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「屍者の帝国」の世界観を8名の作家か共有して物語を進めていくというコンセプトで纏められた非常に面白い一冊です!
2020/06/16 12:40
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、「屍者の帝国」の世界観を8人の作家が共有して話を進めていくというコンセプトのもとで纏められた一冊です。同書の作品群には、様々な他の作品やそうした作品に登場する人物が登場し、なかなか面白く、一度読み出すと止まりません。私個人的には、藤井太洋氏の「従卒トム」が印象に残っています。アメリカ南部の綿花農家で働く奴隷のトムといったら「アンクル・トムの小屋」は外せないのですが、舞台はなぜか戊辰戦争前夜の日本となっています。屍者とトムと勝海舟が遭遇するという泣ける感動作です。
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お買い得です
2016/01/11 18:32
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投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この手のシェアードワールドのアンソロジーは正直あんまり期待していなかったのだが、この本は面白かった。
一つ一つの作品が水準以上で、なおかつ「そう来たか!」感があふれていて、ホントにお買い得感満載だ。
中でも、高野史緒の『子ねずみと童貞と復活した女』のはっちゃけぶりにはもう抱腹絶倒。「もっとやれ。」と拍手喝采ものである。
その他の作品も、単品で読むに十分な力作ばかり。
それもこれも伊藤計劃の天才的な発想(屍者ワールド?)があったからこそ。返す返すも彼の早逝が惜しまれる。
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歴史改変>テクノロジー
2015/10/30 01:28
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作は伊藤計劃「屍者の帝国」の世界観をベースにしたアンソロジーです。同時期に刊行された「伊藤計劃トリビュート」は近未来テクノロジー色が強かったですが、本作は歴史改変と屍者化技術をベースにした作品が多かったです。特に藤井太洋の「従卒トム」と北原尚彦の「屍者狩り大佐」は原作の良さがしっかり継承されていて、安定感のある良い作品でした。もう原形ないじゃん…と言いたくなるレベルの作品も中にはありますが、それはそれで楽しめたので全体的には満足できるアンソロジーでした。
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『NOVA+』の第2巻。テーマは伊藤計劃・円城塔の『屍者の帝国』。
『屍者の帝国』と同じく、『屍者』がいる世界を描いているが、アプローチの方法が様々で読み応えがあった。久しぶりに高野史緒の短編を読めたのも嬉しいところ。その『小ねずみと童貞と復活した女』のぶっ飛びっぷりは収録作で群を抜いている。原作の『屍者の帝国』と同じように、著名な古典作品の登場人物や、実在の人物を登場させた作品が多かったが、ここまでてんこ盛りにしたのは『小ねずみ〜』だけだった。
収録作家の中で初めて読んだのは仁木稔と坂永雄一。仁木稔は文庫になったら読んでみようと思っていたので、名前は知っていたのだが、坂永雄一は全く知らなかった。経歴を見ると創元SF短編賞出身で、まだ余り作品を発表していないらしい。ちゃんと読んでみたいので早く何処かで1冊に纏まらないものだろうか……。
巻末には円城塔のインタビューも掲載。確か公開された時にHPで読んだ記憶があるが、改めて読むと興味深い。
内容とは関係ないが、そろそろ『NOVA』第1期も買っておいた方がいいのだろうか……。
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屍者の帝国の世界観を元にした短編集。シェアードワールドというらしい。二次創作みたいなもの?
