紙の本
少し希望が持てました
2018/05/07 23:22
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投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読むと、いわゆる「失敗した国」の惨状と不合理に暗然となります。
書名のカラシニコフとは、ロシアの人名、いやそれよりもその人が発明した自動小銃の名前という方が、通りがいいでしょう。
銃が規制されずに流通している社会がいかに荒廃するかがよく分かり、絶望的な気持ちになりますが、この本の最後にはそれを克服した例が紹介され、少し希望が持てました。
紙の本
失敗国家の悪影響を封じ込め、国際社会の秩序を日本の都合に合わせて維持していくために必要なこととは何かを理解せよ
2009/01/23 23:32
21人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はタイトルに反して旧ソ連が生んだ傑作突撃銃カラシニコフについては、ほとんど記述らしい記述がない詐欺みたいな本で、内容からすると「アフリカの失敗国家見て歩き」としたほうが、より相応しいものとなっている。誰かが「不幸せな失敗国家のアフリカ土人の目線でアフリカを見てきたみたいな振りをしながら、実際には莫大な経費をかけての大名旅行でしょ」みたいなことを言っていたが、そう陰口を叩かれても仕方がないような気が私もする。だって、著者が足を踏み入れた場所は、ソマリランド、ソマリア、シエラレオネ、ナイジェリア、南アフリカなどだが大半が熱帯性マラリアが大流行している猖獗を極めた土地ばかりだ。これだけアフリカ大好きで、これだけ失敗国家にこだわって取材を続けたのなら、一度くらいは熱帯性マラリアに罹って、死線を彷徨っていてもおかしくない(熱帯性マラリアに罹患すると36時間以内に治療しないとマラリア原虫がヘモグロビンを破壊しつくして死んでしまう)。マラリア闘病記やデング熱闘病記が一度も出てこないことに私は大いに違和感を感じる。
面白い記述がないでもない。海外の貧乏国には日本製中古車が捨て値で輸出されているが、そういう貧乏国では往々にして日本でつけられたロゴがボディにそのまま残っていたりする。本書でも「くるみ幼稚園」「戸沢村幼児送迎バス」「ジャングル温泉」などのロゴをつけたマイクロバスがソマリランドを走り回っている様子が出てくる。当然、現地の土人に日本語の意味なんか分からない。しかし、それで良いのだという。「日本の中古車は程度が良い。日本語はその証明」なんだそうだ。
いただけないのは著者の松本が「失敗国家への経済援助をやめろ」とあらぬ主張を展開する下りだ。著者曰く「失敗国家に対し日本政府が行うODAは腐敗した現地政府を超え太らせるだけで、問題の解決にはならず、むしろ悪化させるだけ。日本政府のODAはザイールを初めとする失敗国家の指導者の手に渡り、随分むだに使われてきた」などという。もちろん、そういう面はあるだろう。私だって松本がいうように失敗国家の国連加盟をそもそも認めるべきでないといいたくなるときがある(北朝鮮なんか国連から真っ先に除名すべきだ)。しかし、失敗国家を国際社会から排除し、制裁と称してODAを与え続けないでいると、失敗国家が何時の間にかテロリストに乗っ取られてグローバルテロの温床になることはアフガニスタンの経験が教えてくれているではないか。ムダと分かりつつも土人にカネをくれてやるのが我々豊かな先進国の義務でもあることを朝日新聞はそろそろ理解すべきだ。
先日、「ホテル・ルワンダ」という失敗国家ルワンダを描いた映画を見た。ベルギーはでっち上げたアフリカでも最悪の植民地の成れの果てであるルワンダで、フツ族がツチ族の大虐殺を行った模様を描いた作品だが、この大虐殺を鎮静化させるのに一役買ったのが国連のPKFである。日本では「どいた過去」ならぬ土井たか子をはじめとする日本社民党、日本共産党らが垂れ流す妄説と、それを増幅する朝日新聞の根強いキャンペーンのお陰でいまだに自衛隊の海外派遣がままならない。自国の軍隊すら自由に動かせず、安全保障のほぼすべてをアメリカ様(おい、そこのお前、アメリカ様と三回言え)におんぶにだっこしている国に「自主外交」なんてありえないのに、こういうスーダラ一国安全主義者に限って「対米従属からの脱却」「自主外交」を連呼する。こういうアメリカの軍事力タダ乗りを決め込む甘ったれ野郎たちがいる限り、日本は永遠に「アメリカ様、アメリカ様、アメリカ様」と拝み続けねばならないだろう。そろそろこの地球で生き抜くためには軍事力が必要であること、きちんとした軍隊を養い軍事力を磨き軍隊という暴力装置を飼いならす不断の努力が必要であること、そして地球を日本にとって(そして日本と利害を同じうする豊かな先進国にとって)都合のよい状態に保つためには日本も自衛隊を海外に派遣し国際貢献の一翼を担うことが不可欠であることを理解する必要がある。そのためには、武器輸出三原則の撤廃と価格競争力のある防衛産業の育成も必要になってくることだろう。
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080814購入。080819読了。
世界で最も多く使用されている自動小銃「カラシニコフ」。
初心者でも容易に扱え、故障もしにいという特性が、多くの子ども兵を産み出している原因の一つであると著者は言う。もちろん開発者のカラシニコフ氏は、自分の創り出した銃が「悪魔の銃」と呼ばれることを認めたくはない。戦争の真っ最中だった彼にとって、この銃を作ることは、生き延びるための策であった。しかし、アフリカにおける治安の悪さは、かなり銃による影響が大きい。そして、それをなくすことが非常に難しい。銃を回収するためのプログラムについて「銃を回収して、金銭や、教育を受けることができるのはいいが、誰が銃から守ってくれるんだい」という発言が書かれていた。この一文はほんとうに象徴的なものだと思う。そして、そこに僕は「勇気」を見た。腐敗した国家を建て直すには見返りなどいっている場合でなく、命がけで未来と対峙しなければならないのだ。
