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必読
2003/06/18 14:26
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みゆの父 - この投稿者のレビュー一覧を見る
自慢になるかどうかわからないけど、ぼくは若桑みどりさんのファンなのだ。ぼくはジェンダー論も美術史も詳しくないけど、後者の領域に属する若桑さんの『絵画を読む』も『イメージを読む』も、ともにぶっとびの快著だったのを覚えてる。
そして今回の本は、若桑さんが川村学園女子大学で担当している「ジェンダー文化論」の産物。ディズニー・アニメのなかの様々な差別意識をえぐりだすっていうのはわりとよくある話だと思うけど、この本には研究者としての、教育者としての、そして人間としての若桑さんの情熱が溢れてて、感動させられていしまう(こういう授業を受けられる学生は幸せだなあ)。なんと不覚にも涙が出てしまったのは、ぼくが幼い娘を持つ父親だったからか?
若桑さんは「知識だけが女性を解放する」(p.194)と宣言する。まったくその通り。ただし、知識が解放するのは女性だけじゃなくて男性も、なんだけど。
シアワセって何だっけ何だっけ
2003/07/16 19:31
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:べあとりーちぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の内容はどれもこれもしごくごもっとも。女子学生が若桑みどり教授のもとで啓蒙される以前がどれほどジェンダー的に「隔離された」状態だったのか、付き合いもないし教育現場にいたこともないので想像もつかないが、目覚めた彼女らの感想文を読むだに教育の重要性・素晴らしさを感動とともに実感する。
まさに教育こそ、この居心地の悪い男性偏重社会を変えるカギであろう。願わくは女子学生たちだけでなく男子学生諸君にも、それからついでに諸悪の根源たるオエラガタのおっさん連中にも、そういう教育のチャンスが与えられんことを。その意味では本書は間違いなく、万人に向けての必読の書である。
だが、読後にうっすらと感じる不満感のようなものは何だろう。
女性が、男性の求める「女らしさ」の呪縛から逃れて自己実現をすること、それがシアワセを自分自身の手でつかむ道なんだよ、という意見には賛成である。ただしどうも、その自己実現が「社会で仕事をすること」にいささか偏りすぎているように思うのだ。
使い古された言い回しだろうが、主婦&母親業だってちゃんとやろうと思ったら大変ではないだろうか。栄養学、インテリアコーディネートの素養、児童および青年心理学、近隣や親戚とのお付き合いのためにはコミュニケート技術、疲れた夫を支えるためのカウンセリング能力、時には老人介護のノウハウと知識。全般的な家庭マネージメントが自己実現の手段であっても全然悪くない。少なくとも、筆者にはこんなすごいことは能力的にできない。
家庭マネージメント業の社会的評価が一段低い理由はただひとつ、それが給料を支払われないからである。しかしそれは本書でさんざんに言われている、男性偏重資本主義社会での価値観のもとで、だけに過ぎないのではないか。何でもカネで計るのは寂しくないか。タダより高いものはない、って言うし。
本書のテーマは「ジェンダーから自由になって、ごく普通の女性が自分の手で人生を幸せに生きられる社会を」ということだ。どんな人生が幸せかを選ぶのは、その本人であるべきだ。他の人間たちがどこで何をしていようとも、自分の志向と適性で生業を選んでいいはずだ。
真にジェンダーフリーで待遇格差のない社会ならば、男性だって家庭マネージメント業を選択する自由があるだろう。現状ではなかなかそういう選択を思いつくことさえできない男性の意識を変えれば、男性の自己実現の手段も幅が広がるのではないか。「みんな違って、みんないい」という社会の実現を願ってやまない。
そういう視点を、もうちょっと強調してくれていたら満点だったと思う。
そういえばディズニー映画も最近は「シュレック」のお姫様のように、いわゆるプリンセスっぽくないキャラクターも増えているようだ。そのあたりの抜かりなさは、まあさすがアメリカというべきだろうか。変に極端に走ることなく、ちゃんと定着すると良いのだが。
構成も論旨も単純すぎる。あっ、著者も「中身は非常に単純な構成」と書いてる……
2004/01/01 08:55
9人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
入門書こそ、著者の工夫と力量が試されるんですわ。それを忘れてはあきまへん。
「アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門」という副題に惹かれて読んでみたけど、取り上げたアニメは、ディズニーの「白雪姫」と「シンデレラ」と「眠り姫」の3作品のみ。少なすぎ。
じゃあ、一つずつ丁寧に分析されているかというと、そうでもなく、映画を鑑賞した学生の感想文を延々と読まされる。中には鋭いものもあるけど、似通ったものを並べすぎ。ジェンダーフリーの立場で書かれている本なのに、何で女性の声ばかりなのか。女子大でのジェンダー学講義を元にしているからなのだが、できれば垣根を越えて男子学生の感想も載せてほしかったですね。
男女の意識調査等の、「客観的」な統計資料なんかも、もっと盛り込めば良かった。
えっと内容面ですが、私は男女共同参画社会の実現には賛成なんですね。でも、その社会を実現するために、この著者は、利用できるものは何でも利用しようと考えているのかなと、各所で疑問を感じるのですね。例えば他の評者さんも引用した箇所、あっしも気になりましたぜ。
《モノを生産する男性が、生命を生産する女性を統括し、支配している。しかし現代では、その必然の結果として先進国では軒並み人口が減ってしまった。生命を産む性を尊重しない社会で生命が増えるわけがない。このシステムが金属疲労に陥った証拠である。》
人口減にまったく関係ないとは言わないが、「必然の結果」とまでは断言できないっしょ。「女性解放」が少しずつ進み、女性の経済力と自立性、自己実現の可能性等が高まってきて、子どもを産み育てさせようという家制度的強制感が減退したため、人口減に繋がっている側面も強いのではないかと思うのですが。
《その結果として再生産(子どもの出生)が減退し、人口も減り、女性は希望を失って自立性を放棄し、そのような女性に育てられる子どもたちの心は萎縮し、人心は荒廃し、ひとびとは未来に幸福な発展を展望することができなくなってしまった。》
はぁ〜、今の日本はそんなに人心が荒廃してますか。昔は、「幸福な発展」を展望できてたのですね? ジェンダーフリーじゃなかったのにもかかわらず。
《男女が働いて家庭の収入が増えれば国家の税収も増える。税収が増えれば福祉も充実し、未来に不安がないから安心して子どもを産む。子供が増えれば消費は拡大し、雇用も拡大する。まわりまわって、結局、自分を幸福だと思う女性の活力が社会を未来へとつなぐのである。》
「美しい」言葉だけど、ほとんど「風が吹けば桶屋が儲かる」式の論法。「税収が増えれば福祉も充実」とか、短絡的すぎる。そもそも「地球の限界」が明らかになってきたのに、子どもを増やして消費の拡大ですか? 「先進国」とやらはそういう手本を、「第三世界」に対して見せろとおっしゃる?
