紙の本
セクハラ根絶!いま読むべき書
2018/08/16 10:26
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投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
民放テレビ局の女性記者による福田淳一前財務事務次官のセクハラ被害告発をきっかけに、日本でも#MeeToo運動が広がりを見せている。
麻生財務大臣は、当初「被害者名乗り出ろ」と発言し、被害局がすぐさま事実を公表すると、やっと調査をし、福田氏のセクハラ行為を認定、懲戒処分相当として退職金を減額する一方、調査の打ち切りを発表しました。しかし福田氏はセクハラを否定し謝罪もしていない。麻生大臣は事もあろうに「はめられて訴えられたのではないか、との意見もある」と被害者をおとしめる発言をおこない、安倍内閣は「セクハラ罪はない」という閣議決定を行った。政権をあげてセクシャルハラスメントにたいする意識の欠如、人権蹂躙を改める姿勢を持ち得ていないことが明らかとなった。
その証拠に、5月、自民党の加藤寛治衆院議員が、「結婚披露宴に出席した際は『必ず3人以上の子どもを産み育てていただきたい』と呼びかけている」と発言、自民党の萩生田光一幹事長代行が0~2歳の乳幼児の子育てに関して、「『男も育児だ』とか言っていても子どもにとっては迷惑な話。ママがいいに決まっている」と発言、6月、二階俊博幹事長が都内の講演で「子どもを産まない方が幸せ、と勝手に考えている人がいる」と発言し世論から批判を浴びた。こうなったら、反省も何もない。確信犯だ。最近では、杉田水脈議員が月刊誌にLGBTの人たちに対して「彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり『生産性』がないのです。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」と主張する論考を掲載。子どもをつくるイコール「生産性」とする価値観は、国のために子どもをつくるという発想であり、「優生思想」にも通じるものだ。また、税金の使途まで言及し、生産性のないものには税金を使わないといわんばかりの主張には子どもを産まない人間だけでなく、高齢者や障碍者差別をも助長するものです。偏見に満ちた税金の使い方を主張することは許されません。こうした主張に自民党の二階俊博幹事長が「人それぞれ政治的立場はもとより、いろんな人生観もあり…」と容認したことは、政権がこうした主張を認めたことの現れだ。
一方、東京医科大学で女性差別の不正入試が明らかとなった。8月7日、内部調査委員会は、都内で記者会見を開き、同大学が「女性医師は結婚、出産、子育てで医師現場を離れるケースが多い」として、女性受験者の合格を抑制する女性差別をしていたことを認定した。こうした女性差別の得点調整は2006年以降の入試で行われており、前理事長の臼井正彦被告は、「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティ(活動性)が下がる」などとのべたと報道され、調査委員会は「女性は長時間勤務できないという意味でいわれていた」と記者会見で説明している。
セクハラ・女性差別この同根の問題を指摘したのが本書だ。出版年限がちょっと前だが、いろいろな問題が噴出する中で、改めて読んでみた。
女性の人権が認められなかった明治民法から説き起こし、戦後の日本の女性たちの差別是正裁判を紹介する。しかし、現状はどうかが示されていく。協議離婚における女性の立場ドメスティックバイオレンスの実態、働く現場での女性差別、売春について、現代の日本の女性が依然明治民法下に有るかのような実態が詳らかにされる。
「産めよ、増やせよ」と戦前、女性を産む道具として扱った思想が現政権に有ることは前述の通りだ。この政権がスローガンとしていた「女性の活躍」はまやかしだ。
ならば、女性が自分らしく生き、働くために、女性自身が立ち上がることが必要だ。そのことを本書を読み痛感させられた。
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直近のDV防止法やストーカー規制法の改正内容が網羅されてあり、著者の信条であるラディカル・フェミニズムの立場を割り引いて読めば、とても参考になる本である。
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全体的にポジティブな見方。
素朴に女性が被差別者であることを再認識してしまう。
女性は権利をどれだけ獲得しても、弱者であることに変わりないのだろう。性的男性性もまた変えることは難しいのかも…。
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ちょっとむずかしいテーマで
ちょっと読むのにほねのおれる新書でしたが、
あらためて日本の女性の立場をかんがえました。
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角田由紀子『性と法律』岩波新書、読了。法律における女性差別の是正は筆者らの永年の努力で「1ミリ1ミリ」変わってきたが、問題は山積している。何が「変わったこと、変えたいこと」(副題)なのか。本書はその歴史と最前線を丁寧に概観する。 https://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1312/sin_k744.html
男女平等を明文化した新憲法と新民法の制定から半世紀以上たつが、DV防止法制定やセクハラに対する意識の変化も同じだけの時間を要した。「泣き寝入り」を認めるのは人間の意識のみならず、個々の法律においても女性への「冷たさと蔑視」が潜在していると著者は言う。
