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昨年末(2014)に本屋さんでかなり分厚目の翻訳本を見つけました。値段も高くて少し迷いましたが、この本の主題は、私がかつて勤務していた会社と深い繋がりがあるものであったので読むことにしました。
本国の米国においてもこの会社について書かれた本はいままで無かった様で、丁度良い時期にこの本に巡り合うことができて感謝しています。
私が印象に残ったポイントは、長い間トップに君臨したレイモンド氏が強い財務体質を作り上げたこと、エクソンがモービルと合併したことで思わぬ苦労をしたこと、今流行っているシェールガス・オイルの開発競争には後れを取っていたことでした。
以下は気になったポイントです。
・分割解体後のスタンダード石油のうち、最大のニュージャージ、これに次ぐ、ニューヨーク2社がエクソンモービルの前身である。ピーク時にはアメリカ市場の90%を支配していた(まえがきp2、p35)
・バルディーズ号事故後には、尊敬される企業として第6位であったが、110位に落ちた(p33)
・強力な選抜システムでは、勝者は素早く昇進することが期待できたが、同時に素早く業務を覚え、2,3年で異動することが求められた。競争とゼロサムの結果しか残らないので、同僚に対する不信感が生まれた(p39)
・上級幹部は、勤続4~7年のあたりで、エクソンに骨をうずめるか去るかに分かれることに気付いた。結果として単なるOIMSの支持者だけでなく、熱心な信奉者たちが上層部を占め、牽引する会社となった(p39)
・エクソンは1990年代の終わりには、多くの国営石油会社と比較すると、14位以下の規模に過ぎなかった。(p54)
・1998年6月にAPIの主催の会合にて、レイモンドは、日本におけるエクソンとモービルの製油所を統合するという小規模な案を持ち出した(p61)
・レイモンドの貢献は、新規事業の廃止を助言したこと。太陽光投資を清算して、政府の補助金に頼るような事業はエクソンの事業でないとした(p80)
・石油は藻や動植物性のプランクトンからできているので化石燃料と言われる。植物の残留物は徐々に地下の熱と圧力によりイオン化して石油に変化する(p124)
・2000年以後重要さを増したアフリカにおける石油開発での分け前を得たければ、モービルの遺産であるプロジェクト(アフリカ等)に依存せざるを得なかった(p138)
・オランダ病とは、大規模な天然ガス発見後のオランダ経済におきた経済の歪みをいう。資源を得た場合の国家は、資本と才能は本来生産的で自足的な経済部門(農業など)から離れてしまうようなこと(p163)
・モービルとの合併後に、レイモンドは2万人を削減、投資家に約束した30億ドルを大きく上回る80億ドルのコスト削減をした。工場要員を除いた統合会社を、合併前のエクソンと同程度以下のサイズにしたいとした(p215)
・最も手ごわい競合相手であるシェルは、イギリスとオランダに分裂した企業統治、リーダシップ引継ぎに混乱の起きやすい60歳定年、分��い官僚機構であった。エクソンはシェルをパートナーとして選んでいた(p221)
・2003年時点でアメリカ経済は毎日1200万バレルの石油を輸入する必要があったが、その供給は世界中の石油会社が生産する石油の購入で賄えた(p227)
・1980年、アメリカエネルギー情報局は石油の確認埋蔵量は世界で28年分とした、20年後には37年あると予測している(p241)
・アメリカが1日に消費する石油2000万バレルのうち4分の3は、輸送量燃料で残りは産業用途。発電は、石炭・天然ガス・水力、原子量(p307)
・エクソンは2030年までにバッテリー技術、太陽パネルのブレークスルーは起きないとしていた。予測不可能なブラックスワン(炭素課税、炭化水素燃料使用の制限など)を除いて(p309)
・ガソリン小売はアメリカ人にとって近い存在であるが、どの大手会社にとっても悪名高き低収益部門、エクソンモービルの目標がより良い社会的評価を得るのであれば、小売りビジネスから全面撤退して、デュポンのように目立たない姿勢を保ち高収益をあげる企業になる選択肢もあるとレイモンドはのべた(p315)
・漏えい装置は警報を鳴らした、警報を正しく診断できなかったのは人間であり、当社には重大な不注意はない、というのがエクソンモービルの主張(p387)
・石油埋蔵量の議論で変化したのは、実際地下に眠っている石油の量ではなく、石油の位置を特定し、経済的に組み上げる技術力の力(p421)