なかなか良質な小編が多かったなぁ。宮部さんの語りはやはりうまい。山月記やくまのぷーさん、アルジャーノンに花束をなど他作品のネタを混ぜ混むのが流行りなのかお手前なのか?とりあえず好き勝手ぶちこんどけーみたいなノリもある。
特に好きだったのは「神の御名は黙して唱えよ」と「ジャングルの物語、その他の物語」かなぁ。宗教観や文体・展開など、伊藤先生へのリスペクトの現れ方が好み。
編集者や円城先生の裏話なんかも楽しく読めた。ノリ的には同人的な、商業性の薄い話だったんだね。そりゃ賛否あるだろうけど、そういう悪巧み的なノリは好きです。
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お勧めはイスラム神秘主義に絡ませた話の「神の御名は黙して唱えよ」とワトソン・フライデーたちも活躍する「屍者狩り大佐」
伊藤氏ためのアンソロジーなのですが、内容も充実していて楽しかった(#^^#)
もし伊藤氏が存命していたら(言っても詮無いことなんですが)、どんなテーマで作品を書いただろうか。
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円城搭のインタビューが興味深かったなぁ。宮部みゆきの意外なアプローチが面白かったし、従卒トムが好きな感じ。
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伊藤計劃の「屍者の帝国」は完結しなくても、受け継がれる世界観は生き続ける。従卒トムは思いもつかない展開、いきなり楽しめました。屍者、ゾンビはこれから、ますます存在感を増していくのでしょう。
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映画の公開に合わせて出版されたアンソロジー。伊藤計劃さんが書いたエピローグに円城氏が長編作品として仕上げた「屍者の帝国」。この作品をもとにしたシェアード・ワールドものである。屍者が登場するのはすべての作品で共通しているが、役割や生者との関わりが異なる。この作品集を読んで、改めて「屍者の帝国」を読みたくなった。円城氏のインタビューも屍者の帝国を読む上で役に立つだろう。面白かったのは、「小ねずみと童貞と復活した女」「屍者狩り大佐」「海神の裔」。
以下、個別作品の感想。
◎従卒トム(藤井 太洋)
江戸城無血開城とアンクル・トムと屍者を絡めた物語。奴隷だったトムであるが、屍者になってしまっても元主人への忠誠が変わらないところは日本的で素晴らしい。江戸時代の武士が持つ主君への忠誠心ともリンクする。
◎小ねずみと童貞と復活した女(高野 史緒)
読みはじめは、笑えるという意味の面白さであったのが、エンディングに向けて、物語自体の面白さを感じるようになった。驚きの結末が見事。
◎神の御名は黙して唱えよ(仁木 稔)
宗教(特にイスラム教)と絡めた屍者の物語。あまりのめり込めなかった。
◎屍者狩り大佐(北原 尚彦)
「屍者の帝国」のパスティースュであり、シャーロック・ホームズのパスティースュでもあり、その他の作品のパスティースュでもある。こんなことは関係なく単純に面白い。
◎エリス、聞えるか?(津原 泰水)
コミカルであるが、どこか哀しげな感じがする物語。いくつもの作品で、屍者は死んでいるのか生きているのか議論になるが、本作品を読むと、屍者は生きていてくれと思いたくなる。
◎石に漱ぎて滅びなば(山田 正紀)
夏目漱石が登場する英国での屍者の物語。似たような舞台の「エリス、聞えるか?」が哀しい感じがするのに対し、こちらは冒険活劇といっていいと思う。登場するものが現実にあるものとリンクして、「なるほど、こうきたか」とくすりと笑わせる部分もあり、楽しく読めた。
◎ジャングルの物語、その他の物語(坂永 雄一)
前半はゆったりとした展開でなかなか物語の中に入って行けなかった。それが最後はトントントンと展開し、スピード感があって楽しく読めた。物語の背景にある別の作品をよく知らないからなのか、あまり面白味を理解できなかった。作品末に挙げられている本を読めば楽しめるようになるのだろうか。
◎海神の裔(宮部 みゆき)
いい話だ。屍者が漁村でひっそりと活躍する話はほっこりしていい感じ。おばあさんの証言という形式なのもいい。
◎『屍者の帝国』を完成させて 特別インタビュー(円城 塔/述)
『屍者の帝国』が書かれた背景を作者本人が語るインタビュー。円城氏の苦しみや『屍者の帝国』と伊藤計劃の関係を知ることができる。
