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暗色コメディ(文春文庫)

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紙の本

心がざわざわ『暗色コメディ』(ミステリ)

2010/03/25 12:00

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る

やっぱり連城ミステリは心がざわざわする。

読み進めても読み進めても、最後の数ページまで何が起こっているのかわからない不安感。自分の立ち位置が定まらず、真相を知りたくてページをめくる手が止まらない。好きな言葉は「安定」のわたしだけれど、連城作品特有の「ざわざわ」感、好きだなぁ。

物語の舞台は精神科。幻想に支配された人々が交錯する場所(もちろん、そんなひとばかりが通院しているわけではないので、あしからず)。もう一人の自分を目撃してしまったという主婦。自分をひき殺したはずのトラックが消滅してしまったという画家。一週間前に死んだと妻に告げられた葬儀屋。妻が別人にすり替わっていたと訴える外科医。この四人が抱える幻想と狂気が重なり、大きなカタルシスを生む。

例えば葬儀屋を例にとってみると…葬儀屋の妻は葬儀屋が一週間前に死んだと言っている。そして死して尚、目の前に現れる夫に「成仏して」と訴える。夫は夫で、自分のことを死んだと言う妻は狂ってしまったのだと思っている。真実を言っているのは妻か夫か…物語が他視点で展開されるので、なかなかわからず疑心暗鬼になってしまう。何が起こっているの?真実はどこ?読者は現状を把握しようとしても叶わず不安になる。

この不安感は快感に近いものがあるかもしれない。なぜなら…連城作品がもっと読みたいと思っているのだもの。

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