紙の本
歴史の考え方がよくわかる
2017/03/18 22:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
序章と終章を除いて、4つの章立てで構成されている。このうち核心となるのは、第2章だと受け取った。歴史の法則性の問題、時代の特性の大切さ、時代区分の意味や背景など、学校の歴史の授業では習ってこなかったことが、筋道を立てて解説される。第4章では、古代から近代までの歴史の流れの要点が、著者独自の視点で整理されている。これから歴史を学ぶ若い人に、是非とも読んでもらいたい1冊だ。
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≪目次≫
序章 歴史を学んだ実感がない?
第1章 歴史のとらえ方
第2章 歴史の法則と時代区分
第3章 日本史を動かした「血筋」
第4章 日本の変貌と三つの武家政権
終章 歴史はどう考えられてきたか
≪内容≫
近世史の泰斗による日本史のつかみ方、の本。あまり期待していなかったのですが、高校生に読ませたい本です(一度通史をやった後に)。
序章と第1章は、歴史用語や日本史そのものについて、教科書と歴史小説などの書き方や実際の歴史との違い、等を指摘。第3,4章は御苦労なことに、「ざっくり日本史」をまとめてくれています。その中で通説と現在の最新の学説を並べてくれています。終章では、「歴史」というものの見方を「歴史学」として考えるときに必要な知識と「自由主義史観」「司馬史観」などの問題点を挙げています。
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この一冊で「日本史の流れ」をわしづかみ! 単なる「知識」を超えた「歴史的思考力」を鍛え上げる全6章。
私たちに欠けているのは、受験などで必要とされた細かな「歴史知識」ではなく、それを活かす「技法」だ。歴史用語の扱い方から歴史学の変遷まで、「歴史的思考力」を磨きあげるための一冊。そもそも「幕府」とは何か? 「天皇」の力の源泉とは? 歴史小説と歴史学との違いとは? 第一線の歴史研究者が、歴史をつかむための入口を最新の研究成果を踏まえて説く。高校生から社会人まで、教養を求めるすべての人へ。(2013年刊)
はじめに
序 章 歴史を学んだ実感がない?
第一章 歴史のとらえ方
第二章 歴史の法則と時代区分
第三章 日本史を動かした「血筋」
第四章 日本の変貌と三つの武家政権
終 章 歴史はどう考えられてきたか
おわりに
本書は日本の古代史から明治維新までを「今の段階における日本史研究の成果をもとに私の視点からの日本史の流れと歴史をつかむ技法を示した」(おわりに)本である。著者は「(現在どの説が一番有力なのかということさえ)少し専門を離れると簡単にはわかりません」と日本通史執筆の難しさを正直に語っている。
本書は、一般読者や現役高校生向けに、大学生が学ぶ「史学概論」といった科目に重なる話も交えて書かれているという。内容の妥当性がどうなのかは、私にはわからないが歴史用語の基礎知識などわかりやすく教えてくれるのが嬉しい。
例えば、「幕府」という用語であるが、中国を起源とする言葉で、一般に幕府と広く呼ぶようになったのは、江戸末期の事だという。しかし、歴史学ではこの言葉を借りて、鎌倉時代以降の武家政権の統治機構を統一して「幕府」と呼んでいるという。
よく歴史マニアの間では「秀吉はなぜ幕府を開かなかったか」とか議論になったりするが、そもそも幕府とはなんぞやという部分がわかっていないと話にならないなあという事を痛感した。
それにしても、昔、授業でならった内容とだいぶ変わってきていることがわかる。聖徳太子がなぜ天皇にならなかったのか、院政がなぜ始まったのか、鎌倉幕府滅亡の原因となった天皇家の皇統の問題など知ることが出来たのは面白かった。
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「歴史学」のおもしろさを感じるのに素晴らしい一冊。大学・大学院で学んだ日本史学を思い出し、あらためて歴史学の魅力を再確認できる。もう一度歴史研究したくなる。単に知識を身に付けるだけの歴史ではない、歴史的思考力を鍛え上げるための思考法がわかりやすく記されている。
前半は歴史学の方法や考え方を、後半は日本通史の中で「歴史のつかみ方」を解説しており、どちらも興味深い。歴史に対するある程度の知識は必要ではあるが、歴史という学問の入門・概説書としておすすめ。
・過去の歴史的時代には「時代の観念」がある。(P52)
・歴史研究で決定的に重要なのは史料批判(P71)
・歴史を知ることは、安易に法則性を見出そうとすることでも、すべてを単なる偶然と考えることでもない(P86)
・現代的視点で過去を断罪するのではなく、当時の人々の視線から歴史的事象を理解しようとする姿勢(P203)
・世の中で起こっていることは、事象そのものは偶然に起こったものかもしれないが、そのすべてには歴史的な背景がある。このことに留意できる歴史的な知識とそれを参照して考えられる思考力、つまり知性が必要。そしてまた、そもそも私たちの考え方自体も、歴史的に形成されてきた所産だということに留意することが必要。そういうことを自覚することが、「歴史的思考力」。(P251)
