紙の本
津村記久子、連作短編
2020/10/30 12:32
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投稿者:MILKy - この投稿者のレビュー一覧を見る
お仕事小説的なのを読みたかったケド少し違った。大きくは二、もしくは三作で構成。最初のオフィスでの小噺は肩の力入れずに読めたかな。ペリカーノジュニアは、私も無くし物に執着することがあるから見つかってホッ(笑)パンデミックはキョリ空けたりとか若干コロナ禍がよぎった、マスクとか!中程のフィギュアか何かの話はスルー…最後表題作は嵐の中の帰路のデキゴト。話中の、元妻が、実家を離れてるんだから繁華街の近くでありたい願望は都会生まれだと頷けてはしまう…作者は、ワリと近しい世代、かつ大阪人だーっ
20200523
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登場人物は皆、どこにでもいそうな人たちなのに、だからこそなのか、名前が登場するたび嬉しくなるような愛らしさがある。
連鎖小説と思いきや、真ん中で登場人物変わった。それはそれで良いのだけど、個人的には前半の話が好きだ。
何気ない、取るに足らない場面、状況。だけど、さりげなく心のどこかに残ってる、もしくは刺さっているような事柄を書いていて、とても楽しめた。
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金曜日、仕事が暇で午前中で上がらせてもらい、前から観たかった阿修羅像を見に興福寺へ行ってみた。その車中で、この薄い本の大方を読み終える。
「職場の作法」は、どこにでもありそうな職場の、どこにでもいそうな人たちを描いた短編の集まり。
無理を頼んでくる輩に自分の仕事の価値を見せつけている田上さん、彼女が贔屓にすると応援するチームや選手が何故か成績が落ちていくという浄之内さん、メディア情報を垂れ流し鬱陶しいことこの上ない北脇部長、人の机の上の文房具を勝手に使って帰さない定年間際の間宮さん、休めばいいのに風邪をおして出社して出来る自分をアピールしたい山崎さん。
確かにありそうに思わせ、思わず『どこにでもいそうな』と書いたけど、実はあんまりいないのではないかなという気もする。
表題作の「とにかくうちに帰ります」は、表題のインパクトの割にお話は作り物作り物していて、今ひとつ乗れなかった。
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前半の作品は、とにかく楽しそうな職場だった。
途中、エッセイ?実話なのかな?と錯覚するほど、リアルな話だったなー
何度かふふっと笑ってしまった。
後半は前半とは違い、過酷な状況でみんなが必死で帰る中、出会いもあったりして、寒い中、心温まる出来事もあってよかった。
あの晩、みんなの中で、少し何かが変わったのかな。
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前から何度か読んで、挫折をしている津村記久子。今回も軽く挫折しながらなんとか、読了。淡々と話すように話が進むような気がするせいか、逆に読みにくく感じてしまった。すごく冷静というか…。そのせいで苦手意識が生まれている気もしてならない。他作品を読んでみないとわからないが苦手意識が先行してしまい、読める気がしない。
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本書には3作が収められています。
個人的には、巻頭の「職場の作法」と巻末の「とにかくうちに帰ります」は、特に楽しんで読めました。文字どおり、前者は職場をめぐる物語で、後者は職場を出たあとの物語。両者は対比的な関係(いわゆる「ワーク・ライフ・バランス」の関係にあるというより)、「仕事」と「生活」のゆるやかな共存関係にあるように思えます。
読後の心地よさは、このゆるやかさにあるのかも。
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絶望するな。
僕達には津村記久子がいる。
本を閉じて、電車を降りて、全身を違和感が襲った。
雨が降っていない。ああ、あれは物語だったのか。
でも、わたしは知っている。
―――世界が平和であることを祈るように、今はうちに帰りたい。―――
そう思った雨の日があったことを、狂おしく憶えている。
冒頭に完全なるパクリを行ったことを謝りはしないぞ。
だって解説(たまたま)西さんなんだもん。
「絶望するな…」
素晴らしいキャッチコピーでありこの小説にほんとうにピッタリきてしまった。
又吉直樹が「炎上する君」西加奈子著の帯文に寄せた言葉である。
西さんも解説に記されているが、津村さんの小説は
「こうやって書かれるまで思いださんかった!」を、優しくまるごと書きおさめてくれる。そしてわたしたちにそっと差し出してくれる。
最初に入っている短編集『職場の作法』
読みながら思ったことを書き殴ります。
・ブラックボックスにひそめる思い、ノートには何が書き留めてあるのか、事務職をしているすべての女性に読んでほしい。田上さんの気持ちがきっとわかりすぎる。(「ブラックボックス」)
・市議会議員の従妹姉をネタに話しかけてくる部長と、事務員の話。ハラスメントはわかりやすいが、さらにネグレクトと続けるところに津村さんの光るものがある。(「ハラスメント、ネグレクト」)
