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この短編集「骨は珊瑚、目は真珠」も実に巧い。1話読み終わるごとにため息が出るほどに。もう、ある意味神業というか、職人芸です。短編としてのまとめ方もそうですが、文章自体の美しさがずば抜けている。美しさというのは、表現の美しさでもあり、論理の美しさでもあり、構成の美しさでもあり、その他もろもろの色々な美しさをひっくるめた意味で。とてもじゃないが、自分にはこんなに美しいものは創造し得ないし、他の人の本を読んでみても、こんな美しさはちょっと見あたらない。圧倒的。
決して、趣向を凝らして巧みに創ってある、という感じではない。創り上げたものが、ただひたすらに美しさを誇っている。池澤夏樹という人からにじみ出てくる文章が、自然と美しさを備えている。そんな感じさえする。それだけに、著者の技巧をムリヤリに押しつけられる感じが全くしない。自然と身体に馴染んでいく。美しさが文字から浮かび上がって、そのまますんなり頭に入り込み、想像の中で広がっていく。
別の短編集「南の島のティオ」もかなり自分の中では好きな部類だったが、ティオは一定の設定があった上での連作物だった。月並みな表現だが、この短編はティオと違って色んな池澤夏樹を楽しめる、と言える。それでも、解説にあるように、根元的な寂しさによって池澤夏樹からにじみ出た文として、規定されている。それが何とも言えない美しさに繋がっていると自分には思えるのだが。
何はともあれ、こんな表現をしうる作家に出逢えたことが、一つの幸運だ。
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池澤夏樹さんの短編集。「きみのためのバラ」を読んだことでもうちょっと短編が読みたくなったので探して買った。なんというのだろうか、やはり彼の作品は良い。
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いつもと変わらない普通の朝だった。七時に自然に目が覚め、三分後には暖かい寝床に未練もなく起きだして、暖房のスイッチを入れた。
感想:http://tomtomcom.blog73.fc2.com/blog-entry-106.html
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題名に引かれて読んだものですが、良かったり微妙だったり、という感じでした。表題作は結構好きだったんですが…。お話の書き方は好みでした。
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主題は「孤独」。
人類が次々と病に死に絶えてゆく地上で、
キャンピングカーを借りてたどり着いた一軒家で
クリスマスの準備をしながらツリーに明かりを灯して
一人、クリスマスの夜にあなたなら何を思いますか?
短編集です。そのほかの作品も秀逸。
クリスマスのこの時期に紹介したい一冊。
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2009.04.11. 不思議な話も入ってる短編集。「贈り物」が、なんだかいいなーいい話だなー。感触的には「鮎」が1番好き。どっかの民話(アイヌとかの)を、静かに聞いてるような気持ち。
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ユニークな作品が詰まってます。
私が気に入ったのは、大学教授が講義で話す形式の『アステロイド観測隊』
惑星気象学の専門家であるのに、まるでスパイのような行動をすることになってしまう…。
人類最後の日を唯一生き残った主人公が、残りわずかの生をどう過ごすかを描いた『北への旅』
自分の幸福は、だれかの代わりに得たものではないのか
そう思う主人公が夢の中で、水中に多数の人が眠っている映像を見る。
幻想的な描写が印象的な「眠る人々」
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静謐な死がたくさんあらわれる。ただ、そうした死を反射鏡として描かれる生は、そのかたちは多彩。死は一つでも生はたくさんなんだな、と、そんな気にさせられる。
それにしてもこれを初めて読んだ20代半ばのころは、「北への旅」ラストは実に平凡に思えた。最近、あのラストは辛くて読めなくなった。自分の変化が感じ取れておもしろい。
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・SSさんのHPで話題の「Dr.ヘリオットのおかしな体験」の訳者
・Jasmineさんの無人島への一冊の著者
というわけで、突如池澤氏に興味を持ち買いました。
しかし。。。。
申し訳ないけど、私には良く判りません。どこか突破口なり、琴線に触れるところがあればジンと来る感じがあるのですが、スルリと逃げてしまった感じです。
文章そのものの良さは感じられるのですが。。。
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短編9編を収録しています。
表題作である「骨は珊瑚、眼は真珠」は、自身の遺骨を海にまいてほしいと願う夫が、死後に妻に対して語りかけるかたちで叙述された物語です。また「眠る女」と題された作品は、深い眠りについているあいだに巫女となって沖縄の祭りに加わる体験をする女性の物語です。「眠る人々」は、UFOに遭遇するという体験と、個人の幸福に対する疑問がつづられています。
これらの作品に典型的に見られるように、この世界に生きている私たちが、自分自身を超えるなにかとつながりうることを、幻想的な物語に託して語っている作品が多く含まれています。「解説」を担当している三浦雅士は、本作のテーマに「根源的な淋しさ」があると指摘し、「夢でしか回復されることのない共同体は、そこから切り離されてしまった現在の、根源的な淋しさをこそ強く印象づける」と述べています。ややスピリチュアルな道具立てに戸惑いをおぼえましたが、本作に収録されているいくつかの物語を通じて、著者がえがき出そうとしているテーマが浮かび上がってくるように感じられました。