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現行の金融制度を市場活動に沿って網羅的に解説
2017/08/08 22:22
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投稿者:セーヌ右岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
金融に係わる機能、構造、メカニズム、システム等あらゆる事象について、理論や用語の解説に終わるのではなく、金融市場や経済活動のなかで行われている実態の金融取引、銀行業や企業活動、ガバナンス問題等の議論に沿って具体的に説明してくれる。その上で、金融危機(リーマン・ショック)を踏まえ、複雑に分解かつ高度化された金融商品や金融機能の仕組みや問題点を取り上げ、システム安定化のための監督規制のあり方等について考察している。現時点の金融制度全般を把握する上で読んでおきたい本である。
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わかりやすい
2016/11/06 15:00
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投稿者:栞ちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
文章はとてもわかりやすく書かれています。
内容は、実務などで役立つというよりは、概略的な説明がほとんどです。
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金融制度の解説
2019/05/06 13:47
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投稿者:ただの人間 - この投稿者のレビュー一覧を見る
特に(中央)銀行や政府の役割、政府規制を中心に金融制度を解説する。政府や銀行が経済活動(信用形成)でどのような役割を果たし、どのような理由でどのような規制が必要になるかが必要になるのかを論じる。サブプライムローンに端を発する金融危機を踏まえての知見も加えて、規制のあり方の見直しにも言及する。ただ、数式が多く理解しきれていない部分もある
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金融の意義から説き起こし、金融派生商品や金融規制の意味まで、原理原則に立ち返って説明しています。
『金融入門』というタイトルですが、決して読者を低く見た単純な初心者向けではなく、その元となるロジックから説明した内容で、勉強になりました。難解というわけではなく、その逆で平易とは言わないまでも読者にできるだけ正確な理解をしてもらおうとして書かれているのがよく分かる記述でした。
リーマンショックなど信用収縮だ何だと、何かが起きているのは分かるんだけ、いまいち腑に落ちないなと感じていたむきなどにはたぶんお勧め
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入門書だが、専門用語が連発されるのでさらさら読むのは難しい。ただ、専門用語も説明派されるので理解はできる。
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「金融って面白い」
って思える本。
あーなるほど、って部分がいっぱいあった。銀行の仕事って、お金を貸してるだけじゃないんだ。ってか、厳密に言うと、お金を貸し借りすることで情報とか市場を統制してるという、金融システムの大切さを垣間見れた。たぶん、理解できてないとこもあるから【再読】したいね。
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「金融取引とは」と言った初歩の初歩から、今回の金融危機を踏まえて今後の金融監督の行方までわりと分かりやすくに解説されている。
ほんの一部、意味不明な数式がでてきて数学音痴を辟易させるが、日本語で書かれている部分をよく読めば、「要するにこういうことね」と理解できる(と思う)。
デリバティブ、クレジット・デフォルト・スワップ・・・よく目にするがなんだかよく分からない専門用語が理解できてよかった。
時代の変化に対応した制度・規制がないと、危機が起きるんだな。うん。
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『第1章 金融取引』
・金融取引とは,現在のお金と「将来時点でお金を提供するという約束」を交換する取引である.
・もっとも典型的な約束の仕方.
①負債(デット)契約:10年物の国債など.
②持分(エクイティ)契約:株式など.
・金融取引に資金の移転という効果がなければ,誰も赤字主体にも黒字主体にもなれないということだ.すなわち,「資金の移転」が行える意義は,所得を得る時間的なパターンと支出を行う時間的なパターンを自由に決められるということにある.
・また,「リスクの移転」を行うことが,金融取引のもう一つの大きな効果である.
・資金調達者と資金提供者の間の選好ギャップは,両者の間に金融機関が介在することによって埋められるケースが多い.すなわち,金融機関が,黒字主体からその選好にかなうような条件で資金を調達し,,赤字主体の選好にかなうような条件で提供することができる.「間接金融」.
『第2章 銀行システム』
・金融商品は,「決済手段」と「非決済手段」に用いられる.
・決済機構の仕組み.「顧客と顧客の間の債権・債務関係」を「銀行と銀行の間の債権・債務関係」に置き換え,そのうえで,銀行間の債権・債務関係については個別に決済するのではなく,一定期間集積し,そのネットの値だけを決済するというものである.
・システミック・リスク:ある主体が支払い不能に陥った場合に,それが他の主体の支払い不能を誘発するという連鎖反応が生じ,システム全体の混乱がもたらされるリスク.
・もっとも根本的なシステミック・リスク対策は,銀行間で債権・債務関係がつみあがることそのものを回避することである.このためには,決済機構の原理そのものを変更し,「即時グロス決済方式」を導入することが考えられる.ただし,金融機関にとっての資金繰りの負担は重くなる.
