紙の本
謎解きの側面も楽しめる長編小説
2018/05/19 11:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんたん - この投稿者のレビュー一覧を見る
・なぜ,最近まで一緒に生活していた女性が,故人として古い本に載っているのか?
・なぜ,旦那様と称された男が,納戸に閉じ込められていたのか?
その他,いくつかの謎の答えを早く知りたくて,ページをめくる手が止まりませんでした。
あの婿養子のことは,本当にろくでもない男だと思っていましたが,富士正晴氏の解説に,
「もともと悪い男でもないようだし,葛城家によっていたぶられたために汚くよごれていったのだという感じさえする」
とあるのを読み,彼にも被害者的側面があることや,ヒロインの悪魔性に気付きました。
紙の本
誇りが強すぎる
2019/05/30 12:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
謎の女流歌人をめぐるミステリーというよりも、戦前の大地主の様子を克明に描いた小説という印象が強く残った。もちろん小説としての面白みは沢山あって引き込まれたのは確かだが、葛城郁子のあの気高い考えと生き方にはちょっと辟易した感情を持たざるを得なかった。みんなもう少し楽に生きることは出来なかったのかなあ。
投稿元:
レビューを見る
河内長野で三百余年続く大地主の総領娘として生まれた女性の数奇な物語。
ほんと明治大正期に残る古くからの因習ってすげぇなって思う。
山崎豊子初期の作品ってことで読みにくい点や説明くさい点があるっていう指摘はもっともだけど、山崎作品に共通する寡黙で芯の強い主人公は尊敬する。
自分もそういう人間になりたい。
投稿元:
レビューを見る
極端な人たちばっかりの集まりだなぁ〜と無理を感じるも、主人公と同じように家だの格式だのの呪縛で一生を過ごしてしまった明治生まれの女性を何人か身近に見たことあり、あたまから「ばかばかしい」とは言えない。
自らが選んだのではない人生をイヤイヤ、ブツブツ、憎しみや怨念にかられて生き、毛穴から内蔵した憎悪、恨みをフツフツとさせていた類と、観念諦観して(心中は淋しかったかもしれないけれど)飄々と生きていた類と二通り見た。
ま、両方いやだけど、後者の方がマシだろう。
主人公が自分の不幸な情感のみで生きていたのにとても歯がゆい思い。いづれにせよ、21世紀の今日、家だの伝統だのの呪縛に無理矢理押し込めるのは数少ないだろう。
が、天皇家に産まれた赤ちゃんの行方を国全体が勝手に決めて、本人の意思も何も無視しているのが遺憾。
投稿元:
レビューを見る
大分前に古本屋で購入してそのまま読まずにいた本です。今日読み始めて暇を見つけ見つけ読み、今読み終わりました。
やはり文章が上手ですね。畳み掛けるような物語の展開にいつの間にか引き込まれてしまいます。
一言で言うとこの本の主役は時代と言うものだろうな、と思いました。今の日本でも勿論旧家のしきたりなどはあるでしょうがこれほどの重みと執念にも似た確執で受け継がれはしないだろうと思うのです。
そして解説にもありましたが実は一番不幸なのは婿養子だったのでは?と思わなくもありません。
いまや携帯電話やメールで世界の端まで連絡がすぐに取れる時代。便利になったけれども物語性は大分薄れたかもしれないな、と思いました。
面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
先日訪問した富田林寺内町の旧杉山邸にいた歌人石上露子の自伝小説だったので興味津々で読みました。小説なのであくまでもフィクションでしょうけど、旧家の因習ってことのすごさ、家の大切さ。うーん、現代でもこういうのに縛られるってのはなかなか苦労するやろなぁ。と・・でも、皇室の方々なんかはもっとすごい縛りがあるんやろうなぁ。
大きな家の中ほど、色々なものが渦巻いてドロドロとしている典型的なものなのか・・・
身近に土地だけに、風景を想像しながらのめりこんで読みました
投稿元:
レビューを見る
あちこちに矛盾がある、というか。キャラプロットがいまいちなのだよね、この話。特に脇役の男性キャラの。
