紙の本
つらいストーリーでも一気読み
2019/07/08 13:59
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投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
親に恵まれずに育った、藤太、秋雄、いづみ。
過酷な環境でも3人でなぐさめあって、かけがえのない3人となっていった。が、お互いを思いやる結果が、不幸になってしまう。
読むのがつらくなっていくが、反面、どんどん引き込まれていった。ほづみと藤太の、少しでも明るいシーンがあると、ほっとする。
「雪の鉄樹」同様、一気読み。
紙の本
ストーリー展開よりも描き方に読ませるものがある。
2015/08/22 10:01
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作者の他の作品でもよくそうであるように、とてもどろどろした人間心理、男女関係が描かれている。主人公の男とその親友はある幼馴染の女性に非常に入れ込んでいて、そこから悲劇が起きる。その執着の度合いは、読者の目から見るとそんなに彼女を神聖視しなくてもいいのでは…と言いたくなるほどだ。ただ、描き方に嘘くささはなく、登場人物の視点や言葉で本物の強い感情が伝わってくる。そこのところがうまい。
正直、あまりのどろどろ感と暗い雰囲気は作品として好きにはなれないのだが、引きずられるような迫力というか、筆力があるのは認められる。
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内容(「BOOK」データベースより)
大阪の港町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生・秋雄が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨な記憶があった。少女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい「真実」が明らかにされていく―。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く、感動の群像劇。
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雪の鉄樹に続き、遠田作品2作目。
前作に負けず劣らず衝撃的な作品。
主人公の不幸な生い立ちは前作同様、読んでいて本当に胸が痛くなる。
作中に出てくる新世界よりの『家路』がひたすら頭の中で流れて、より切なさが増す。
小説の中の世界だと言えど、藤太とほづみの幸せを願わずにはいられなかった。
他の方のレビューにも書かれていましたが、東野圭吾の白夜行、天童荒太の永遠の仔を彷彿とさせられました。
ちょっと時間を置いてから、他の作品も読んでみようと思う。
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図書館で。
最初の方はどうする?どうなる?という感じで引き込まれて読んだのですが、彼らの中学時代のエピソードで大分テンションが下がり、最後の大捕り物でこんなアクション必要かなぁなんて思いながら読み終えました。それにしてもいづみさんすごいな。登場する男性のほぼ全員に好かれてるってスゴイ。(本人はあまりうれしくないだろうけど)
親は子供を選べないというけれども、子供も親を選べない。しかも成年になるまでは親の庇護から離れられないのだから、劣悪な状況に置かれた児童は本当に悲惨だなぁと思います。というわけで彼らが傷を嘗め合うように友情を築いた辺りは面白かったのですが…
個人的にいづみさんはちょっと色々背負いすぎたのではないかと。もう少し放り投げても良かったんじゃないですかねぇ。もしくは好きな男を守っているという状況に少なからず酔っていたのか?ムズカシイ。
そして初恋の男ってアレでしょう?過去の彼はかっこよかったけど今もそのままとは限らないしなぁ…。そんなにみんな中学時代の恋が忘れられないものかしら?特に弁護士の彼のいづみさんに対する行動はちょっと意外。
まぁ彼らは共犯者という括りもあり、一種異様な仲間意識が芽生えてたのもわかりますが、坪内さんはさらにナゾな人だなぁ。心底惚れていた?ホントかなぁ…
というわけで最後の切った張ったまでするかぁ?と思いながら読み終えました。
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新作『冬雷』のインタビューで遠田潤子はこう答えている
-成功した人間よりも、間違って失敗した人間を描いていきたいです。たとえ惨めで愚かな人生だとしても、否定せずに丁寧にすくい上げて描きたい。安易な救済は失礼だと思えるくらいに真摯に向かい合って、なおかつ面白い物語を書きたいと思います。
著者の書く作品には『正しい人』はでてこない。
負け続け、地べたを這いつくばって下を向いている人しか出てこない。
その人に前向けよ、顔あげろよというのは容易ではないし、
果たしてそれは彼らのためになるのだろうか、お節介ではないのだろうか。
蝶になることは簡単だ。
ただ羽ばたき方は誰も教えてくれない。
(抽象的な推薦文になってしまったが、彼女の作品はストーリーを追うことにあまり意味がない気がしてしまって、このような形がいいのではないかと)
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大阪の港町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生・秋雄が少女ほづみを連れてきた。奇妙な共同生活の中で次第に心を通わせる二人だったが、藤太には、ほづみの母親・いづみに関する二十五年前の陰惨な記憶があった。少女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい「真実」が明らかにされていく―。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く、感動の群像劇。
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ここのところ、本を手にとってみてもあまり盛り上がらず挫折していたが、
久々にヒットだった。
遠田先生は好みの作風だが、これはなかなか良かった(*^-^*)
雪の鉄樹ほどではないが、何も分からない状況から物語が始まり、
次第に全貌が明らかになってくる手法は、そうだと分かっていても期待感が増してくる。
居酒屋「まつ」を経営する藤太の元へ、中学時代の同級生 秋雄 が少女 ほずみ を連れてくるところから物語が始まっていく。
秋雄とは誰なのか?何者なのか?ほずみとはどういう子供なのか?