・エクソンモービルは、太陽光も風力も本格的な脅威とみなしていなかった、それらは電力供給システムであり、石油産業の心臓部である輸送燃料に影響を与えなかったから(p441)
・エクソンモービルにとって破綻的なシナリオは、電気自動車の急激な普及である。ハイブリッドの増加による石油消費量の減少は、新興国での消費増加と相殺される(p447)
・1997年北京において、レイモンドは地球温暖化自体が起きていないことを示す証拠について論じた。それ以後のリーダー達は、京都議定書、排出権取引などの公共政策を批判してきた。それに対して2009年に政府は炭素税導入の検討を示唆した(p531)
・オバマは、ハリウッドとウォール街に支援を依頼したが、ヒラリーのようにフォーチュン500社との幅広い繋がりはなかった(p545)
・大手国際石油会社は、XTOのような新興のガス会社を追いかけていた。メジャーはXTOが乗った国内ガスブームに乗り遅れていたから(p571)
・掘削会社は、企業秘密として岩石の粉砕に使用する化学物質の組成を公表しなかったので、地域住民はその液体が健康に害があるか否かを判断できなかった(p578)
・エクソンモービルにはシェブロンの倍の収益性をもつ巨大な化学部門を持っていたため、シェブロンより利益を上回ることができた(p588)
2015年2月7日作成
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600ページを超える大著である。アメリカを代表する大企業で、世界一を競う会社であるエクソンモービル社の社史とも言うべき内容で、1989年のアラスカでの原油流出事故から現在までの同社のさまざまな事件やトラブルなどの出来事を時系列に28章に分けて描いたものである。
1章分の出来事でも1社長の任期かけて対応するような大ごとばかりであるが、実質二人のCEOの時代の出来事である。
エクソンは世界中で原油を生産しているため、政治や紛争などとの関わりも濃い。強固な意志を持つリーダーに率いられたゆえに、それらの困難を乗り越えて業界に君臨できたのが示される。これは利益維持や対敵姿勢だけではなく、事故防止などにもあてはまる。
米国政府よりもしっかりした経営哲学を有し、それを頑なに実践する強さが、本書の題名に現れている。恐ろしいほどの会社である。
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例えば、テレビ局がこの本のどれか一つの章を取り上げたとしたら、それだけで少なくとも一時間の特別番組を制作できる筈だと思う。もしそんな番組が制作されるのなら、出来ればそれを会計帳簿上の数字や組織の上に立つ人々の視点からではなく、現場で働く者たちの視点から描いて欲しい。この本に描かれている世界の一部に身を置いて来た者としては切にそう願う。この業界が米国のみならず日本でも人々から好意を持って受け止められていないと認識しつつ、それでも国内のエネルギー供給の一助になればと思いながら、文字通り汗と泥にまみれて働いているもののことを身近に知るものとしては。オイルショックの記憶のない世代、それは居間の照明が裸電球であったことも、集合住宅の最上階に住む友達をコンクリートむき出しの階段を登って訪ねたこともない世代、更に言えばテレビに色が着いたときの感動を知らぬ世代だとも言える世代が、居心地の良い部屋のソファーでぬくぬくとテレビを観ながら好き勝手言えるのも日本にエネルギーを届けたいという気持ちがある人々がいるからなのだということを、ほんの少しでも解ってもらいたい。
もちろんジャーナリストとして対象を批判的な立場で眺め取り組むことは重要であると思う。けれど、エクソンモービルの本当の凄さは、この本の中心で描かれているテキサスやワシントンの大物たちの中だけにあるのではなく、過酷な現場で働く人々の中にこそあるのだということが、石油のことを余り知らない人々にも伝わるようにも描かれていたなら、と少し残念に思う。例えば、ダニエル・ヤーギンの「石油の世紀」は、本書以上の大部な上に取り扱っていた時代も広範囲だったけれど、視野が多角的で躍動感があり、初めての海外赴任で石油開発の前線に携わり始めた頃に読んだせいもあるが、身に沁み始めたこの業界の巨大さを噛み締めつつ、わくわくしながら読んだ記憶がある。けれど、残念ながら、本書は、これを読んでこの業界で働いてやろうと思う人々を沢山生み出すとは思えない。山崎豊子の「不毛地帯」を読んでやりがいを感じた記憶が、執拗に本書に対して批判的な感情を喚起する。