《フランス革命もこの革命にくらべれば小ぶりである。》
なんか、舞い上がってませんか?
《おわりに----お姫様、自分で目覚めなさい》
この見出しの結びの中で、著者は。
《そして私達のような教育者は、若い女性たちを目覚めさせ、自分で自分の状況を改善していく意識を与え、その力を与えるために全力を尽くしている。》
「自分で目覚めなさい」と言っておきながら、横から「目覚めさせ」ようとするのですね。目覚めさせる「主体」が、「王子のキス」から「進歩的なインテリ」に変わっただけなのでは?
はからずも、教育とは「柔らかい洗脳」であることを吐露しちゃってるんですね。教育を一概に否定はしないけど、「白雪姫」がイデオロギーなら、ジェンダーフリーだって一つのイデオロギーにすぎないんですね。そのことに、著者は無自覚な気がしますね。
結論。男女の「共生・平等」は、著者のこの辺の理由とは関係なく、進めればよろし。
「常体・敬体フリー」で、したためてみやした(失礼!)。
文学的なアプローチをするジェンダー論の入門書
2021/03/31 20:19
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:3π - この投稿者のレビュー一覧を見る
白雪姫、シンデレラ、眠り姫を題材に、プリンセスがどのように物語られてきたかを論じる。大雑把に言えば主体性のない存在として描かれてきたということを言っていて、文学的アプローチをするジェンダー論としてはとても明快でわかりやすい。
ただ裏を返せば単純すぎるというか、シスヘテ以外のセクシュアリティが出てこなかったりセックスの上にジェンダーが構築されるとしていたり結婚を性と経済の交換から離すのはいいとしても愛を称揚していたりと肌理の荒い本だったとは思う。まあ古いし入門書だしそんなもんか。
あとディズニープリンセスの表象が変化しているというのは周知の事実ですけれども03年一刷発行のこの本にFrozenの分析などは入っていません。
ジェンダー学を教えている人はこれを読んで怒らないのだろうか
2003/07/17 22:16
10人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:田中 - この投稿者のレビュー一覧を見る
思わず書評を書きたくなってしまうほどの惨憺たる内容である。
名著『紅一点論』を彷彿とさせる題名に引かれ、手に取ったが、
読了するのもつらいほどであった。
たとえば、こうである。
「(前略)モノを生産する男性が、生命を生産する女性を統括し、支配している。しかし現代では、その必然の結果として先進国では軒並み人口が減ってしまった。生命を産む性を尊重しない社会で生命が増えるわけがない。このシステムが金属疲労に陥った証拠である」。
今もって世界の人口は増加傾向にあり、それは有史以来もっとも急激といっても過言ではない。しかるに、「必然の結果として先進国では人口が減ってしまった」。では、(人口増加の一途を辿る)先進国以外の国は、ジェンダーから逃れえているのだろうか。ジェンダー学などというものは先進国でしか成立していない学問ではないのか?
だとすれば、むしろ人口抑制はジェンダーから解放されることの結果ではないのか?(無論、ジェンダーと人口を無造作に結びつける議論がおかしいのであって、このことを主張しているわけではない。)
もうひとつ例示しよう。著者は『白雪姫コンプレックス』を書いた心理学者のエリッサ・メラルドについてこう述べる。
「こういう本には書いたひとの誠実さ、正直さがいちばん訴える力がある。最初から冷静で賢明な女性には、普通の、そして大多数の女性のことを語ることはできない。」
なんという差別意識(!)。「大多数の女性」は「冷静で賢明」ではないと主張しているも同然ではないか(!)。
著者は「ジェンダー」憎しの感情が強いのか、あまりにも迂闊で勇み足が過ぎる。誰よりも「ジェンダー」に囚われてしまっているようだ。ほかでは良著があるのかもしれないが、少なくともジェンダーについて語るべきではないように思う。この著書にも紹介されている数多くのジェンダー学を研究している人はこのような状況に対してどう思うのだろうか。
それでも、対「ジェンダー」戦としては戦略的に構わないのだ、とでもいうのだろうか。だとしたら、(「ジェンダー」に関して問題意識を持つものとして)あまりに不毛で悲しい気がする。