・銀行とそれ以外の主体の決定的な相違点.銀行以外の主体は,その発行する金融商品が決済手段としては直接に使えないために,まず資金を確保していなければ資金の提供を行うことはできない.ところが,銀行はただ金融商品を発行し,それを提供すれば,貸付を行えるのである.すなわち,銀行は手持ちの現金準備の何倍もの貸出を行うことができる.これが,信用創造と呼ばれる現象にほかならない.
・ハイパワード・マネー:民間銀行全体の貸出のうち現金流出した部分の合計(=1-α=民間非銀行部門の保有する現金残高)+預金としてとどまった部分に対する準備(=αβ=民間銀行の中央銀行預け金残高)
『第3章 金融政策と中央銀行』
・金融政策の目標とは,抽象的にいえば,その国のマクロ経済のパフォーマンスを改善することである.
・新たな合意のエッセンス:金融政策の役割は振れを小さくすることにあり,水準の向上・改善は構造改革等の取り組みによるという理解をすべきである.
・金融政策の目標を達成するために,中央銀行は,自らのコントロールの及ぶ特定の経済変数を動かすことになる.現行の金融調節方式は,短気金融市場金利に関する誘導目標値を決め,その値の下で短期金融市場の需給が均衡するようにハイパワード・マネーを供給するというやり方である.
・まとめると,中央銀行による短期金融市場金利の誘導→民間銀行による将来金利動向に関する予想形成→貸出行動の決定→貨幣供給量の決定というのが,金融調節と貨幣供給をめぐる因果関係である.
『第4章 資産価値とそのバブル』
・しかし,バブルは起きる.どうして確たる根拠もないままに,将来に対する楽観ないしは強気の期待が抱かれるようになるのかは,狭義の経済学では説明の困難な,社会心理的現象だとしか言いようがない.
・金融政策と言うのは,金融機関を相手にしたオペによって名目利子率を操作し,それを通じて実質利子率に影響を与え,現実の実質利子率と自然利子率との間のギャップを埋めようとするのが,伝統的な意味での金融政策である.
・非伝統的な金融政策.①量的緩和.政策金利をゼロまで下げた後.操作目標を金利からハイパワード・マネーに切り替え,後者の量的増大を目指すものである.ただし,ハイパワード・マネーのうち現金の部分については,中央銀行としては家計や企業の需要に応じて受動的供給するしかないので,準備預金の部分をターゲットとすることになる.(FRBは,効果がないとしている.)②リスク資産の購入.
『第5章 日本の企業統治』
『第6章 金融機能の分解と高度化』
・銀行の定義は,「為替業務を行う」および/または「短気の預金を受け入れ,長期の貸出を行う企業」である.
・銀行の利益の源泉は,本来的には,金融仲介の過程で銀行が果たしている機能や決済機構の運営を通じて提供しているサービスに求められる.しかし,銀行が金融サービス豪として環境変化に適合していくことは,必ずしも順調に進展しなかった.こうした中で,銀行以外のタイプの金融サービス企業が存在感を増大させていった.
・米国においては,伝統的な銀行を通じる資金移転のチャネルに並んで,第1章で市場型間接金融と読んだ資金移転のチャネルが非常に発達することになった.たとえば,米国の住宅ローン市場において貸し手の主力は,銀行から,モーゲージ・バンクと呼ばれる住宅金融専門の貸付会社に移っている.モーゲージ・バンクの貸し付けた住宅ローンは証券化され,資本市場で売却することで資金調達が行われる.
・金融仲介機能は,情報生産機能と資産変換機能の二つからなるといえる.
・デリバティブ:伝統的な金融商品に含まれている資金移転手段とリスク移転手段という二つの要素のうち,後者の要素のみを独立して取り出したものであるととらえることができる.還元すると,デリバティブを取引しても,取引者の資金ポジションに変化が生じることはないが,その負担するリスクの程度や内訳は大きく変化することになる.
・第一の観点:デリバティブのもたらす損益が対称的かどうか.①先物取引:取引価格と取引数量は現在時点で決めてしまうが,実際に商品が受け渡されるのは将来時点であるような取引である.②オプション取引:「権利」の売買.コール・オプションは,将来時点で一定の価格で購入する権利の売買を指す.プット・オプションは売却する権利を指す.
・第二の観点:その取引が取引所において行われているか,その外において行われているか.①取引所取引:取引所がセントラル・カウンターパーティとしての役割を果たし,売り手と描いては直接にではなく,取引を媒介にして取引をすることになる.したがって,相手が契約を履行しないリスクがない.②店頭取引:売り手と描いての相対取引.
・金利スワップ,通貨スワップ,クレジット・デフォルト・スワップなどがある.
