電子書籍
いっそ清々しい
2016/10/31 19:04
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:390 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小林多喜二、三浦綾子、原民喜ら12人の文豪の「愛」の物語。長く語り継がれる感受性豊かな作品を著した人々だけに、その「愛」も深く豊かで胸を打つ。そして時にあまりの業の深さにドン引き&ここまで来ればいっそ清々しいと苦笑い。
ストーカー、悲恋、深い絆…様々な「愛」が続き、最後の登場人物、吉野せいさんのストーリーが深い余韻となって残る。晩年「書く」ことから、ひとつひとつボタンを留めるように夫婦の日々を綴る様がじんわりと胸に響き、あたたかな気持ちにしてくれる。
紙の本
思わず落涙してしまうエピソード満載。文学者の哀切な純愛の記録
2022/05/23 19:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひでくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
大正から昭和の作家・詩人・歌人の恋愛、結婚、夫婦の死別等をめぐるエピソードを、本人や知人の作品、証言で綴ったノンフィクションです。副題に「スキャンダル」とありますが、ほとんどは、貧困や結核、戦争や原爆など、過酷な境遇や運命の中で、懸命に愛を育み、作品を紡いだ「純愛」の記録です。
投稿元:
レビューを見る
三浦しをん氏の朝日新聞での書評を読んで購入したく思っているもの。
父親が近松秋江や正宗白鳥が好きで、家には多くの全集等があった事も懐かしく思う。
投稿元:
レビューを見る
12人の作家の恋愛や夫婦としての愛のあり方,三者三様,12者12様で興味深かった.宮柊二の戦場からの手紙には感動した.
投稿元:
レビューを見る
こういう種類の本を文学少女?時代よく読んだものだと懐かしく思う。
近松秋江の私小説、読みたくなった。
吉野せいの夫混沌の「無謀が真実」という言葉が、今の私に響いた。
投稿元:
レビューを見る
尊んでやまない三浦綾子氏のことも書かれていると知り、新聞の書評を切り取ってあった。
調べたら市立図書館にあり、すぐに借りに行きました。こんな本があるなんて。
三浦綾子氏のことは、知っていたことを読み直して改めて素晴らしいご夫婦であったことを思いました。
それよりも、最近読んだ蟹工船の小林多喜二氏のことがびっくりしました。
背景を知り、作品を知ると、より深まります。
まだ読んだことのない作家の方もいますので、これから手に取ってみようと思いました。
投稿元:
レビューを見る
副題〈純愛とスキャンダルの文学史〉から、もっと軽い読み物を予想していたら、最初の「小林多喜二」ですっかりやられた。
小林多喜二といえば「蟹工船」で「プロレタリア文学」で、虐殺されて、というお勉強的知識しかなかったのだけど、この短い章で、初めて一人の人間としての姿にふれた気がした。酌婦(つまり売春婦)だったタキという女性を愛し、貧しい生活の中でお金を工面し身請けする。その後の生活には紆余曲折があり、多喜二の短い生涯でともに暮らした期間はさほどないとはいえ、確かに「永遠の人」であっただろう。タキさんは2009年に101歳で亡くなったが、多喜二について語ることは一切なかったそうだ。その沈黙が重い。
多喜二の母セキさんがまた、忘れがたく心に残った。セキさんは、夫に死なれ苦しい生活をしながら、多喜二が賞与全額と借りた金でタキを身請けすることに反対せず、それどころか家に引き取ることをすすめ、タキがやってきた日は赤飯を炊いて祝ったという。小学校にも通わせてもらえなかったというセキさんの、この優しさに、心を深く打たれた。
多喜二は、音楽が好きな弟のために、最初の給料でバイオリンを買ってやったそうだ。繰り返すけれど、貧しい厳しい暮らしのなかで、である。こういう人たちがいるのだ。貧しさに、心の温かさや美しいものを愛する気持ちを奪われることのない人たちが、確かにいるのだ。それは「希望」としか言いようのない思いを呼び起こす。多喜二の弟は、後にプロのバイオリニストになったそうだ。
全部で十三人の文学者が取り上げられているのだが、そうだったのかと初めて知ることも多く、どっぷり浸って読んだ。近代文学に興味のある人はもちろん、そうでない人も興味深く読める一冊だと思う。
投稿元:
レビューを見る
大好きな梯さんの本。
今回は愛をテーマにした文学史。
最初の小林多喜二さんからもう心をつかまれる。
多喜二さんもお母さんも、本当に優しくていい人だったんだなあ。
あんな形で殺されなきゃいけなかったなんて、ホントに残念。
三浦綾子さんの「氷点」は、学生時代に夢中になって読み、友達と卒業旅行で冬の北海道に行った時も、「旭川は外せないよね!」と外国樹種見本林にわざわざ行ったほど。
タクシーの運転手さんに「なんであんなとこ行くの?」と不思議がられたなあ。
記念文学館は、その当時はまだなかったなあ……。
原民喜さんはお名前は知っていたけど、どんなものを書いた人なのかとか全然知りませんでした。
これを読んで、シャイというか神経過敏な性格も含めて興味が出てきました。
投稿元:
レビューを見る
1961年生まれ、梯久美子さんの「愛の顛末(純愛とスキャンダルの文学史)」、2015.11発行です。「小説を書くというのは、日本橋のまん中で、素っ裸で仰向けに寝るようなものだ」とは、太宰治の言葉だそうです。本書は、小林多喜二、三浦綾子、中島敦、梶井基次郎など12人の作家について、文字通り、いのちをかけた真剣ないきざまを綴ったものです。
投稿元:
レビューを見る
梯久美子さんの「この父ありて」で、作者の「目」に感服してので、他の本も読んでみた。
後半になるにつれて、作品を読んだことのない人が次々と登場するので、記憶に残りにくいのがとても残念。(自分の浅学のせいなのだが)
こんな文学者がいたのだ、という驚きと発掘してくれた作者にやはり感服。
一番印象に残ったのは、寺田寅彦の3番目の妻「志ん」だった。この時代にこの奔放な生き方。この人はかなり深いところを生きたのではないかと思わせる。寅彦が負けているところが微笑ましい。こんなふうに、世に出た夫の陰で豊かで才能ある妻たちが確実に生きてきたのだなあと、その存在にしみじみする。
最後に登場する吉野せいは、夫なき後、76歳にして、その才能を世に知らしめた、「間に合った」女性。この人を最後に登場させるなんて、梯久美子さん、ホントにいいです。