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みんなのレビュー15件

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15 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

青春!

2005/07/19 01:58

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Straight No Chaser - この投稿者のレビュー一覧を見る

「星条旗の聞こえない部屋」「ノベンバー」「仲間」の三篇は、Ben Isaacというアメリカ人少年が60年代後半、学生運動華やかなりし頃の「しんじゅく」で自らの生きる場所(仲間)を見つけるに至るまでを描いた、ひとつづきの(自伝的)青春小説である。
「Isaac」(アイザック)という名前は、信仰心篤い父アブラハムの手によって危うく神の犠牲にされかかったイサク(旧約聖書「創世記」)につながる、“ユダヤ系”の名前だ。
「獲物の中でめずらしい種を発見したという、昂奮した語調で、
『じゃ、あなたはシオニズムについてどう思いますか』と聞いた。
『どうも思っていません』ベンは実際、そんな問題について考えたことはなかった。
『でも、あなたはイスラエルを支持するでしょう』
(中略)
『ぼくはイスラエルの夢を持っていないユダヤ人です』」
 ……つまり、安易な読みはいけない、と。
 横浜のアメリカ総領事館での家族との生活。W大学の日本語コースでの日本人たちとの時間。日本人の閉鎖性に諦めにも似た怒りをくすぶらせている父。“外人”である自分を「かざりもの」としてチヤホヤする日本人たち。
夜の領事館に響く「ゴーホーム」という呪術的・惰性的な日本人たちの声を聴きながら、少年は思う。
「しかしアメリカ人は、家を捨ててまたは家から追い払われたからアメリカ人なのだ。アメリカ人が、さらにそのアメリカにいたたまれなくなってアジアの港町に寄りすがったとき、『ゴーホーム』は、今まで逃亡してきた道を引返せ、ということだ。……特に、領事館の窓に集まった、アイザックという姓を負っている四人は、『ゴーホーム』と言われても、いったいどこへ行けばいいのか。ブルックリンなのか、上海なのか、それとも幻のエルサレムなのか。」
 そして、少年は、自分は「戦争」からの「亡命者」だと語る。しかし理解されない。
「『戦争はあんたたちがやっているんじゃないの』
その『ぼくたち』から亡命しているんだ、とベンは言いたかったが、うまく言えなくて、黙った。」
少年が亡命しようとしている「ぼくたち」とはどんなものなのだろう?
「ノベンバー」のなかに印象的な一節がある。
「何年か後に、ベンは、ある詩人があの日について書いたことばを雑誌で読んだ。あの日、ノベンバーの最後の月曜日だったあの日は、アメリカ人が『公の涙(public tears)を流した最後の日だった』と。」
 あの日とは1963年11月25日、月曜日。22日に亡くなった米国第35代大統領J・F・ケネディの国葬が行なわれた日である。(巻末の年譜によれば、13歳のリービ少年は、アーリントン墓地でその葬列を目の当たりにしたのだという。)しかし、べつにケネディ(若く強かった頃のアメリカ?)を礼賛しているとか、そういうことではない。彼がこだわるのは失われた「パブリック・ティアーズ」である。そして彼が目の当たりにした大統領夫人ジャクリーヌのかすかな「苦笑」と、そこに込めらているように思えたもの(「あなたたちはみんな共犯者でしょう。泣くのはよせば」)である。
 (だから)彼は、いま日本で徹底的に他者に囲まれ、それでも決して寄り掛る心を許すことがない。そもそも言葉が通じないのだ。これぞ「青春小説」の王道である。
 「単行本あとがき」のなかにリービ英雄は書いている。
「ぼくの日本語は、十六、七の頃の居候の中で生まれた。ベン・アイザックのように家出少年が生きのびるために町で拾ったものが、ぼくの日本語の出発点だった。日本語が十六歳の肥沃な内面に根を張り、日本語という膜に濾過されて十六歳の『世界』が何度も生まれ変った。」

