人に薦めたくなる秀作
2015/08/21 11:17
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投稿者:ピザとビール - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞の書評欄を見て購入したが、著者の描き出す世界に予想外なほどどっぷり浸かって堪能した。ミステリー/サスペンス系の立てつけになっているが、それのみでなく、初恋(?)の思いを淡く、時に濃くサスペンスに溶かし込んで、読み手である自分のノスタルジックな感情を揺すられる。人に薦めたくなる秀作である。
難解だけど純愛もの
2021/01/02 19:08
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投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
事件の発端となるICカードの暗号化や秘密鍵、公開鍵の話や、クライマックスの積み木カレンダーの部分など、
専門的でわからなかった部分もありますが、
そこは流しても読めます。
2度も恋するのに、タイミングが悪いとは。
仕事では切れ者なのに、
プライベートは高校生レベルの行動力なんだから。
男ってやつはもう。
一気に読ませるストーリー
2019/05/30 23:35
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投稿者:k - この投稿者のレビュー一覧を見る
人は敷かれたレールを走り続けてしまうのか。
主人公のIT企業Jプロトコルの中村優一は、
東南アジアを中心にICカードの販売に携わっ
ていたが、バンコクの商談で成功し、香港の
子会社の代表取締役に出向を命じられる。
バンコクの商談の成功後、澳門の娼婦から告
げられた「あなたは、王として旅を続けなく
てはならない」という言葉が徐々に現実にな
っていく。
タイトルの未必とは、法律用語の「未必の故
意」からきている。その事実が起きるかもし
れないと知りながら、そうなっても仕方ない
とすることだ。
望まざるともマクベスの物語をなぞるように
破滅の道に向かっていく……。
久しぶり一気に読んでしまう小説でした。
今年、薦めたい本No.1です。
カクテルへの執着
2023/04/16 14:00
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
「初恋の女性を忘れられない」のではなく、「初恋の女性を想い続ける自分」に酔っているような主人公だと感じてしまい、どうにものめり込めませんでした。ダイエットコークを使った何とかいうカクテルへの執着心も薄気味悪かったです。甘そうであまり美味しそうなカクテルでもありませんし。女性陣も魅力が伝わらない描き方で、ずっと思い続けるような、また命を懸けるような何かを感じられませんでした。
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未必。日常あまり使われないこの言葉は「意図せずして、かつなるべくしてそうなってしまう」事を意味する。つまり、主人公中井は、自ら意図することなくマクベスと同様の立場に追い込まれていくのだが、その根っこはなんと彼の高校時代にあった。共通一次世代という、ごく狭い範囲の世代(今現在50歳前後)という、非常に微妙な年齢の男が、東南アジアという、経済的政治的に非常に微妙な地域で、思わぬ事件に巻き込まれていくところは、ミステリというよりやはりサスペンスであろうと思う。戯曲『マクベス』の利用も巧みであって、人物、舞台、いずれの描写もリアリティに富み、説得力がある。キーアイテムである企業秘密の正体も秀逸だと思う。今だからこそ読みたい、いつ読んでもいい逸品。お供はぜひ、ダイエット・コークのクーバ・リブレで。
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作者22年ぶりの2作目とか。
これまで余り触れたことのない文体で、自然でソフトな感じなのだが、中身はハードボイルド。
マクベスをなぞっているのは良いとして、主人公がなぜ「王」なのか良くわからないし、女性にもてすぎるし、裏でそんなに人を殺している上場企業があるとも思えない。
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久々に夢中になって読みました。
IT企業で働く中井優一が陰謀に巻き込まれていくハードボイルドラブストーリー。
アジアの各国を飛び回りマクベスの戯曲と交差するストーリーはスケールの大きさと臨場感がありました。
共通一次世代は特に懐かしいキーワードがあって楽しめるのでは?
私は最初の方で結末にピンときてしまいましたが、それでもハラハラドキドキして楽しめました。
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IT企業に勤める中井優一、高校の同級生伴浩輔が同じ会社にいた.二人は東南アジアで拡販の仕事をするが、中井は澳門で占い師からマクベスにちなんだ予言を伝えられる.その後二人は香港の子会社に異動するが、そこでは多くの前任者が不可解な形で死んでいる.同期の高木から情報を得た中井は行動を開始する.高校の同級生だった鍋島冬香が香港で勤務していたが突然失踪していることに気がつく.自殺の形で人を殺める呉蓮花、セクとして中井に仕える森川佐和の正体.多くの登場人物が皆光っている.東南アジア、沖縄が出てくる場所だが、世界中を飛び回る感じがする小説だ.楽しく読めた.