「夫婦げんかは犬も喰わない」。しかし暴力は暴力に過ぎない。日本社会はプライベートの事象では暴力と認めなかった。そしてそれを法律がそれとなく後押しする。しかし公的世界であれ私的世界であれ暴力は暴力に過ぎない。虚偽と対峙した著者の言葉は重い。
戦前民法は明らかに女性を低い存在と規定して来たが、その意識は変わっていないし、「恥」の意識はまだまだ告発を隠蔽する。加えて、現下の不況は女性の就業・育児環境はますます悪化している。しかし変わらないはずはない。筆者の筆からは希望が伝わってくる。
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http://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB14318075
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女性の立場が、改善した歴史が浅いことが良くわかる。
司法も、男性目線だった歴史が長い。
各方面への、女性進出が必用不可欠。
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問題意識は完全に正論だが、最終的に男性批判におちついて、わりとそのせいで相手されないんじゃないかと思う
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本書では、性に関わる法律を扱っている。
民法という、我々にとって一番身近な法律から、DV防止法、刑法、売春防止法、風営法など「自分には関係ない」と思っている人が多い法律まで様々なものを取り上げる。
法律、というと小難しくてよくわからないと思う読者も多いかもしれないが、本書はとてもわかりやすい。
コラムとして各法律の条文が挙げられている点や、身近な事件、判例が挙げられている点が良い。
著者自身が弁護士として実務に携わっているし、法科大学院で教え、しかもなんと法律を専門に学んでこなかったというのだから、すばらしい。
さて、わが国では政治に女性が関わることが少なく、なかなか女性側の視点に立った法律が制定されない。
度々国際機関から勧告を受けているのにも関わらず、遅々として(というか全くと言っていいほど)進まない。
今秋、夫婦選択的別姓の裁判の最高裁判決が出る予定だが、果たしてどう出るか。
司法の判断を待ちたい。
とは言っても、仮に違憲である旨の判決が出たとしても、三権分立だからといって、恐らくいまの政権は改正に踏み切ることはしないだろうが。
現政権は女性の活用ということを声高に叫んでいるが、全くもって不十分だ。
本書に書かれているように、養育費の支払いを逃れる方法、性産業従事者が減らない理由、強姦罪の構成要件、その他もろもろの解決に向けて我らの代表は必死になっているのか?
女性優遇、ではない。
ポジティブアクションに向けて彼らは何をしているのか?
一方で女性の側にも様々な考えがあり、その考えが彼女達自身を縛っているとも言える。
その代表的なものが、性暴力や売春だ。
肌の露出が多かったから、性に奔放だったから、被害にあっても仕方ない、という考えがまだあるように思う。
著者はそれを問題のすり替えとし、事実を隠し社会が負うべき責任を放棄していると言い切っている。
本書で書かれている問題は男女双方の問題だ。
社会で生活している以上、不都合が生じ、それをなくすために法律はある。
そして、それはどちらか一方の考え方だけでは「正義」とはなりえない。
時代は変わる。
社会は変わる。
性の問題を通して、「人間が人間であることを喜べる社会」(132頁)の実現を望み、私自身も尽力したい。
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1 結婚、離婚と子ども
2 ドメスティック・バイオレンス
3 女性が働くとき
4 性暴力
5 セクシュアル・ハラスメント
6 売買春と法
著者:角田由紀子(1942-、北九州市、弁護士)
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女性弁護士でもある著者が、性をめぐる法の問題点を指摘する。DV防止法、売春防止法、男女雇用機会均等法など、具体的な法をトピックスとして、そこに潜む課題を浮き彫りにしている。ただ感情的に意見を述べるのではなく、弁護士らしく論理的に展開されることから、男性が読んでも腑に落ちるところが多々あった。
色々な法律を取り上げる中で、著者が最も主張したいのは「男性が作った法律と現代社会とのズレ」であり、その結果「女性たちの声が抑圧されてきた過去と現実」に尽きるだろう。子どもを産んでも働き続けることができないという女性だけの不利益や、性暴力の被害に対して親告罪が適用されるという現実、売春を行う女性の多くは経済的理由によるといった事実など、多くの人が“男女平等”を口にする現代においても、女性に過度な負担を強いる社会環境であることは否めない。それは法整備が追いついておらず、行政としての取組みも遅れているからである。男性も女性も“男女不平等”の認識を持ちながらも直視していないだけであろう。本書でも触れられている、密室で売春が繰り広げられているという暗黙の了解と通ずるところがある。
著者のような女性が声を上げていくことで、少しずつであろうが社会は変容すると思う。しかし、そのような社会の到来はスティグマに晒された多くの女性たちの上に成り立つのだろうと感じた。
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古い本で、あまり目新しい点はなかった。
同じ法律でも弁護士の気分次第で対応が変わるという恐ろしい現実がよくわかった。裁判官の公平性は何としても守らなければならない。
阪神大震災で家の下敷きとなったのは女が多かったが、これは男女差別の結果らしい。ホントかな〜?