主役『御室みやじ』と語り部『よし』はいい。丁寧に作られている。が、『みやじ』の息子は前半に語られた人物像と『よし』が語る人物像とが無夜の中で合致しない。
内容。
時代は戦前から戦直後。
大地主の総領娘として気位高く育った『みやじ』。本名、郁子。歌の天才。ろうたけた美貌。類まれな才能。金。家柄。
彼女を見守るのは「よし」という小作の娘。生涯を郁子のために費やす。
郁子はわがまま。冷たいところもあって、主役を張るよりは意地悪なライバル役といったところ。これに振り回されて狂死することになる夫は可哀想だった。
郁子の恋の相手もまたなんだか冷たさばかりが目立つ。なんかみんな勝手だなあ。
因習が、業が、どうのこうのというけれど、みんな勝手にやってたようにしか見えない。
壮絶なエゴの物語(言い切り)
正味417ページ。文字が小さく、詰まってます(笑)どろどろしたのが好きな人はどうぞ。
投稿元:
レビューを見る
大正時代の世界感に、かなりはまりました。
名家に生まれ、自分の思い通りに生きられない運命の下、凛とした強さを持った、御室みやじに魅了されました。
投稿元:
レビューを見る
旧家の総領娘であり、歌人御室みやじの秘められた恋と数奇な運命をたどる。
今までこの方、社会派の作家さんだと思っていました。『不毛地帯』とかが有名すぎて。
宮尾登美子といい、この作家さんといい、円熟した筆で描かれる女性の一生というものは読みごたえ満点です。目がくらむほどきらびやかで豪奢な反面、がんじがらめで窮屈な旧家の様子が生半可ではない描写力で描かれていました。
波瀾万丈とはまさにこのこと。
投稿元:
レビューを見る
大地主の総領娘であり、大正時代に類まれな歌人として知られた御室みやじの波乱万丈で数奇な半生。
旧い因習の中から飛び立つことを許されず、それによりさらに燃えたぎる情熱、冷徹さ、孤独が、痛いくらいの美しさと真っ直ぐさで迫ってくる。重厚で激しい美しさをもつ小説。短歌はまったくわからないけれど、御室みやじの詠む歌は、はっとするほど典雅。
投稿元:
レビューを見る
太平洋戦争の前後を生きた女流歌人の物語。
歌と恋愛をどこまでも一途に希求しながら、旧家の伝統としきたりに押しつぶされていった女性の無念の一生が、流麗な文章と短歌を交えて描かれています。
明るい部分よりも、無念さ、悲しさを表現した部分が多い作品です。
投稿元:
レビューを見る
解説でも書いていたが、著者の代表作といわれる作品と比較すると少々筋立て等が粗っぽい。
題材も取り立てるほどのものでもない気がしなくもない。
著者の作品で今まで未読の作品だった訳だが、それもむべなるかな?という感じ。
投稿元:
レビューを見る
あれ?これ、山崎豊子?彼女の本を読んだことがあればあるほど、そう思ってしまうだろう。いつもは社会の腐敗について考えさせられるが、今回はある女の一生を通して人生というものを考えさせられた。
今の時代でも、自分で選んだ結婚相手を親が気に入らず、別れを選ぶカップルがいる。しかし花紋を読むと、それが正しい選択なのかわからなくなってしまう。
自分の意思を尊重する現代的な女性であった郁子が、保守的な結婚をする。保守的な女性ならそれを受け入れ徐々に順応するだろうが、郁子は最初から受け入れず徐々に拒絶を強める。
保守的な家系、意地の悪い継母や妾腹、腹黒い夫が郁子の不幸を一層際立たせるが、郁子自身にももう少し順応する力があれば、数段幸せに暮らすことができたかもしれない。
現実を受け入れる力、それが幸せ力なのだろうと思った。自分も我流を貫き通すことがあるので、この本に学ばなければならないだろう。
投稿元:
レビューを見る
河内長野の大地主葛城家の総領娘として多くの人にかしずかれて育った郁子。やがて歌人として花開きながらも、その人生はあまりにも激しく過酷で悲しいものだった…。
明治の大地主の因習と、複雑な家庭環境。一概に誰が悪く誰が正しいとも言えず、郁子でさえも時に悪魔となり時に悲劇のヒロインとなる。
解説では結構辛口に評されていたが、これはこれで趣も感じられる、深みのある作品だと思う。
投稿元:
レビューを見る
解説がえらそうで読了後ちょっと興ざめ。
人物やストーリーより、醍醐味は優雅典麗な描写そのものです。
後半はほとんどホラーだったけど。