・歴史的思考力=人生を豊かにする教養(P252)
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歴史というと高校時代に日本史を選択し,受験勉強としての暗記が主体で,体系的にとか流れを掴もうとすることは全くありませんでした。
一方で,ちゃんと歴史を勉強してみたいという欲求はありました。
そんなとき,帯の「この一冊で日本史の流れをわしづかみ!」に魅かれ購入。
対象は,高校生から社会人までで,歴史の学び方,歴史学とは?といったことを読みやすい文調で教えてくれます。
「イイクニつくろう鎌倉幕府」で覚えていた鎌倉幕府の成立年も今は「イイハコ(1185)」になったというニュースがありましたが,これは新たに事実が発見されたわけではなく,数十年も前から学者の間では,幕府の成立時をめぐって6つもの説が存在してたらしいのです。征夷大将軍に任命された1192年を成立時とするか,全国の守護・地頭の任命権等を朝廷に認めさせた1185年をそれとするかで解釈がわかれていて,近年は1185年説が有力になってきただけのことみたいです。
また,歴史を見る上で重要なことは,現代的視点で過去を断罪するのではなく,当時の人々の視線から歴史的事象を理解しようとすることであると作者は言います。
過去の判断を後でとやかく責めても何の進歩もありません。なぜそういう判断に至ったのかを冷静な視点で観察し,その中で次につなげていくということが大事ですね。
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歴史書ではなく「歴史の読み方」の本。教科書に載っている歴史はあくまでもある時点での仮定の話であり、絶対的な事実ではないことをまず認識しなくてはならない。その上でどうしてそのように歴史が動いたのかを深く洞察することが肝要。現代の常識に囚われず、その当時の人物の行動を形づくっていた規範は何だったのか。そこがわかると随分と歴史の見え方は変わってくる。どの国でも、いつの時代も、為政者は自分を正当化するように歴史を書き替える。そのことを意識して文献に当たらることも大切。天皇制の正統も、明治以降に作られたものである可能性は非常に高い。それを非難するのではなく「そういうものだ」と仮定した上で歴史を読み解くと、より客観的な視座が獲得できるだろう。
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歴史の捉え方を提案している本。歴史というと中高の授業を思い出す人が多いだろうが、教科書もある歴史の見方、史観に少なからず依っているので正しい歴史というものは無い(山川の日本史、世界史はマルクス史観依り)。
鎌倉幕府の成立は1192年ではなく1185年とする説もあるし、他にも複数ある。同じ資料からも様々な解釈があって事実は変わらないが意味は変わってくるという感じ。教科書は事実の把握には良いがどう解釈するかということはやらない授業が多いのではないだろうか。
歴史用語の問題、時代劇の間違い、歴史小説、時代小説の説明も面白い。お歯黒とかたしかにドラマしゃできないだろうし。間違いがあると意識してみる分には参考にできるということかな。時代考証はなかなか難しくてすぐにはできなさそう。
日本史の振り返りはさらっと流した。新書の半分で説明しきれるものではないし、知っていることも多い。若干ページ稼ぎな面も否めない。
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歴史を人物を中心に断片としてみるのではなく、「原始」「古代」「中世」「近世」「近代」「現代」という時代区分とともに、大きく俯瞰してみることによって、歴史をさらに奥深く、さらに興味深く理解することができる。
「原始」は、文字による記述が残っていない弥生時代までで、遺跡の発掘などによって当時を推測したものであり、先史時代と言われる。
「古代」は、魏志倭人伝などぶ文字による記録が残されてから平安時代まで。日本という国家が天皇を中心に形成された時代。
「中世」は、鎌倉から戦国時代まで。貴族が担っていた政治を武家が担う
ことになってから、地方の武将が群雄割拠するじだいまで。
「近世」は、安土桃山から江戸時代まで。「中世」同様武家政治ではあるが、それまで土地や農民はそれぞれの大名が所有する形式だったが、天下が統一された織田・豊臣政権以来、日本という概念ができ、大名は土地や人民を将軍から預かっている立場となった。
「近代」は、明治から第二次世界大戦まで。民主主義の考え方が広く採用され、同時に産業の飛躍的な発展もはじまった。」
「現代」は、第二次世界大戦終了後から今まで。
終戦後の占領時期。その後の高度経済成長の時期。そして今。である
このように、人や出来事にフォーカスするのではなく、歴史を一連の流れとして大きく捉えることが大切である。
その後、興味深い時代や、人を深堀していくことが、歴史を楽しむコツと言える。
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息子が期末テストで日本史の勉強をやっているのを
横で見ていて教科書みたいなものを読みたいと思い