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冷戦後世界に溢れたカラシニコフを扱った優れたルポルタージュ。アフリカ大陸を中心に、銃と国家を大きなテーマとしている。
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ロシアではとっても有名な「カラシニコフ」氏。
私は全然知らなかった。
自分の祖国を守る為にAKを開発したのに、それが世界に大量に
出回ってて、人を殺しあう最大の武器にまで発展してる。
最初はなんてやつだって思ったけど、
最低なのはやっぱり武器を密輸したりするやつらだな。
銃のある国はやっぱり銃で簡単に倒れるんだな。
ちゃんと国が警察や司法、教育をきちんとしないとね。
国家にも失敗したものもいまだに多くて、
そこの政府に日本がODAをそのまま流してるみたいでそこは
きちんとしないとって思った。
なんだか多くのことを学べた本だったので、2もよもうと思う。
日本ってなんだか好きじゃなかったんだけど、
WW?以降戦争してない数少ない国だし、武器の輸出はしないし、
銃も所持してないし、そういう点では本当に安全で
素敵な国だと実感。
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ドキュメンタリー。
淡々とした文章で突きつけられる現実に読めば読むほど凹む。
が、同時に読めば読むほど引き込まれて、目が離せない。
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朝日新聞に連載されていた時から読みたかった本。間違いなく歴史を作った銃であり、最も多くの人の命を奪った銃なのではなかろうか。この銃を通して人間の、国家の、残虐さと愚かさが浮かび上がってくる。
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出だしから、ちょっとショッキングな内容で読ませる。
カラシニコフ設計者のインタビューもなかなか。技術者としては、気持ちがわからんでも無い。自分なりの理由やモチベーションがあって、作ったものであり、それについての誇りもある。優れた道具であるが、あちこちで不幸を引き起こしてもいることについては、実はやっぱり気になっている。でも、やっぱり自分の作った物に対する愛情があって....この本にはそれほど出てこないけど、自分の中に葛藤はあるんだと思う。
紛争地域でのルポはなかなか興味深い。でも、じゃあODAとかどうやっていけば良いのかという部分への突っ込みは物足りないかな。
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以前読んだ、松本仁一氏の「アフリカ・レポート」が面白かったので、同氏の他作品の中から選んだ。
カラシニコフ(別名AK47)とは1947年ロシア人のカラシニコフ氏が開発した自動小銃の傑作であり、その信頼性や耐久性、安価さから現在に至るまで現役としてアフリカや中南米等で使用されている。
本書はこのカラシニコフという銃を縦糸にして、それが使用されている現代のアフリカ(?)や中南米・アジア(?)の国々、そこに生きている人々の状況がレポートされている。
アフリカ諸国での混迷ぶり、そこに生きる人たちの悲惨さが?では描かれている。強欲で無能な政治家たち、救いようのない貧困、拉致による少年兵へのリクルート、日常的な強奪やレイプ等々、これはもう僕ら日本人の想像を絶する。
一方の?は、指導者に統治能力が欠如してるわけでは決してないにも関わらず、その地理的事情から混迷を深めているコロンビア。国家という概念が根付きにくく、遠く植民地時代にその原因が見られるアフガニスタンやイラク等についてのレポートである。
国家としてまとまることの難しさ、そこに生きる人々の苦難の数々・・・。平和馴れ(ボケ)している僕たちにとっては感じることの多い作品だと思う。
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単純に平和はすばらしいですよね。
命を奪われる心配は基本的にはないですしね。
ただ、世界には命の危険にさらされて生きている人々もいるわけで・・・・
しかし、命をかけて手に入れたいものもそこにはあるわけで・・・
勉強になります♪
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1947年にロシアのミハイル・カラシニコフが開発した自動小銃AK47─通称カラシニコフ─は、半世紀以上を経た現在でも世界中の紛争地帯で主要な武器となっている。本書は朝日新聞のジャーナリストである著者が、世界中の紛争地帯で行った取材に基づき、この銃がどのように作られ、運ばれ、使われているかを追ったルポタージュだ。
Iは主にアフリカ、IIは中南米が舞台となっている。カラシニコフはろくなメンテナンスをしなくても確実に動くという意味で極めて優秀な銃であり、それゆえ武器の管理体制が甘いゲリラや統治機能が崩壊した“失敗国家”で重宝されている。また、子供でも簡単に使えてしまうことが子供兵を生む原因ともなっている。
安直な感想を述べるのが憚られるほど重く悲しい現実がそこにある。
銃を中心に追ったルポではあるが、描かれているのは国家の姿だ。日本で暮らしている我々には想像もできないような、治安が崩壊し秩序も正義もない、もはや国家と呼べない地域があることを本書は伝えている。
カラシニコフがこの銃を作ったのは、祖国ロシアをドイツから守りたかったからだという。その気持ちに偽りはないであろう。ドイツは先に自動小銃を開発しており、旧式銃しか持たないロシア軍は苦しめられていたのだから。
けれど、銃で身を守る者は、銃を恐れながら暮らすことになるのだ。銃のない世界を創ることは、核兵器のない世界を創るより難しいかもしれない。今はほとんど不可能にも思われる。それでも、いつかそんな日が来ることを願わずにいられない。
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なぜか2回買ったような記憶のある本。家には一冊しかないのですが。なぜだろう…?