とは言え、本書のような大部の石油業界にまつわる本が出版されるということは良いことだと素直に思うし、次々とこのような本が世に出てくるアメリカという国は、やはり石油に対する一般市民の関心が高い国なのだなとも思う。日本における石油会社のイメージは実に偏っていて、今は横文字の名前の会社ばかりになった日本の石油会社だって、利益の大半はガソリンを売ることではなく、掘って探し当てた石油を生産して販売する部門が支えていることを知っている人の数は少ないだろう。例えばエクソンという会社がガソリンを売る以外に何をしている会社であるかを知る人の割合は、日本では極端に小さいだろうけれど、アメリカでは石油を生産して儲けていることはもう少し知られているからこそ、原油高の恩恵を受けている石油会社からもっと税金を取れという議論にもなるのだろう。それでもこのような啓蒙書のようなものが出版されるということは、やはり石油会社の実態というのは謎めいているものだなと改めて��識する。あからさまに言及されてはいないが、ロックフェラーという名前が喚起する陰謀めいたイメージが、拭い去り難く存在するのだろう。
確かに、エクソンという会社は昔から何か得体の知れない会社であるというのが業界での一般的な印象で、そこに働く従業員たちも決して楽しげな人々ばかりではないことも事実だと思うけれど、このスケールでプロフェショナリズムを徹底している組織が稀有であることもまた事実だと思うし、そこのところは素直に称賛されて然るべきだと思う。本書でも、ある一面での彼らの徹底ぶりは描かれているとは思うけれど、もう少し負の印象に結びつかない部分の彼らの凄さが描かれても良かったのにとも思う。もっとも、本書に描かれているエクソンモービルという恐るべき規模の会社の徹底ぶりは、想像していた以上のものであったこともまた事実だけれども。
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この一冊石油の帝国 スティーブ・コール著 エクソンモービル 強さの内幕を活写
2015/2/8付日本経済新聞 朝刊
民間石油会社として世界で最大・最強のエクソンモービルは、長年、秘密のベールに包まれてきた。本書は、ピューリツァー賞受賞記者の著者が、その実像に迫った大作の翻訳本である。
主に1990年代から最近まで、同社が世界を舞台にどのように事業を進めてきたのか、この間の2人の最高経営責任者(CEO)に焦点を当て、調査報道のタッチで描かれている。アラスカ沖原油流出事故から始まり、モービルの買収、新生ロシアの資源開発を巡るプーチン大統領との交渉、西アフリカの油田開発で遭遇したテロの脅威などに、経営トップがどう対処してきたのか、その舞台裏が明かされている。
エクソンモービルの真骨頂は、原油価格が高騰しても低迷しても、常に高収益を上げてきた点にある。しばしば、官僚的で独善的だと批判されるが、その強さの源泉は、厳格な規則と管理手法を徹底させ、絶え間なく効率性を追求する企業文化にあることがよく分かる。
一方、石油企業の宿命は、長期的に埋蔵量のリプレース(補填)を行わないと、ジリ貧に陥ることである。毎年の生産量を上回る新たな埋蔵量の追加がなければ、ウォール街から厳しい評価を受ける。エクソンモービルが、中東やアフリカ、ロシアなどの産油国で、誘拐や内戦、現地政権内の権力争いや住民の人権侵害訴訟など、様々なリスクに直面しながらも、資源確保に奔走する最大の理由がそこにある。その際、共和党政権時代には、ホワイトハウスとの緊密な人脈を活(い)かした資源外交が重要な役割を果たしてきた。
同社が2009年末に米国のシェール開発企業XTOを総額410億ドルで買収に至った内幕や、社内外で強まった高値買いへの批判など、シェール革命の実態を知るうえでも参考になる。また、長年、地球温暖化を疑問視してきた同社が、オバマ政権の誕生を契機に、環境税の導入支持へと軌道修正した背景が克明に描かれており、興味深い。とくに、議会やホワイトハウス、シンクタンク、環境保護団体などへのロビー活動は、米国での政策決定のプロセスを知るのに役立つ。
シェール革命によって、今世紀もかなりの期間は石油とガスの時代が続きそうだ。エクソンモービルのプリズムを通して最新の世界エネルギー事情を知ることができる本書は、日本のエネルギー戦略を考えるうえでも多くの示唆が得られる。
原題=PRIVATE EMPIRE
(森義雅訳、ダイヤモンド社・3000円)
▼著者は58年米国生まれのジャーナリスト。ワシントン・ポスト紙の編集局長などを歴任。著書に『アフガン諜報戦争』など。
《評》日本エネルギー経済研究所研究顧問 十市 勉
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かなり長かったけどおもしろかったです!