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すごい。
途中でいろいろ頭でわかってくるし、突っ込みどころもないではないのだけれど、読後感はそれを越える。タイトルが「未必のマクベス」だよ?まいった。
それから、たまたまあれこれの道具立てが似ているので沢木耕太郎「波の音が消えるまで」とつい比べてしまって申し訳ないけど、「波の音」より格段に複雑で格段に上。
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普通のサラリーマンの物語かと思いきや、登場人物は企業の闇の中でありえない事態に振り回される。最初は主人公の中井に、自分と同じサラリーマンだというところに感情移入するのだが、だんだんと自分と異なる中井像になっていく。そこからエンターテイメント作品としてドライブがかかる。真実味を帯びながらも舞台は非現実的な世界に移行。気がつけばすっかりマクベスの舞台の観客になっている。そして中井はミステリーの中心に立たされ、周りの人物もどんどん巻き込まれ、マクベスの舞台は大きくなる。そして終幕。やはりマクベスは悲劇だった。切ない。
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文庫が話題になってたので読んでみました。
最初香港やら澳門やらベトナムやらあまり馴染みのない地域の話が続き
話に入り込むまでが結構厄介でした。
実際に本題に入っても暗号化などの専門的な話が多く
理解するのが難しかったです。
実際秘密鍵とか公開鍵とか一応知ってはいますが
本当の意味で物語の筋を追えているかは自信がありません。
マクベスは一度読んだことがあるのですが15年以上も前の
学生時代に読んだだけなので細かいところは忘れてました。
せっかくだから久しぶりに読み返してみたいなと思います。
途中からあまりに自分からマクベスの世界に入り込んでいく
主人公に違和感を覚えたものの、面白く読むことは出来ました。
鍋島冬香=森川というのは最初から疑ってましたが別に
作者としては隠す気も無いという感じだったので
ネタバレ的な感じではないですね。
でも最後に主人公が殺された理由はよく分かりません。
最後で殺すくらいならいつでも殺せたような気が…
そしてさらに積み木カレンダーの答え合わせが
どうしても理解できずモヤモヤ。
6と9を非対称にすると成立しないことは分かるのですが
なぜ91にすると11をあらわすことになるのかが全く理解できません。
積み木カレンダーの左側が右側より少し下がっている?
ビジュアルで見せてくれないとイマイチ分からないので
映画化されないかなと密かに思ってます。
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大作のため、読破にものすごく時間かかりました。けれど、読んでいる間のめりこめたので、実に良い時間になりました。通奏低音がマクベスとはいえ、何度もストーリーが挟み込まれることでストーリー自体の勢いが削がれた感があったかなあ、とはおもいましたが、スリリングな展開で面白かったです。スノッブな社員の方々が多々登場して、実に鼻につきました。羨ましい、私も、とは思いましたが、こんな企業にいるのは嫌ではありますね。日々のほほんと暮らしてるので、こんな企業あるのか、という疑問が常に湧き上がりました。
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面白く読める犯罪ファンタジーロマンス。
社内政治や礼儀作法のリアリティに比べてそれ以上の部分でのフィクション感のバランスが不思議。
そんなに簡単に人は消えるのかな。マクベスの時代ならまだしも。
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こんなに簡単に企業戦士は殺人を犯すのかと唖然とし,そこらじゅうの監視社会のあり方に戦慄した.ストーリーをマクベスとオーバーラップさせることで無理をしているところもあるだろうが,危機的状況もどこか芝居を見ているようで,事件の内容よりもその過程や会話(セリフ)が面白かった.そしてこの20年にも及ぶ純愛!これは愛の物語だ.
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内容(「BOOK」データベースより)
IT企業ジェイ・プロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられる―「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。やがて香港法人の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして恋愛小説。伝説のデビュー作『グリフォンズ・ガーデン』から22年―運命と犯罪と恋についての長篇第2作。
全く知らない作家の文庫本が大展開平積みされていたことから出会った本です。22年前からの第二作目という事でよくここまでの売り方をしてもらえるなあとびっくりです。忘れ去られて然るべきですが、内容の素晴らしさが出版社と書店を動かしたというところでしょう。一言でいうと、「人を殺す島耕作」というエグゼクティブな犯罪小説であります。巨悪に立ち向かうのかと思いきや、巨悪自体は実態を表さず、しかも立ち向かおうという明確な意思もなく。過去に思いっきり振り回される初恋小説でもあるというなんとも言えない話です。マクベスを全く知らない状態で読みましたが特に予備知識として必要ではありませんでした。
主人公の中井は自分でバタバタ動かなくとも、回りが自分の為に道を空けるような存在で、自分はそこに気が付いていない。そんな人おるんかいと思いますが、王なのでしかたがないのでありましょう。女性も彼が何をしようと呪縛されたように離れられないのであります。ふつう人を殺した時点でさようならと思うのですが、さらりと受け入れてしまうあたりみんなネジが外れています。でも静謐な空気のまま粛々と進んで行く物語。違和感はあれどそれが不思議な魅力として寓話めいた雰囲気を作り上げています。
中井の人物造形を全て並べてみると、意外となにもしていない事に驚きます。回りがばたばたと彼の為に駆け回り、泣き、怒り、死んでいくのですが、彼はそれを受け止めているだけで、感情としての中井はただの舞台装置にも思えます。マクベスというものを現代劇に当てはめて表現する為と感じました。こう書くと退屈なのかとお思いますがノンストップで読める面白さな上に読み応え満点です。おすすめ。