『第7章 金融規制監督』
・個々の銀行が経営破たんに陥ることを防止するための「事前的対策」と個別的な破綻がシステム危機に拡大する自体を回避するための「事後的措置」との二段構えの構造をとることを確認した.
・事前的対策:①預金金利をはじめとした各種の金利に対する上限規制や各種手数料に関する規制,②特定の業務分野や地域への参入規制,③銀行の資産選択に関わる規制,④自己資本規制…リスク資産額の8%以上の自己資本の保有を義務付けるもの.
・事後的措置:①中央銀行による,その銀行に対する貸出.②預金保険制度.(日本では預金保険機構がある.)
----------以下感想----------
図書館で借りて読んだが,読み終わった後に
「買おう」とさえ思った本.
文句なしの星5つ.
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題名と違わずまさに「現代」的な入門書。
特に3章の現時点における金融政策(少なくとも先進国ではコンセンサスが形成されているもの)の解説は、理論・実務(試行錯誤)双方の記述バランスが抜群で、現在採用されている金融政策がどのような理論的・経験的背景に基づいているのかの理解が一気に進む。1章~3章だけを取り出して、金融「政策」をテーマにしても面白いんじゃなかろうか。
また、5章「日本の企業統治」は、通常「コーポレート・ファイナンス」として無味無臭に説明されることが多い企業の資金調達行動を、ガバナンスとインセンティブの観点からコンパクトに、しかし現実に即して理解てきる。会社法などの法制と関連付けて更に学びたい分野。
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p57まで読んだ。
邦銀は今回の金融危機でほとんど無傷だった。それは彼らがリスクの高い証券化商品をほとんど手がけていなかったからだ。このような相対取引は、たしかにリスクは小さいが、扱えるリスクの幅も小さい。このため邦銀は、世界の金融市場ではマイナープレイヤーでしかない。
★本書は、金融の昨日をコンパクトに解説した入門書である。金融はリスクを社会全体に分散して取引することによって、新しいビジネスを可能にする。著者もいうように、自動車は行動範囲を広げる一方、交通事故も起こすが、だからといって自動車を禁止しろという人はいないだろう。同様に、金融もリスクを扱うだけに危険な側面があるが、適切に規制して使いこなせば企業活動の幅を広げ、経済を活性化する。
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制度はこうなってます、という事実の列挙だけでなく、その制度の経緯から経済学・ファイナンス論的な背景までしっかり解説されています。200ページ足らずの新書でここまで書けるというのは驚き。
金融論に触れたことのない人にも、昔学んだけれど最新の情報にアップデートしたい人にも、とりあえず最初の一歩として最適でしょう。
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7/5(月):
現在重要とされているテーマに対する考え方とその背景について、
全体感を持って学習することができます。
様々なテーマに対して、内容は分っていないもののそのような話題があることは知っている、というレベルの方が全体を流れの中で抑えるのにとても適しているように思います。
逆にまったくの初学だと少し辛いように感じました。
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入門書?なのかな。金融規制の辺りが難しくて飛ばしてしまった。
最後に池尾さんのお勧め著書が書かれてて参考になりそう。
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[ 内容 ]
金融のビジネス・モデルに大きな変革が求められている今、第一人者が金融を原点から考え直す。
情報とは何か、信用はいかに創り出されるのかといった、金融の本質に鋭く切り込み、平明かつ簡潔に解説した定評あるロングセラー『現代の金融入門』を、金融危機の経験を総括すべく全面改訂。
アメリカの金融におけるリスク取引の功罪を明らかにし、金融システムの安定に必要な規制・監督の仕組みを考察。
あわせて、資産価格バブルと非伝統的な金融政策の効果についても検討する。
[ 目次 ]
第1章 金融取引
第2章 銀行システム
第3章 金融政策と中央銀行
第4章 資産価格とそのバブル
第5章 日本の企業統治
第6章 金融機能の分解と高度化
第7章 金融規制監督
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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金融の仕組みを改めて解説した良書。金融市場の話から、銀行、規制、デリバティブに至るまで、トピックスを理解するのに役立つ。特に、銀行の役割については、今となっては失われた銀行によるガバナンスについて分かりやすく解説されていた。市場が伸びている時には貸し出しを多くし、企業の決定および処分に最も大きな影響を及ぼす。一方で、不況期にバランスシートを改善すべく借入を減らしてゆくフェーズにおいては、逆に借入が無いためにガバナンスがきかない。株式持ち合いによる力と併せて、昔は銀行がいかに大きな力を持っていたかが分かる。総資産トップテンをすべて日本の銀行が席巻した時代に生きたヒトたちは何を思っていたのだろうか。
市場経済において、その質の高さを求めてゆくべきだという論点であるが、成熟した市場に向けて、やはり大切なのは我々がしっかり学習して、自分で考えて、理解することだ。