エクソンモービルの1980年代くらいからの話なんですが、かなり細かく書かれていてよかったです!
長くて細かいので途中読み流して覚えてないとこも多いです。
企業文化が一貫していて厳しく管理されているところはビジョナリーカンパニーの内容と通じるところがあたように感じました。
自社のベストプラクティスにこだわって採算性のいい投資に集中しすぎるあまり、政治的に不安定な国の油田開発が遅れてモービルを買収したり、
シェールガスの開発の開発に遅れてXTOを買収したところはイノベーションのジレンマの内容と通じていたように感じました。
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221頁上段末「音楽評論家がリチャード・ワグナーについて述べた……」
このあとまたドイツの音楽家である「バック(Bach)さん」が登場するかも知れない。
なるほど,一貫している。
260頁:〔ロシアの〕オリガークス(新興企業家)
408頁:〔ベネズエラの〕ヒューゴ・チャベス
******
392頁:アルン・ガス田。 この「・」を93頁以下のところでもつけてほしかった。ネットで調べる手間がはぶけたのに。
447頁:より破綻的なシナリオは……
何度か,この「破綻的」という表現がでてくるが,わたくしの語彙にはないので,どうもしっくり意味がつかめない。ネットで調べてみるとbreakthroughが原語なのかも知れない。とすれば,いままで考えられなかった技術が創出されて,石油の代替品が発明され,石油会社は破滅的なダメージをこうむる,ということを,この「破綻的」は意味しているのだろうか。
507頁:オビアンに対する組織的で政治的な反対勢力は無きに等しく,本物かでっち上げかを問わず,陰謀を企てた者を時折,裁判にかけ,投獄し,処刑した。
主語をくれ。あるいは,受身にし忘れたのか?
600頁下:沖合掘削が行われていたが……是非を争われた。
是非/当否が争われた? 是非が問われた?
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国際NEWSで目にした出来事の背景はこうだったのか。国家よりも大きな企業が国家を相手に交渉して工作して仕事を進めていく。スケールが違う。
国際線の機内で読むと、より気持ちが入り込みます。
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[純私的巨像]民間石油会社として世界最強とも言える規模と能力を誇るエクソンモービル。とてつもなく巨大なこの「帝国」が20世紀末から21世紀初頭にかけて、世界中でどのような活動を行ってきたかを、徹底的な調査に基づいてまとめた作品です。著者は、ピューリッツァー賞を複数回受賞しているスティーブ・コール。訳者は、帝石で自らも石油事業に関わった経験を有する森義雅。原題は、『Private Empire -Exxonmobil and American Power-』。
とにかくスケールがデカく、あらゆる照射角からの精読に耐える一冊。比類なき国際資本が世界情勢にどのように影響を及ぼすかの一端が垣間見えるとともに、石油をはじめとする天然資源をめぐる人間ドラマの数々にしばし呆然とさせられました。エクソンモービルが何故にトップランナーでいられるのかについても言及がなされており、その分厚さにたじろいでしまいそうになりますが、ぜひエネルギーに興味のある方にはオススメしたい良書です。
エクソンモービルとアメリカ政府の距離感に関する指摘も非常に興味をそそられる点でした。最低でも数十年単位で経営を考えている同社にとって、選挙の影響等から数年単位で政策が変わりうるアメリカ政府は、大筋において信頼足りうるパートナーであり、ときに「救世主」であるものの、決定的に同社の根幹に関わる件では違う道を歩むことができるという点が強く印象に残りました。そしてその「違う道を歩むことができる」というところに帝国と称しても遜色ない力が表れているように思います。
〜エクソンモービルは、世界のどこにおいても自分たちのルールは自分たちで書くのである。〜
大著の翻訳、本当にお疲れさまでした☆5つ
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エクソンの30年前のアラスカでの原油流出事件からスタートし、モービルとの合併、Bpのメキシコ湾の事故までの道のりを淡々と俯瞰する。