アフリカの内戦は読めば読むほどどうにかならないのかと思います。国と言う意識があまりに希薄だから利権を一部の特別階級が独占するのでしょうか。結局はそこの生きる人々が自分たちの地域を作っていくしかないのだろうなあ。最後は少し希望が持てる話があり少し救われた気がします。
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「カラシニコフ」とは名機と謳われ、世界中に広まっている自動小銃の名前です。設計を行なった人物の名前を付けられたその銃が生み続ける悲劇を、いくつもの貴重なインタビューを柱にまとめたものです。元は朝日新聞に連載されたコラムです。
第I巻は、著者が専門とするアフリカにおける紛争を中心にまとめています。冒頭には、象徴的な話として11歳のときにゲリラに拉致されて少女兵にされたシエラレオネの19歳の女性へのインタビューから始まります。ここで「カラシニコフ」を使って3人の無抵抗の人を殺したことが語られます。
この他にもアフリカにおける「失敗国家」と貧困と銃の関係が数多く語られます。ANCの活動によりアパルトヘイトの廃止を勝ち取り、アフリカの大きな希望である南アフリカの低迷と治安のひどさも気が滅入る話です。
「失敗国家」を見分ける物差しは、「兵士・警察の給料をきちんと支払えているか」と「教師の給料をきちんと支払えているか」だそうです。多くのサハラ以南のアフリカの政府では、この物差しを満たせずに結果、銃の管理が行き届かず、次々と紛争や治安の悪化といった連鎖がやまない悪循環になっているということです。
第2章の「カラシニコフ」の産みの親であるミハイル・カラシニコフへのインタビューはある意味象徴的です。淡々とした悪意のないこの設計技術士との話は、この本を単純な銃反対というイデオローグな本という印象になることを避けているように思います。
作家のフォーサイスへのインタビューもありますが、こちらはご愛嬌でしょうか。
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『エコノミスト』の記者ロバート・ゲストが書いた『アフリカ 苦悩する大陸』に次のような一節があります。
「コンゴ(民主共和国)滞在中、何が最も恐ろしかったかと言えば、群集の叫び声でもなく、鳴り響く銃声や、ときおり見かける路傍に捨て置かれた死体でもなかった。それはあるとき目にした少年兵の姿だった。十二歳といったところだが、栄養不良の十五歳かもしれない。階段に腰掛け、AK-47自動小銃の銃口にあごを載せていた。... 自分の命にさえこれほど無頓着だとすれば、こっちの命はどうなるのか、と。」
自分は日本にいて、ほとんど関係のない形で毎日を過ごしているわけですが、こういうことが起きているということを知ることは何か意味があるような気がします。
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Ⅰは主にアフリカや中南米の国家でいかにカラシニコフが流出し、市民を兵士に変えているかを描いている。また設計者、ミハエル・カラシニコフへの取材もある。彼がカラシニコフに施したモジュール化と「あそび」の設計は、「使いやすい・壊れない・壊れても直しやすい」と三拍子そろった最高の銃を生み出すことになったわけで、プロダクト・デザインの面からも優れた事例。開発から60年たった今でも基本構造を変えることなく第一線で活躍する製品と言うのも、現代ではそうそう生まれない。
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2010 8/20読了。ACADEMIAで購入。
id:klovのブクログレビューを見て読みたいと思っていた本。
AK47自動小銃、カラシニコフをめぐるルポルタージュ。
Ⅰはシェラレオネの少女兵の話に始まり(そこで描かれている話、伊藤計劃の『The Indifference Engine』の元ネタじゃないか、ってくらい似たエピソードが出てくるのだが、それだけアフリカで一般化した事態ってことなんだろうか・・・?)、開発・設計者であるミハイル・カラシニコフとロシアの製造工場の取材を挟みつつ、主にAKが内戦・犯罪・護身に広く使われているアフリカの国々に関する話がメイン。
収録最終章、ソマリアの中で独立を宣言したソマリランドで銃を抑え込んで治安が回復されている様子が描かれているのは、章立てとして意図したものであることはわかってるけど、どうにもできないわけじゃないんだ、という気にはなった。