全く分からないところから物語は少しずつ進んでいく。
過去の回想、現代、次第に解き明かされていく事実。
絶望の中でも、希望を見出していく少年。
痛い描写が苦手な私には、かなり厳しいところもあったが、全体通して飽きることなく読み進められたので★★★★(*^-^*)
暫く読書スランプだったが、また読みだしてみようかという気にさせてくれた。
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何を楽しみで生きてるのか、こんな小汚い居酒屋をつまらなそうにやってるのか?始めの印象が決して良くはなく掴み所のない藤太。
秋雄の預けていったみづほによって少しずつ前を上を向いていくところで、子ども時代に話が変わる。
この救いようのないストーリーの中で、この少女と心通わせていく段階や、みづほとの小料理屋を夢見て経営の勉強をするあたり、ほんの少しだけ光が射すところだ。
読んでいる間かなり辛い。こんな親でなかったら彼らはどう生きられたのだろうか、負の連鎖も起こらなかっただろうか?そして互いを想うが故の悲劇。
辛いが読むのをやめることが出来ない、作者のもの凄い筆力。
タイトルの、アンチェルの新世界と飛び立てなかった蝶。
それが全体をとても上手くまとめ、そして象徴としていると思う。
「雪の鉄樹」同様、読了後もずっしり重い何かが心にのしかかる。
「月桃夜」とまだ三冊目だが、一度軽めのものを挟まないと次の作品にいけないかも。
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中学校の同級生、藤太、秋雄、いずみ。それぞれの家庭にある絶望が3人を結びつけて、将来の希望を探していこうとする。作者はこの小説を、一度人生を捨てた男の再生の物語だとしたのこと。暗い重苦しい話は衝撃の結末までどんよりとして晴れないまま、最後の展開は派手だが人生の再生はできたと言えるのか。
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誤って前に読んだ本を買ってしまった。二度目だが終盤のところは覚えていなかった。家庭に恵まれない男の子二人と女の子一人の話であるが、話の終わり方はもう少し工夫がほしかった。
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大阪の下町で居酒屋を経営する藤太の元へ、中学の同級生が連れてきた10歳の少女。彼女の来訪をきっかけに、過去と現在の哀しい真実が明らかになる。絶望と希望の間で懸命に生きる人間を描く群像劇。
遠田潤子作品初読み。あらゆるシーンの台詞や舞台背景がものすごく映像的である。小汚ない居酒屋『せつ』とバレエ教室や弁護士事務所との対比が、そして藤太の居心地の悪さが痛切に伝わってくる。何より藤太が、今さらながらの成長と希望という光を掴んでいく瞬間が美しい。『新世界より』をBGMにすればより一層の感動が得られる。
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彼が触れられたくない過去は何なのか新世界よりにどんな秘密があるのか、気になってグイグイ読んでしまった。飲んだくれでも黙々と働く藤太の姿を客とほづみはちゃんと見てたんだな。
藤太がへたれとかいづみちゃんが可哀想すぎるとか色々思うことはあるけど。事件があってから卒業までいづみと接触しなかったのはなぜかちょっとモヤる。過去のことはもう変えられないし死んだ人は戻ってこないから、身を寄せ合った2人の未来が良いものであるようただ祈りたい。
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序盤、疑似父娘の描写を読んでいる時間が、本作において一番幸せな時間でした。ほづみの存在が藤太とその周囲を明るく変えていく様子は心地よくて、仕事の疲れも癒されるような(笑)感覚すらありました。
それだけに中盤からの暗い過去話は読んでいて本当に辛く、気分もページをめくる手も重くて仕方がありませんでした。
以前読んだ「雪の鉄樹」と同じく、主人公達がロクな大人に恵まれずに辛い思いをする様子は、個人的に一番心が痛くなる話。藤太たちの親はもちろん、デリカシーのない教師なども最低すぎて憤りを禁じ得ないです。
後半、そんな状況でも藤太とほづみが幸せになってくれることを祈って読んでいました。しかし、片羽がしわくちゃのアゲハチョウのエピソードが藤太の人生を暗示しているような気がして、ずっと不安がつきまといます。
案の定、最後はいづみや秋雄のところに行ってしまったのかな、と思わされる描写で終劇。重厚な内容でさすがプロな作家の仕事だと感じ入りながらも、結末やほづみのこの先を思うと歯痒さがタップリ残り、微妙な読了感が残った次第です。
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雪の鉄樹でぶちのめされて、是非他の作品もと入手した本作。いやいやこれも素晴らしい。贖罪をテーマに長編を紡げば、圧倒的辣腕が発揮される作家さんですね。ジャンル分けするとミステリになるのかもしらんけど、そっちの要素はむしろおまけみたいな感じ。行き場のないままに交錯する熱い想いたちが、物凄い高揚感をもたらしてくれます。あまりにも切ないクライマックスにも胸を打たれつつ、深い余韻を残して物語は幕を閉じるのでした。いや〜、良かった。