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屍者の帝国の世界観で、8人の作家陣が新作短編を競作する書き下ろしアンソロジー。
様々なジャンルで屍者の物語を紡がれている。
ほとんどの作品で感じられるのは、屍者を運用しているのが当たり前の世界となっていて、現代のロボットが日常に広がっていく感じとダブって面白い。
皆んなそうだろうが、中でもやっぱり北原尚彦の「屍者狩り大佐」がワトソンたち一行が出てくる物語でテンション上がる。
他にも宮部みゆきや山田正紀らベテラン陣も執筆していてどれも一読の価値あり。
最後に円城塔の「屍者の帝国」を完成させた時のインタビュー記事も載っていて、もちろん本当は違うのだろうが、「必要以上に思い入れることなく程よく肩を抜きながら」という感じが、よりこの作品における伊藤氏と円城氏二人の想いが表されているようで、なんかジーンとくる。
こういう感じのアンソロジー、他の作品でもやってくれないかなぁ。
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円城塔のインタビューが読みたくて入手したのだけど、どれも割とおもしろく読みました。で、やっぱり宮部みゆきは巧いなあと、おもった。
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妙な言い方だけど、短編集なのに先が気になって一気読みした。どんな世界を見せてくれるのか、どんな有名作品からオマージュしているのか、屍者技術にどう切り込んでいくのか、シェアワールドの醍醐味を味わえた。
どの作品もすべて面白かった。
中でも、藤井さん、仁木さんが特に好きです。
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「屍者の帝国」の世界観を共有したアンソロジー(シェアードワールドというらしい)。津原泰水、たぶん初読でちょっと苦手。坂永雄一、元ネタへの知識がないせいか入り辛い。この2篇がちょっとオイラには合わなくて、後は割と好きな部類。
藤井太洋、戊辰戦争と南北戦争をムリヤリつないでる感はあるけど、そこ含め単純に冒険活劇としてノリがいい。
高野史緒、「カラマーゾフ」を食わず嫌いで読んでないんだけど、他あちこちから拾ったネタをどんどん放り込むスタイルは好きだ。
仁木稔、伊藤計劃本線の匂いが一番する中央アジアもの。伊藤計劃アンソロジーでウィグルの話書いてたのこの人だっけ?
北原尚彦、屍者の帝国のキャラを使いつつ、ホームズノリもありつつ。
山田正紀、何か屍者の設定がこれだけ違う気がする。マジモンのゾンビやん。
宮部みゆき、さすが、上手い。設定自体が「そこへもっていくか」ってのもあるし、破綻させることなくきっちりまとめてるし。
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【収録作品】藤井太洋「従卒トム」南北戦争の屍兵遣い、幕末日本へ/高野史緒「小ねずみと童貞と復活した女」『白痴』リローデッド/仁木稔「神の御名は黙して唱えよ」屍者とイスラム神秘主義/北原尚彦「屍者狩り大佐」ジョン・ワトソン未公開事件/津原泰水「エリス、聞えるか?」森鷗外、屍者と出会う/山田正紀「石に漱ぎて滅びなば」夏目漱石、倫敦の夜/坂永雄一「ジャングルの物語、その他の物語」最終戦争の屍者たちの黄昏/宮部みゆき「海神の裔」終戦直後、思い出の屍者
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※暴力及び流血、性表現の含まれる作品です。
【印象】
復活する"存在しなかった19世紀末"コンピレーション。
ある意味での"祭典感"を味わいたい人にお薦めします。
最後の編が好みでした。
【類別】
小説。短編集。
オカルト的ファンタジー、人物/事物引用あるいは"多次創作"、"共有世界"、歴史改変、少しSFでスチームパンク要素。
史実虚構両方に取材し実在架空区別なく過去の人物組織その他を盛りこんでいます。
【構成等】
8編。
【表現】
地の文は一人称視点、三人称一元視点、三人称視点と様々。
表現も様々であり、一部、方言を用いたものもあります。
【備考】
本書は下記作者による作品との内容関連がある編を含んでいます。
ドストエフスキー、ダニエル・キイス、リドリー・スコット、中島敦、森鷗外、H・G・ウェルズ、他。