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印象派の4人の画家をめぐる短篇集。 絵画にあまり詳しくないので出てくる作品をネットで確認しながらの読書となった。
これという大きな事件が巻き起こる話ではない。画家たちを支えた人々の姿を通して、絵を描くことの情熱が表現される。
どれもいい話だが、大きな感動はなかった。
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美術関係者によるあとがきには
マグノリアのマリアやブランシュを
芸術の犠牲であるかのように書いてある。
果たしてそうか。
かつて生贄として捧げられた家畜。
彼らは自ら望んで
神の祭壇にその身を横たえたわけではない。
マリアやブランシュ、タンギー爺さんらは
画家と画家が生み出す新しい芸術の光に
その画家と同じ時代、しかも
画家と言葉を交わせる恵まれた中で
感応し、溺愛し、尊敬した。
自らがその素晴らしい芸術の光の
一部であることを心から望んだに違いない。
犠牲とは他者の意志による強制であり
他者の利益のために行われるもの。
彼らの行いは、自らの切望の果てにある。
キュレーター原田マハにしか書けないのである。
画家に関わる事実への正しく深い知識と
そのことへの理解と敬意を持たぬ者には
美術史と小説の境界線を見定めることなど
できるはずもない。
この小説に描かれたすべてのもの
時代を変えた画家たちを支えたすべての人が
私にはうらやましい。
芸術の光の中に生きることなど
望んでもできることではないのだ。
原田マハが芸術を小説で語るとき
ほかの小説には決して見られない輝きを放つ。
酔わせてもらいました。
モネと共に豊かな食卓を囲んで飲む
カルヴァドスの芳醇な香りに。
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マティス、ドガ、セザンヌ、モネの姿を、それぞれの近しい人を通じて描かれた短編。
作中に出てくる作品をその時々に見ながら読むと、より一層彼らの人生や生き方、作品への想いが溢れてくる。
フィクションかもしれないけれど、史実に基づいた想像って意外と真実だったり、、?と思ってしまうほど。
絵画を見るのは好きだけど、ほとんど知識のない私にとっては、どの短編も手の届かない「あの」芸術家たちとの触れ合いに、なんだかドキドキしてしまった。
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印象派創成期の画家と画材屋を主人公にした短編集。
原田さんというとベタな話が多い(悪い意味では無く、私はそこが好きなのですが)のですが、 実在の人物を主人公にしているためか、随分と大人し目な物語です。突出したものは無いのですが、原田さんはこんな話も書けるんだと感心した次第。
現実との差がどの位あるのか判りませんが、無名で貧窮していた印象派の画家たちの知らなかった姿が活き活きと描かれていて、興味深く。
小品とは思いますが、気持ちよく読めました。
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アンリ・マティス、エドガー・ドガ、ポール・セザンヌ、クロード・モネを題材にした4つの短編です。それぞれの画家に関わりのある、4人の女性それぞれの視点から、画家の姿が浮き彫りにされていきます。
マティスのことは、彼に仕えた家政婦が。ドガについては、親交のあった女性画家メアリー・カサットが。セザンヌに関しては、あのタンギー爺さんの娘が。そして、モネにおいては、義理の娘ブランシュが語ります。
ここでは、絵画に関する思想や技術、芸術家の苦悩などについて、直接描かれることはありません。全体に穏やかな文体で、女性の優しいまなざしを通して物語は紡がれています。
美術史をもとに描かれたものではあるのでしょうが、もちろんこれは小説ですから、ほとんどのことは作者の想像、創り話でしょう。それにしても、絵画好きにはたまらない一冊です。画集を脇に置いて、読んでみるのもイイかも。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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家政婦マリアは、アンリ・マティスに美的センスを見込まれ、彼に仕えることとなる。マティスの寛大な性格や、彼と親しかったピカソとの関係も描かれた「うつくしい墓」
並外れた才能を持つ、アメリカ人女性画家メアリーは、ドガの万人には受け入れられ難く、多くの人々が眉をひそめたくなるような作風に惹かれるが、若いバレリーナをなんの躊躇もなくモデルとし、消耗させていく様に違和感を覚える様子を描いた「エトワール」
駆け出しの画家の作品と引き換えに絵の具を気前よく提供する「タンギー爺さん」。セザンヌを始めとする画家たちとの関係を、タンギー爺さんの娘の視点から描かれている。
「ジヴェルニーの食卓」では、倒産した夫エルネストと別居することとなったアリスとその子供たちと、夫の元お得意様モネと間に芽生えていく愛情が描かれてる。
