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紙の本
「ユージニア」――その真相は?!
2010/10/17 14:37
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あまりよいご感想をきかなかった本書。みんなそろって「うーん」っておっしゃるものだから逆に興味をそそられて読んでみた。といっても、その前評判を聞く前に一度手に取ったことがあって、そのときは閉塞的な雰囲気と文章から読みづらさを感じてドロップアウトしていたのだけれど。
しかししかし、意を決して最後まで読んでみたら!!!けっこうおもしろかったのだ。確かにラストは明確ではない。曖昧模糊とした終わりが苦手な方はがっかりするかもしれない。でも…雰囲気を重視するわたしにはそれほど不快なラストではなかった。いや、むしろこれくらの余韻があったほうがいいのでは?と思ったくらい。あまり「曖昧さ」は感じられなかった。
街の名家・青澤医院で行われた米寿のお祝いでお届けものの飲み物を飲んだ出席者のほとんどが亡くなった。生き残ったのは相澤緋紗子という盲目の少女ただひとり。大量無差別殺人か、と世間を騒がせた事件から約十年――第一発見者のひとりで大学生となった雑賀満喜子が世に出した当時の関係者の証言をまとめた書物『忘れられた祝祭』がベストセラーとなる。そして更に十数年――ひとりの人間がまた当時の関係者を訪ねていた。
物語は、ある人物の雑賀満喜子へのインタビューから始まる。ストーリー進行は「ほぼ」独白形式。一人称で当時の関係者たちが事件を振り返る。この点、『告白』や『毒殺魔の教室』と通じるところがある。そしてこの三作品はよく比べられる。
確かに『毒殺魔の教室』を読んだとき、「『告白』と似ている」と感じた。しかしこの『ユージニア』は、『告白』とも『毒殺魔の教室』とも「異なる」ように感じる。
『ユージニア』、『告白』及び『毒殺魔の教室』――どの作品も閉塞感はある。『ユージニア』と『毒殺魔の教室』が何十年も昔の「過去」の事件の真相を追究しているのに対して、『告白』で取り上げられているのは「現在」の事件。その分『告白』には緊迫感があった。そして『毒殺魔の教室』でも、現在において過去の事件の関係者と直接対峙する場面があったので、緊迫感はあった。しかしその緊迫感が本書では感じられない。
本作で感じるのは、息苦しささえ感じるほどのとてつもない閉塞感だ。そしてもうひとつ、不安感。閉塞感は独白で進行するストーリー展開にはつきもののように思う。しかし不安感――これは、本作独特のものではないだろうか。
本書では、「ほぼ」独白で物語が進む。しかしところどころ「独白(一人称)」ではない章が存在する。ストーリーが三人称で描かれているのだ。そしてその章では、生き残った少女の名前は「青澤緋紗子」ではなく「相澤久代」となっている。どちらも「ひさちゃん」と呼ばれてはいるのだけれど、「緋紗子」に慣れた頃に唐突に「久代」が登場するものだから、読者は混乱してしまう。
おそらく、この三人称進行の章は雑賀満喜子が書いた『忘れられた祝祭』なのだろう。現在のインタビュアーによる記述と、過去のインタビュアー(雑賀満喜子)による記述の混在――これによって読者は自分の立ち位置を定めることができなくなってしまう。それはまるで、平衡感覚が失われた状態にしている。
なぜそのような事態に陥るか――それはきっと、主導権を作者に握られているからだろう。読者は自分「が」主体にもかかわらず主導権を手にすることができない。そして更には、そのことにも気づきさえしない――これが、不安感の正体だ。
作中作『忘れられた祝祭』を挿入するならばそのことを明示すべきではなかったか…とも思ったのだけれど、恐らくこれも著者の「狙い」だろう。ふたつの「過去と現在」を巧妙に混在させることで読者の平衡感覚をなくそうとしている――オソロシイ作家だ。
ラストに関していてば…確かに答えは明確に記されてはない。ひとによっては「曖昧」、もしくは「消化不良」と感じるだろう。しかし…
本書の中である人物が次の言葉を語っている。
時々考えるんですよ。
理解できないというのは罪なのか、って。
親でも子でも、きょうだいでも、理解できないものはできない。それっていけないことなのか。理解できないならできないと認めて、あきらめることだって理解の一つなんじゃないのか。そんなことを考えるんです。
だけど、今日び、世界は理解できないことを許さないでしょう。分からないと言ってはいじめ、得体が知れない、説得不能だと言って攻撃してしまう。なんでも簡略化・マニュアル化が進む。人が腹を立てるのは、理解できないからのことが多い。
本当は、理解できるもののほうがよっぽど少数派ですよね。理解したからって、何かが解決できるわけでもない。だから、理解できない世界で生きていくことを考えるほうが現実的だと思うのは間違いでしょうかね。
本書のラストには、この想いが込められていたのではないかとわたしは思うのだ。
紙の本
わからない…
2023/11/19 18:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ママさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんか、最後まで良くわからない小説でした。
わかる様な判らない様なモヤモヤしたままなんとなく終わってしまったという感想です。
紙の本
よくわからん
2021/09/23 11:04
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
おもしろかったけど、結局のところ、なんなんだ?って感じ。
ちゃんと完結したようにも見えるし、あれ・って感じにも思えるし。
自分の読解力が足りないってことですね。
紙の本
じっとりとした夏
2020/06/06 16:02
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投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
海風を含んだ、じっとりと暑い空気に包まれる。事件も重いし、真相が解明されたような、より謎が深まるような、どんよりした雰囲気。
すっきりしない結末で、もやもや感が残るが、これはこれで良いんだろうな、と思ってしまう。
百日紅の白や赤,青い部屋などの色彩や,潮騒の音が鮮やかで、印象的だった。
電子書籍
グレーゾーン
2017/12/26 10:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者本人が「黒だけでも白だけでもない、グレーゾーンを描きたかったんです」とあとがきのような「ユージニアノート」に書いているだけあって、事件の真相もキーパーソンである青澤家唯一の生き残り・緋紗子のキャラもグレーのままですね。それが意図されていることであっても、どちらかというとあまり好きにはなれない感じです。
また、第3章「遠くて深い国からの使者」では同じ事件が、10年後に事件についてのノンフィクションらしきものを書くことになる少女・雑賀満喜子(さいがまきこ)の視点で描写されているのですが、登場人物の名前が変えられており、このピースが全体のパズルのどこに位置付けられるのか結局最後まで分からずじまいでした。彼女のほんの一部なのでしょうか?
紙の本
暗く重い
2015/06/03 21:28
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投稿者:レオボー - この投稿者のレビュー一覧を見る
大量毒殺事件から数十年後、事件を知る人達がそれぞれの視点から事件を語っていますが、内容が内容だけにかなり暗いトーンで、読み終わった後もスッキリしない何とも言えない気分になりました。