経営的には、利益率の向上と埋蔵量の増大が中心に据えられてきた。そのせいで流出事件はおこったが、そこで学んだことにより、BPとは違う緻密な企業文化が確立した。一方その文化は閉鎖的なもので、地球温暖化に対する否定的な態度(一方BPはBeyondPetroleumとまでコピーを作った)、フロンティア諸国での政治や軍との癒着や非合法的な活動の疑いが分かる範囲で記載される。一方政治との結びつきはアメリカでは限定的なようでズブズブという印象は持たないが要所要所でロビー活動やチェイニーとの関係を使ってようではある。
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元ワシントンポスト記者による、エクソンモービルの物語。精緻な取材に基づく大作で、エクソンモービルの考え方や決断の経緯が理解できる。登場する人物は多彩で大物が多く、国家との関わりもよくわかる。巨大石油企業とはどういうものかを理解できた。
「原油流出に対応するために実行すると決めたことが正しいことであってもなくても、とにかく素早く実行しなければならない」p16
「エクソンは1919年ジョン・ロックフェラーの独占企業スタンダードオイルが解体されて生まれた。80年後の今もエクソン幹部たちがしばしばワシントンとの関わりを避け腹の底に敵意を抱いている理由は、この痛みが今も克服されていない、ということだった」p19
「エクソンが地元の政治や安全保障に対し及ぼす影響力はアメリカ大使館のそれを上回った」p19
「フォーチュン誌はエクソンを、エクソン・バルディーズ号の事故前にはアメリカ第6位の最も尊敬される企業に挙げていたが、事故後は110位に転落した」p33
「わが社は多額の補償金を払った。わが社は自発的に行動した。そしてわが社はいつまでも払い続けるわけにはいかない。わが社は言わなければならない、これで全部だ、と」p33
「スタンダード・オイルは、そのピーク時にはアメリカの市場の90%を支配していた」p35
「同業他社の幹部たちはエクソンの幹部たちを、情け容赦なく、孤立的で、不可解な、しかし同時に、ロックフェラーが拠り所としたプロテスタントの牧師補佐のように道徳的であるとみていた。「我々は煙草を吸わない。我々はガムを噛まない。これらを嗜む者とは付き合わない」」p36
「エクソンでは、手続きを強調し正統なものを重んじる文化があり、細部にこだわる者が卓越した権威を獲得した。エクソンの採用は、規則に抵抗感のない人々、喜んで生涯一つの会社に勤め、仕事のために転勤することを厭わない人々に偏った」p39
「規律ある結果を得るための唯一の方法は、やりすぎるくらい徹底することだ。つまり、机をたたき脅しをかけなければ、これだけ大規模な従業員たちは易きに流れ、凡庸な結果しか残せない」p46
「会社が縮んでいると見られないためには、毎年10億バレル以上の新規埋蔵量を発見し帳簿に載せていかなければならなかった」p55
「レイモンドは、国務省をエクソンモービルに協力的な政府機関とはみなしていなかった」p141
「(大使館からの報告)エクソンモービルなど一握りのアメリカ石油会社は、たいていの場合、業界固有の問題は自分たち自身で処理しようとする。もし彼らの努力だけで問題解決に至らず、もしくは問題が悪化した場合は、素早く我々に行動を求めてくる」p141
「OPECメンバー7カ国、アルジェリア、イラン、イラク、クウェート、リビア、カタールそしてUAE、いずれもが非民主的で、人権保護が貧弱で、経済的な多様性に乏しい。その他3カ国、インドネシア、ナイジェリア、ベネズエラについては、名目的に民主制ではあるが、広く腐敗し人権保障の貧弱な国々である。アンゴラ、アゼルバイジャン、カザフスタンは、腐敗、拙劣な統治、人権侵害のモデルになりつつある。エクソンモービルは、これらの多くの、人権保護が足りないと判断された各国で操業し、その政府に協力してきた」p220
「(オニール財務長官)資本は臆病者であり、資本は自分に冷たい場所には行こうとしない」p254
「アメリカが1日に消費する2000万バレルの石油のうち3/4は輸送用燃料だった」p307
「我々は常に正しい。ただ、我々は誤解されていたのだ」p335
「世界銀行の現地代表とは異なり、エクソンモービルのカントリーマネージャーたちは、チャドのデビー大統領の期待に上手く応えることができた。「彼らは最初に助けに来てくれた。問題がある時はいつも、腰を下ろし、議論に応じてくれる。彼らには我々以上の経験があると承知している。彼らがこの地に利益をもたらすために来てくれていることもわかっている。我々と彼らの利益は結びついている」p364
