というところなのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
SFCの卒業生琴坂くんの著書。400ページの分量にまずひるむが、経営学、特に国際経営学に関心のある人は必須の教科書として読むと良いと思う。タイトル通り、経営を様々な分野と融合しているものとして捉え解説している。意思決定、組織、貿易、新興国への進出、人材等。読みごたえ有り。
投稿元:
レビューを見る
今一番旬だと思われる。国際経営論について経営の現場で培った経験をふまえた経営論です。大変面白い内容で、たぶん2014年度のビジネス書のベスト10は間違いないでしょう。グローバル化している企業の皆さんはご一読を
投稿元:
レビューを見る
MBAの社会人コースに通っていたとき、先生が企業の現場というフィールドで(たぶん)活躍中の学生達の話を聞こうとしないどころか、そうした会話を敬遠しているように思えることがありました。
社会人である生徒が「そんな理屈は現場では通用しない」と思っているだろうという先生側の先入観が「べ、別に経営学の知見はあなたの会社の個別具体的事情とは、か、関係ないんだからね!」という態度を招いたのかもしれません。
本書は経営学における「実務」と「研究」の二面性を正面から認め、そんな無用な心理戦の排除に成功しています。そこには実務と研究の双方を経験した琴坂氏の経歴も有効に作用しているでしょう(あ、これは本書の「誰が言ったのかは重要でない」に反していますね)。
もう一つ重要な点は、明示的に説明されていないものの本書が国際経営学を扱っていることです。というのも経営学における欧米中心の事例や理論をわが国に持ち込んでも、実務側からは「日本では違う」と一蹴されがちですし、その結果研究側が「日本の経営はダメ」とか言って賞を取ってしまい、それで実務側が、、、とデフレスパイラルに陥りがちなところ(あくまで一般論)、国際経営学は欧米も新興国も日本も対象に包含した上で、比較制度的、すなわちサブシステムから成る社会システム全体に視野を広げることによってそれぞれの差異の存在を(少なくとも当面は)受け入れることで無用な対立を解消しているように思われます。
このように本書は学際的という意味のみならず、経営学のはらむ「実務」と「研究」、「日本」と「海外」(一般化すれば「ローカル」と「グローバル」)という軸においても領域を超えて弁証法的に内包することによって、経営学をより身近なものとして読者に伝えようとしています。
語り口こそ穏やかですが、そうして筆者の琴坂氏が伝えようとしているメッセージは「日本のビジネスはもっと頑張れ!」というアツい思いだと評者は受け取りました。
投稿元:
レビューを見る
学生時代の国際経営論の講義を思い出させる内容。古くはアダム・スミス、近代ではハイマーに始まり、ゲマワットまで広くカバーされているのが凄く良い。このまま国際経営論の教科書に使えるのではないか。入山先生の著作も良いが、この本も良い。ただし、ビジネスマンには不向き。
投稿元:
レビューを見る
国際経営を題材に、経営学を社会科学と実践科学の両面からとらえた書。国際経営を網羅的に把握できる。筆者は経営に関わる3つの立場(経営者、コンサル、研究者)を経験。ビジネス書にありがちな「俺はこう思う!」ではなく、ジャーナル論文を中心とした先行研究や自身の経験に裏打ちされた内容は非常に濃い。
Amazonの書評はボロボロだが、自分としては良書だった。
投稿元:
レビューを見る
・気鋭の経営学者による「国際経営という旅のガイドブック」。
・経営学という「学問」であるため、止むを得ないところかもしれませんが、抽象論が多く、実際の業務で直接役立つという部分は少なかったかもしれません。
・一方で、視野・視座というところでは、ヒントになるような部分も多かったように思います。
■原材料から最終製品に至る価値連鎖の中で、力を持つことができるのは誰なのか。
■グローバル統合への圧力とローカル適合への圧力のそれぞれの強弱で、取り得る戦略の方向性が異なる
などなど。
・少なくとも、自分自身の知見がまだまだ不十分だと思い知らされるきっかけになりました。
投稿元:
レビューを見る
企業倫理が未来を変える
グローバル企業の経営について書かれた本。
「企業倫理が未来を変える」という章は新鮮であった。
その章では、ヨーロッパに展開するスターバックスの節税スキームが記述されていた。三つの国をまたいでビジネスをする事で税を回避するという話である。これは倫理的に正しくない事であるが、相対的な判断しかできないこともある。例えば、先進国側から見たら間違っているが、発展途上国側から見たら正しいという場合である。Appleの例では、端末製造の下請けとして中国の労働者が雇用されていて、その人たちは先進国の人からすると、刑務所の様な所で生活している。しかし、現地の人からすると仕事や住む場所が与えられて、満足しているという例だ。価値基準が異なる国や地域で事業を行なっている場合、企業自身による自制が求められると感じる。