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著者のファミリーヒストリー。
桜田門内で産まれたという曾祖母の中野みわの写真が印象的。目力があり端正な顔立ちの老婦人が着物姿で正座してカメラをまっすぐ見据えてる。
遠戚にあたる山村修氏のエッセイも読んでみたい。
この本を読んで知った”依田学海”興味深し。
理知的でしかも無邪気な人柄、けちくさいところがなく物にこだわらない…。著者も好きにならずにいられない人じゃあないかと書いている。
森鴎外の漢文の先生もしていたらしい。
あーでも中野いちまきもそう遠くない将来無縁仏になってしまうのかぁ。(お兄さんは娘がいて妹は嫁いで、著者は独身)
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これは小説ではありません。
著者・中野翠が父親の遺品整理をしていて見つけた曾祖母の手記。
そこに記された維新前後の一族の人生。
関宿藩の江戸家老の家に生まれた曾祖母。
生まれた場所は桜田門外。
佐幕派だった父親は幼い主君を連れて身を隠し、戊辰戦争後は静岡で教育者として生きる。
歴史に翻弄され、住まいも名前すら転々と変えながら生きた高祖父(曾祖母の父)。
その人生は歴史小説を読むように面白い。
そして歴史小説並みに有名人が顔を出すのである。
「いちまき」というのは血族の一団という意味なんだそうだけど、血族の親族もまた血族だと言わんばかりに繋がっていく縁。
まあ昔は子だくさんでもありましたから、あっという間に縁が広がっていくものだったのかもしれないけど、それにしても文学者、画家、教育者など有名文化人にゆかりのある人が多い。
もともと高祖父は千葉の佐倉出身で、関宿藩の木村氏のもとへ婿入りした身であるので、佐倉の親族からは潜伏中にいろいろと力になってもらったらしい。
佐倉は江戸時代の文教地区と言ってもいい場所で、文化系に強いのは血筋なのでしょうか。
佐倉や関宿は、詳しくはないなりに多少の土地勘があるので、この辺も面白く読んだ。
この本は新聞の書評で知ったのだけど、これを雑誌に連載していた時に書評家(狐)さんと中野翠が遠い遠い親戚だと判明したと書いてあったのを読んで興味を持ったのだった。
一族みんながすっごい読書家だなあと思って。
読みやすいし面白かったんだけど、雑誌連載分に大幅に手を入れ構成を変えたらしいけれど、同じ出来事が何度も繰り返し出てくるのでちょっとくどかったな。
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NHKの番組「ファミリーヒストリー」が始まった時、私は芸能界とか芸能人に全く興味がないせいもあって、「赤の他人のご先祖様の、それも偉業を成し遂げたわけでも何でもない一般人の話なんて、いったい誰が聞きたがるんだ?」と冷ややかに思ったのをよく覚えていますが・・・これが、なんと、驚いたことに、毎回けっこうおもしろい。TVザッピング中に目に入ると、その日のゲスト本人に特に興味がなくても、ご家族のたどってきた物語に引き込まれてついつい最後まで見てしまうのですよねえ。不思議です。
これまで見た限りでは「全くつまらなかった」と思ったことは一度もなかった。どのファミリーヒストリーも、それなりに考えさせられるものがあって、時に感動したりもする。
この本に書かれている中野翠さんのご先祖様のお話も、やはりとってもおもしろかった。読む前は全然期待してないどころか、くだらない「血筋自慢」だったら嫌だなぁ、くらいに思っていたのですが、心配無用でした。
司馬遼太郎さんの本でおなじみの維新の時代って、案外時空的には近い出来事なんだなぁ、と思った。無名の人の話だからなのか、当時の人たちの息遣いのようなものがよりリアルに感じられたように思う。
でも、出立時の装束の話なんかは隔世の感が強く、ああ、やっぱりはるかに遠い昔のことなんだなぁとも思った。とても不思議な距離感。
うちのじーちゃんばーちゃんにも、子供のころの話とかもっと聞いておけば良かったなぁ、なんて、まあ今さらなことをやはり思ってしまう。
認知症対策で、最近は母に頻繁に電話をしているので、かわりに母の子供のころの話を聞いたりしている。維新の当事者のようなドラマチックさは全くないけど・・・やっぱりそれなりにおもしろい。
どうでもいいけど、本に掲載されている中野さんのご親族の写真は、誰も彼もがやけに顔が長い! 中野翠さんも、確かお顔が長かったはず。
いちまきだなぁ、と変なところに感心した私であった。
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物語かなと思ったらそうでもなく。ドキュメンタリー風かなと思いきやそうでもない。
筆者は家系自慢や自分語りにならないようにしないと、ということに努めたらしいですが、ずっと「誰々が知り合いだった」「誰々がいちまきの一員だった」
あるいは「昔はここはこんなとこでおしゃれでいけてたわたしはここによく行っていて」とか
そんな感じのことばかりでした。必死で面白いところを良かった探ししてたんですがみつかりませんでした。
いわゆるおじいちゃんおばあちゃんの先祖自慢で終わってしまいました。
文章や文体も古く(感性が古いというか)、1950年代60年代なら最先端だったろうなと察することができましたが、
現代ではなかなか受けいれられないのではないかな。
ただ、表紙はかわいい。すごくかわいくて装丁もとっても素敵。表紙イラストとデザインだけは褒めちぎらせて!
そんな一冊でした。