「裁判所は大統領の外交政策に軽々しく干渉すべきではない、という考え方は、アメリカの確立した法理となっている」p398
「エクソンモービルはどこにあってもその存在から生ずる影響について考慮しなければならない」p401
「(赤道ギニア)このような国で、政府高官やその親族とビジネスを行うことなく事業を展開することはほとんど不可能に近い。しかし、それでもなお、倫理的にビジネスを行いアメリカ法と地元法に従うことは可能である、と考える」p528
「世界の気候の将来を決定付ける要素としては、中国の産業化のような変革の方が、コペンハーゲンで行われたような会議よりもはるかに意味がある、とエクソンモービルのアナリストは結論付けた」p550
「新たな石油を発見しようという意欲が、あらゆる大手石油会社をリスクの高いフロンティアへと駆り立てた。資源ナショナリズム、特権的に保護された国営石油会社の台頭、そしてエクソンモービルのような超巨大会社の埋蔵量リプレースの苦闘、これらすべてが彼らを、大水深へ、あるいは悲惨な紛争にまみれた弱い国々へ、そして低温が従来型の流出除去方法を無効にしてしまう北極海へと導いた」p609
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600ページもあるので、前半でダレてしまいました。
石油関連の知識とか、中東情勢とかに詳しいと、楽しく読めると思います。
私のようにエネルギー関連の知識に乏しいと、途中でダレてしまうかも知れません。
でも、とっても良い本です。後日、またトライします。
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エクソンモービルという巨大な石油企業のことがダラダラダラダラ読める(笑)シェールガス以降、状況は大きく変わったのでほとんどが大昔の話にはなるが、同社が世界経済、政治にあまりに大きい影響を及ぼして来たことがわかるので読んでおくべき!
埋蔵量リプレースを維持しないと金融市場での評価が下がるため、油田開発を止められない同社。インドネシアのアチェや赤道ギニア、ナイジェリア、ベネスエラ、ロシアなど問題だらけの国でも資源があるなら乗り込んで行く。
座礁事件や誘拐事件を通して危機管理、社員の健康管理に過敏になった同社ではオフィスでの小さな切り傷にも報告が必要になり、危険な趣味は上司からの苦言の対象になる。(大きすぎる特殊な会社ってこうなってしまうのかな)
嫌われ業種(社員が自覚しているらしい)での広報宣伝の仕事は不祥事会見で「ノーコメントです」と言うこと。CMはあまり重視しない。良い思いつきで美術展を主催することを始めたら、レセプションパーティではアーティストたちからは(短時間を条件にマイクを握らせたら)喜ばしくない演説が。
ナイジェリアの海賊について政府に支援を依頼したら軍からは「アメリカ軍は国外で特定の産業を保護するためにその国の領域を侵すことはしない。そのエリアで安全にビジネスをしたければその国の政府に頼むべきで、それでも安全が確保できないと判断するなら撤退の経営判断をすれば良い」と極めて軍事的なプロフェッショナルとしての回答をしたこと。アメリカ軍は世界中に派兵し、戦争もしているが、それだけにそのためのルールは少なくとも日本よりはしっかりしているのだ。
洋書にありがちなどこまでが取材でどこまでが推測かわかりにくい書き方が読みにくく、1回挫折してほっておいた本。原書が出たのが2012年だから遅すぎた感はあるが夏休み読書。
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とばしとばしで読んだ。
エクソンモービルの慣習、人事、事件等をつらつらと書き綴った様な内容。
エクソンの歴史書みたいなもの。
2020/9月時点で歴史的にも株価が低迷しており買おうかどうか迷っていたので指針になればと思って読んだかあまり参考にはならなかった。てか買うのは止め。
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スティーブ・コール子の著作ということで手にした本書。
中東以外全くの門外漢の私には、読み進めるのに少し時間を要してしまった。
訳者は長年石油業界に身を置いていらっしゃった方ということで、技術用語や業界常識をふまえて訳されていたことは伝わってきた。一方で、日本語としての完成度はもう少しだったように感じられ、意図を理解するのに何回か読み直さなければいけない部分も結構あった。