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紙の本

日本(語)への越境の物語

2008/06/18 15:46

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る

いま、ふつうに、「小説を書く」といったならば、その言明が日本語であることにも明らかなように、それは自動的に日本語を用いて、ということになるだろう。これは、日本─日本語に限らず、ある土地で「小説を書く」という時、その土地で慣用されている言語を用いるのが、ふつうだろう。そのことは、多文化主義が謳われ、在日作家の苦闘の後、水村美苗、多和田葉子、リービ英雄といった作家が「日本語文学」という旗印でもって「日本文学」を問い返す今日になってもなお、さほど変わらない。つまりは、相も変わらず、アメリカ人であるリービ英雄が「日本語で小説を書く」ことは、奇異にみえる。であるならば、本書に収められた連作3編が発表された当時、それがいかに「奇異」だったか、それは事件とでも呼ぶべき、常識の裏をかくような衝撃的なものだったと想像される。

本書に収められた3編は、自身の体験をもとにしたと思われる、アメリカ人青年の彷徨の物語である。第一に、それは父の元を離れて成長を遂げていく精神的彷徨であり、第二に横浜から新宿へと渡り歩いていく地理的な彷徨であり、そして何より第三に、アメリカ人として日本語を話すことと周囲の反応への戸惑いといった、出自を基盤とした言語的彷徨である。総じて本書は、主体形成の物語と読めるものだが、主人公が文字通りの「異邦人」として、そのナイーブな感受性とともに形象化されたことは特筆に値する。ここで「異邦人」とは、単に日本にいるアメリカ人というに留まらない。アメリカ人であり、明らかにそうした相貌を持ちながら、それでいて日本語を話す、そこにこそ「異邦人」の「奇異」さが浮き彫りにされている。それは主人公に、例えば次のような形で感受される。

「お前はどこから来たのか。/お前は何のためにここにいるのか。/お前は何で帰らないのか。」

しかも、こうしたまなざしは、日本人ばかりでなく、同国人である肉親の父親からも、明確な言葉として発せられるが、それはそのまま本書のキイ・ノートでもある。

「お前がやつらのことばをいくら喋れるようになったとしても、結局やつらの目には、ろくに喋れないし、喋ろうと思ったこともない私とまったく同じだ。たとえお前が皇居前広場へ行って、完璧な日本語で『天皇陛下万歳』と叫んでセップクをしたとしても、お前はやつらのひとりにはなれない」

それでもなお、「しんじゅく」へと、日本語をもって歩み続けていく本書の主人公は、三島由紀夫『金閣寺』を参照しながら、その主人公・溝口の「吃音」に自身の言語感覚をなぞらえながら、日本に、そして日本語に留まり続ける。ただしそれは決して停滞ではなく、排されようとするそこに留まり続けることは、著しい困難の超克を即座に意味する。

最後に考えておくべきことは、こうした人種/言語をめぐる葛藤が、単に小説の内容として描かれているというばかりでなく、リービ英雄という作家は、それを日本語を駆使して「書いた」ということである。それは、主人公の姿勢の延長線上にしか、達し得ない偉業といってよい。だから、本書は著者自ら言うように「日本への越境の物語」なのだが、それは正確には「日本(語)への越境の物語」であったはずなのだ。

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電子書籍

星条旗の聞こえない部屋

2021/07/04 15:53

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る

アメリカの外交官の子として生まれベン・アイザックは「母国」とされるアメリカに馴染めず、ユダヤ人コミュニティに拒絶され、帰るべき「ホーム」を持たないまま、父親のもとを離れて日本で家出をする。
父親に禁じられた土地「しんじゅく」を訪れたベンが、どうやって日本人の中にはいっていくのか。
どうしても日本人に受け入れられなかったベンが、生卵を盗み食いすることで受け入れられたにも拘わらず、その事に「恥ずかしさ」を感じるというのは、外国人の日本人の難しさを感じた。

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2005/11/24 15:54

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2007/08/22 23:13

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2008/07/19 23:30

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2013/08/05 23:04

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