購入してよみました。歴史小説と歴史学の立ち位置の違いや
歴史を学問として扱う時の考え方みたいなものが
面白かったと思います。
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歴史を学ぶということは、年号や事蹟を暗記することではない。
もし私が高校の歴史教師だったら、一番最初の授業では史学概論的なことをしていただろう。そう、本書の第一章のような。
歴史を学ぶ人や歴史に興味がある人には、是非、一読をお薦めしたい。
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歴史をどう捉え、とう考えるのか大まかに把握するには参考になった。また、歴史という学問の現状、研究についても触れることができ、そんな世界を知らない自分にとって新鮮だった。
一番、参考になったのは、歴史的思考力というもの。
これは、現代に起こる事象を孤立したものではなく、「歴史的な視野の中で育てていく」ということ。
物事を複眼的に見れるように、人生を豊かにする共用となるように、もっともっと歴史というものに触れていきたいと思うようになった。
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日本史を一望できる入門書。これまでの歴史教科書は細部にこだわるあまり歴史を俯瞰する視点を見失っていたのではないかという反省から、本書では信頼できる日本史の鳥瞰図を提供してくれる。世界システム論やアナール学派についての簡潔な説明もありがたい。ただ、良書ではあるものの、やや中途半端な印象も。
というのも、本書は、史学概論的な前半部(序章〜第2章)と、日本通史を概略した後半部(第3章〜第4章)とに大別できるが、新書版で両方をやろうとするのはやはり無理があるように思える。史学概論に的を絞った好著、小田中直樹『歴史学ってなんだ?』(PHP新書)と比較すると、なんだかもったいないなぁという感じは否めない。
個人的には、日本史を学ぼうとしたときに、「一冊で分かる〜」的なお手軽な本や全何十巻もの重厚な講座本はあっても、その中間的な(例えばマクニール『世界史』やH・G・ウェルズ『世界史概観』のような)適度なボリュームの教養書がないことが不満なので、そういう本があればいいなぁと思う。ちゃんとした歴史家の書いた適度な分量の日本通史の本が『詳説日本史研究』(受験参考書)だけというのはあまりにも寂しすぎるぜ。
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日本史入門書。
日本史という分野は、ある意味、不思議な分野なのです。結構おもしろくて刺激的なのですが、研究者と一般の人との扱う対象が違うのです。大学で教えていた時、そのギャップを感じました。何故、こんなおもしろいことを研究者は取り上げないのか、そういう疑問・質問はよくありました。私は歴史学プロパーではないのですが、そういう疑問をバカにしてはいけない、それを系統立てて説明すべきと思いました。
山川の教科書、司馬遼太郎、網野善彦をだいたい、7・2・1くらいの比重で説明し、歴史家のものの見方との違いを説明しています。網野さんについてもっと詳しい説明が欲しいけど、網野さんも歴史学者だから、個別に説明するには紙数が必要でしょう。
以前日記にも書いたけど、山川の教科書は買う気がおきませんが、ちょっと見直しました。
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TVでベストセラーだとか紹介されていたのでちょっと読んでみたら意外と良著だった。
本作で描かれているのは、歴史の概要というよりは、タイトルの通り「歴史(学)」の捉え方について。歴史の研究とはどのように進められているか、または教科書で学ぶ歴史の立ち位置(一文一文注意して作られていることが判る!)に、フィクションとしての歴史(司馬史観など)についても触れ、あとはそれを捉えるための基礎知識として「☓☓時代」とかいうカテゴライズは一体どういうものなのか?については実際の日本史を追いながら書かれています。逆に言えば、それをさっと説明するだけでページは尽きてしまうわけですw
スポット的にしか覚えていない日本史でしたが、本作を読むことで全体の「流れ」のようなものは掴めたかと思います。ちょっと歴史というものについて混乱してきた時に、手軽に読んだりするといいかもしれません。
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「歴史的事象や事象間の因果関係等について、様々な資料に基づいて調べ、多面的・多角的に考察させて歴史的思考力を培うことを重視する」(高校日本史Bの学習指導要領の解説より)ための1冊。歴史学、とくに日本史学の入門書。前半は史学概論的な内容、後半は日本通史的な内容。終章では、マルクス主義史観、アナール学派、世界システム論、網野史学などの用語についても平易に説明されている。武田万里子さんの研究(豊臣秀吉のアジア地理認識)から「現代的視点で過去を断罪するのではなく、当時の人々の視線から歴史的事象を理解しようとする姿勢が重要」、「歴史小説から史実を学ぶのではなく、作家さんの人間観や人生観を学んでいる。」という一文が印象に残った。