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もし幕末の日本に、日本びいきで日本語も堪能なフランス人が渡来し、密かに幕府に協力していたら....という歴史の「if」を描いた小説。
時代考証や実際の人物像との整合性等、細かなことを気にしながら読むような種類の小説ではないので、架空の設定を活かした荒唐無稽なストーリー展開を期待したが、今ひとつハジケ具合が足りず、正直物足りなさが読後残った。
娯楽小説なのだから、もっとハチャメチャな「if」(例えば主人公の活躍により大政奉還が行われず、江戸幕府が現在まで存続する等々)を描いた方が、痛快で面白くなったような気がする。
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単行本『幕末裏返史』の改題・文庫化。
日本愛あふれるフランス青年アナトール・シオンという架空人物を関わらせることで幕末の史実の隙間に思いがけない「if」を散りばめた物語。歴史の分かれ道で別の道筋をたどりはしても、最終的には開国・新政府への移行という史実に着地するというのは、SFとしては物足りないかもしれないが、説得力がある展開ともいえる。
異人ながら日本の美点をこよなく愛し、それが踏みにじられることがないように深慮遠謀をめぐらし尽力するシオンがたのもしく、日本人以上の日本人にみえる。そして、現代の日本人の多くも長い鎖国で外国恐怖症だった幕末の日本人からたいして進歩がないのではないかと思えてならない。シオンが今の日本社会をみたらその変わらなさにおどろくだろうな。
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幕末もしもワールド、と言うべきでしょうか。でも、もしかしたら本当にそうだったかも、と思わせる何かがあるのです。
フランス人青年、アナトール・シオンがゴールドラッシュに沸くカリフォルニアでジョン万次郎に出会うところから、物語は始まります。日本が大好きなシオンはオランダ人として日本へやってきて、日本のために働きます。アメリカと結んだ条約が不平等きわまりないと修正をせまったり、勝海舟に幕府への意見書を出させたりと大活躍。すべて日本を愛すればこそです。
こんな風に日本を愛する外国人が大勢いたのかもしれません。彼らのおかげで日本は幕末の激動期を乗り切ることができた、と考えるのは行きすぎでしょうか。日本はシオンのようなファンを、世界でもっと増やさなくてはいけないと思いました。
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オリジナルの『幕末裏返史』というタイトルのほうが断然清水さんらしくていいのに、なぜこんな改題を???……と訝ったけれど、読んで納得。万人にわかるようにフィクションですよ、と銘打っておかないと、清水さんのことをよく知らずに読み始めた歴史ファンが大真面目に怒っちゃうかも。それくらい、明らかな大嘘以外の部分の歴史的ディテールがまことしやかに描き込まれている。
久しぶりに清水さんらしいエンターテイメントを読めて嬉しかったけれど、やはり昔の勢いが失われつつあるのが残念。
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清水さんのファンをやっているとよくあるのだけれど。ハードカバーで刊行された時と、それが文庫化された時で(内容は一緒で)書名が変わるトラップ… ええ、今回も気づかずにまた入手して読んでしまいましたw
まぁ、清水さん大好きなのでいいのだけれど。というわけで本書は「幕末裏返史」の文庫化に際して書名が変わった長編小説です。2章あたりまで読んで気づきました。
清水節炸裂ですな。