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私費を投じて気象観測の道を切り開いた男と、支えた女。粗筋を知っていたが、明治の夫婦の並なみならぬ覚悟に胸うたれる。しかし、現代ならばマスコミやネットで…と思わないでもない。凄まじい冬山の猛威に挑み、夢半ばで倒れた無念さに涙溢れる。
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意義深く、偉大な仕事に打ち込めること。
その想いに寄り添ってくれる人がいること。
この二つ、自分の人生に出逢えれさえすれば。
その人は大成功したと言えるんだと、思いました。
ありきたりですが。
一人で戦うのはある意味簡単で。
自分に続く二人目を得れること。
この二人目の熱さで。
翻って己の人生が決まるんですね。
この本ではそれが妻でした。
それが相棒でも友人でも敵でも。
一人ではない人生になれること。
そのもの自体が、大事な気がしました!
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途中から読むのが辛くなるほど壮絶で過酷。
でも読まずにはいられない熱量があった。
ちなみに、
あとがきや解説ってあまり面白く感じないことが
自分の場合殆どなんだけど、この本はあとがきまで
読んで完結したって感じました。
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♪~芙蓉の雪の精を取とり 芳野の花の華を奪い 清き心の益良雄が 剣と筆とをとり持ちて 一たび起たば何事か 人生の偉業成らざらん~♪ 新田次郎「芙蓉の人」、2014.6新装版文庫、1975.5刊行。読み応えがありました。そして深い感動を覚えました。富士山の頂上での気象観測に命をかけた野中到、そして、その夫を支えるために富士山に登り、観測を共にした妻、千代子の物語。二人にまかせっきりの気象台幹部の情けなさには憤りを。野中夫妻に感謝の気持ちでいっぱいです。
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明治の男の気概と意志を感じる。
明治の女性の凛とした強さを感じる。
あの当時の科学技術の水準も低く、材料や機材も素朴な時代の中で、富士山頂に観測小屋を私財を投じて建立し、しかも冬季観察を企てようという誰も考えもしなかったことを祈願し、実行した野中到。
日本どころか世界的にも類例の無い壮挙であり、当時の民衆も熱狂したという。
野中到の物語は何度か小説化されたようだが、野中到の影に隠れていた妻の千代子に光を当てたのが新田次郎のこの名作である。
新田次郎自身がかって気象庁職員であり、富士山測候所に数百日勤務していた経験に裏付けされた冬の富士山の描写は凄みがあり、まるでその場にいるかのような気にさせる。
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「新田次郎」のノンフィクション作品でNHKでドラマ化もされた『芙蓉の人』を読みました。
「新田次郎」作品は、2年前に読んだ『アルプスの谷 アルプスの村』以来ですね。
-----story-------------
時は明治28年である。
正確な天気予報をするためには、どうしても富士山頂に恒久的な気象観測所を設けなければならない。
そのために「野中到」は命を賭けて、冬の富士山に登り、観測小屋に篭った。
一人での観測は無理だという判断と夫への愛情から、妻「千代子」は後を追って富士山頂に登る。
明治女性の感動的な物語がここにある。
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明治25年(1892年)、日本の気象予報を正確に把握するために、富士山の山頂に観測所を設置しようと、「野中到(いたる)」は富士山に登頂し、冬の寒さに耐えながら気象観測に力を尽くす… 「到」と命がけで夫と行を共にした妻「千代子」との夫婦愛と、気象観測に情熱を注いだ人生を描いたノンフィクションです。
日々の暮らしに欠かせない天気予報… この予測をより正確なものにするべく、命を懸けた「野中到・千代子夫妻」、、、
「到」は私財を投じて富士山頂に気象観測所をたて、中央気象台からの「委託」という形で観測機器を借り受けて、前人未到の冬期観測を実施… たった一人、眠る時間も削っての2時間おきの計測を続ける「到」、、、
一人での観測は無理だと考えた妻「千代子」は、夫を支えるため、周囲の反対を押し切り、娘「園子」を実家に預け、夫の後を追って山頂に登る―― 暴風、雪、低温… 想像を超える自然環境下に置かれた観測所では、室内で終日ストーブを燃やし続けても寒さが増し、壁面は凍りその厚みが増してゆく。
さらに高所での生活で高山病を発症… 食欲は失せ、食料あれど食べたいものが底をつき、何より寒さと低気圧によって当時の計測機器がことごとく使いものにならなくなっていく。
献身的な愛情と勇気をもった明治女性の姿を描いたこの傑作でしたね… 夫妻の奮闘、暮らしぶりもさることながら、衰弱し自力で立つことも這うこともできない二人の救出に向かい、凍結した頂上から二人を背負って連れ帰った人たちの心意気にも心を打たれました、、、
狂ったような暴風と、目も凍傷を受けるほどの極寒… 当時の装備で厳冬の富士山に登るなんて、本当に命懸けですもんね。
それにしても、「千代子」の精神的な強さには敬服しました… 見習いたいですね。
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野中到(のなか-いたる),千代子(ちよこ)夫妻の実話。新田次郎の書く本編はもちろん、最後の解説を含めて面白い作品。最後にエピローグ的に出てくる到と娘の会話に感動させられた。
『第66回NHK放送コンテスト 朗読部門』の課題図書にもなった。
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R5.3.5~3.11
(きっかけ)
・好きな作家
・富士山測候所について知りたくて
・古本屋で100円
(感想)
新田次郎さんの八甲田山死の彷徨を読んでいたので「壮絶な山岳小説」はよくわかっているつもりでしたが、別の角度からの「壮絶」がここにありました。
到の決意の深さと千代子の夫への情熱、目的のためなら「死」を厭わない二人のようすがよく描かれており、心身を崩す二人の心に引き込まれて、読んでいて少々気分が悪くなるほどです。
二人は生きて地上を踏めるのか、最後の一ページまでドキドキの1冊でした。
補足:ページ構成は、1冊のうち半分が登山準備編、少しだけ登山、残りの半分が富士観測編です。
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明治時代、富士山頂に通年観測できる気象観測所を作った人とその妻の話。
当時はできないと思われてたこと。想像を絶する大変さとしか言いようがない。