フィクションながらも、同じ印象派画家として芸術に新たな風を吹かせた4人の画家を巧みに描いたストーリー。
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記憶の中に残り続ける限り
その人は永久に生き続ける。
夢中でもがいた日々のことは
永久に慈しまれる。
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初めて本屋で見た時、表紙のあまりの美しさに目が離せなくなった。とりあえず欲しい!と衝動買いしたけど、買ってよかった。
実在した人物をもとにしたフィクションだけれど、本当にみんなこんな風に生きていたのではないかと思わされるものばかり。どの画家も人間味に溢れているし、経済的に困窮していたり、日々悩みながらも信念のもとに生きている姿はリアリティに溢れている。
4つの短編のうち、特にうつくしい墓とジヴェルニーの食卓が好き。うつくしい墓はマリアのマティスに対する深い敬愛の念に読んでいると胸がいっぱいになる。ジヴェルニーの食卓は、ブランシュのひたむきさとモネの庭の美しさ、作品の完成までの苦労などがありありと伝わってくる。
それから、この本を読了した日に京都のモネ展へ行って、印象、日の出や睡蓮などモネのたくさんの作品を見た。
この小説を読んでから見ると余計に感慨深いものがあった。何より、2点展示されていたブランシュ作の絵画を見てしみじみ感動できたのはこの小説のおかげ。
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文章が瑞々しい。美術のことなんて全然知らないのに、どの画家も親戚の叔父さんだったかのように親しみを覚える。
印象派と揶揄されていた時代から、巨匠と崇められるようになった時代まで。越えられない壁の向こう側にいる画家たちへ、敬意と愛情を持って傍にいた人々の眼差し。
美術に精通し、それを物語へと昇華させる筆者の力量が本当に素晴らしい。
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いろどり。理想。ひかり。印象派の絵のような短編集。小説だから仕方ないけけど、少し美化されているように感じた。絵の描写も、せっかく画家たちに近い周囲の人々の視点から描いているのだから、もう少し綿密な描写を期待していた。
けれども、画家たちに親しみがわき、美術館に行きたくなったのも事実。
これはこれでいいのかもしれない。
あと、表紙のデザインが好き。『睡蓮』いいなあ。
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あらすじ(背表紙より)
ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシュがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が映っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)新しい美を求め、時代を切り拓いた芸術家の人生が色鮮やかに蘇る。マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌら印象派たちの、葛藤と作品への真摯な姿を描いた四つの物語。
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印象派の巨匠たちの物語。
巨匠なだけにその人柄や様々なエピソードについては多くの研究があり、誰でも目にすることができる。
そういう情報を集めて事実と食い違わないように食い違わないようにそろそろとつなげているだけなので、目新しい発見も大きな感動もない。
物語というよりは、巨匠好きな人の作った同人誌という感じ。
絵画の美しさを表現するための語彙はとても美しい。
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いままでも君は、成功しすぎることの危うさと、自信喪失の両方を何度も経験してきた。それは、君が勝者となるための条件だったとも言えるのではないか。
言うは易く、行うは難し。けれど、君は誰であろう、モネではないか。
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まるでそこで見ている傍観者になったような、そんな錯覚。
言葉と言葉の間から、溢れる色彩に圧倒される。
フィクションだとわかっていても、そこにある史実にエッセンスを加えて広がる空間が、とても素晴らしい。
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巨匠たちの創作活動というものを垣間見ることができ、知らない作品については、画像を検索して知らなかったことを知ることができて面白かった。
モネのジヴェルニーの庭は好きなので、その描写の美しさに引き込まれた。
でも、特にオチもなく、淡々と進むので、物語としては、いまひとつなのが残念。