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電子書籍
時代は変わっても人は変わらない
2015/11/24 16:29
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投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
収録の12編の短編は、どれも星新一らしい現代的視点で江戸時代を解釈されている。
従来の時代小説は、江戸時代にどっぷり浸かって、この時代の習俗や人情と自分の中にある価値観の共鳴を楽しめるものが多い。
それに対して、本書は、江戸時代の出来事や習俗を引いた目で見つめており、我々が現代生活の中で感じている価値観との共通点を江戸時代に見出している感覚がある。
情の共感と社会生活の共感といった違いだろうか。
従来の時代小説ばかりを読んでいると、そのすべてを自分の中に取り込んで、あるいはその世界にどっぷり浸かっているから、現代的な感覚は皆無。ところが、ここには現代の頭で江戸時代を眺めているから、星新一の面白い視点に驚かされつつ、こんな解釈も納得できるな、と純粋に楽しめた。時代は変わっても、人は変わらないものだと思った。
収録作品の中でも面白かったのが、【江戸から来た男】
江戸城に登場したある藩の殿が、幕府の役人から貴藩はここのところ景気が良くて、けっこうでござる、と話しかけれた。
それを聞いた家老たちは心配でならない。
景気がいいとなると、幕府からさまざまな普請を言いつけられるからだ。
しかし、外面的には地味を演出し、貧しさを装っているのに、なぜ藩に蓄えがあることが知れたのか。
そして家老たちは一つの答えに辿り着いた。
「藩内に隠密がいるのではないか」
そこで浮かんできたのが、十年ほど前に住み着いた庭師の男だった。
江戸生まれのこの男に、家老たちの疑心暗鬼は深まるばかり。
さんざんに普請を言いつけて、藩の弱体化を図った史実があるから、実際に、こんな疑心暗鬼があってもおかしくない。
社会の価値観は違えど、霧に包まれたような危機感に右往左往する様子は、現代とさほど変わらない気がした。
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