・ペリカーノジュニアって言いたくなる。
それよりすごいのは、そんな中心文具ペリカーノジュニアのことを読んでいる最中いっしゅん、忘れてしまうところだ。(「ブラックホール」)
・インフルエンザ感染の話。大人は結構見た目だけじゃしんどいかどうか判断できないからなあ。(「小規模なパンデミック」)
そして表題作『とにかくうちに帰ります』
貧乏くじ引いちゃいがちな人間たちの台風帰宅物語。
わたし、ほんとうにあの雨の帰り道しんどかった。。
この物語をあの日に読みたかった。
どれだけ救われたろう。どれだけ奮起されたろう。
でも、きっと、あのしんどい思い、迎えに来てくれた父親の車に深夜1時やっと乗った時のあの安堵感を覚えているからこそ、この物語の端々がしみたのだろう。
わたしは好んでSFをよまない。
わたしのよく知っている生活、日常のものや、ひとや、職場や、コンビニや、『部屋でくつろぐ』という充足感を身に染みて感じるときに、ああ、わたしがあの時かんじたあの気持ち、感覚は、こういうことだったのか、とハッとさせられるのだ。それはある種、知らない世界を見る感動に勝るとも劣らない。
感情や場面を文章に落とし込むことができるのか、ここまで、こんなにも。
津村さんの小説を読むといつも思う。飽きることなく思う。書いてくれたものを読んだら読んだ分、いつも感動する。作家になってくれてありがとう。
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こんなに薄い文庫本なのに!こんなに濃厚で面白いお仕事小説があったなんて!
『この世にたやすい仕事はない』も、ぜひぜひ合わせて読みたくなった。
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サラリと読めます。短編ですが、登場人物は同じ職場の同僚かな?それぞれの、なんてことのない日常を、とても親しみやすく描かれています。ごくごく普通の人たちの、ごくごく普通の日常や、ちょっとしたことを描くのは意外と難しいでしょうね。頭を休めたい時に読むといいんじゃないかなぁ・・・
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どうということもない人々の、どうということもない日常の描写がとても好き。
ブラックホールの最後の一文とか、フアン・カルロス・モリーナとか、ツボです。
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とにかく読み終わりました!最近読めてなくて、ようやくやけど。津村さんを読んだのは2作目ですが、日常にとけ込んだ出来事を、見事にあぶり出す。感性高いです!これって、あるよなー(笑)、そう!あるある! ん…?ほんとにあるんかな?
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うちに帰りたい。
切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい――。
目に入った瞬間に購入してた、津村さんの新刊です。
最近になってようやくわかってきたのですが、10月11月は私にとってわりと低空飛行な時期のようです。
ものすごく不調なわけではないけど、あまり本を読む気になれず、仕事が嫌いなわけではないけど早く帰りたい気持ちが募る時期。
この本との出会いは必然だったようにすら感じます。
いつものことながら、津村さんの小説には劇的なドラマは起こりません。ごくごく日常的な生活をとても丁寧に、大事に描いています。
「職場の作法」と題された連作短編集には、鳥飼さんから見た職場の同僚たちが登場します。
これがまた、「いるよね、こういう人!」という人たち。
中でもツボだったのは、最初から登場してくる田上さん。彼女のちょっぴりブラックながらも誇り高い態度とノートにやられます。
日常に寄り添って描かれたこの物語は、決して平凡というわけではなくて、登場人物それぞれがいろんな問題を抱えたりしながら、それでも日々を生きている、という、当たり前といえば当たり前のことをどれだけきちんと捉えられているのかということを問われているような気持ちになります。
当たり前のことって、普段は意識せずにするりと流れてしまうもの。それをきちんと捉えて提示できるのは、あとがきで西加奈子さんも述べていますが、津村さんのセンスなのでしょうね。
ささくれた気持ちが癒されました。やっぱり津村さんだいすき。そして、西加奈子さんのあとがきがまた、超絶よかったです。
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ブクログのレビューを見ていたらとても興味が湧いたので、すぐ買いに行って一気に読了。あるある!とかそうだよねぇ…とか、いろんな人に共感しながら楽しく読めました。
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普段の生活ではスルーしがちな場面を、「もう許してください…!」と言いたくなるくらい丁寧に&リアルに切り取った短編集。
現代社会ですり減りながら働いている人たちにはホントいたたまれない小説でした。
「あーいるいる、こういう人」とか、「ちっちゃいなー、でもこんな人いるよね。…私だわ」な場面とか。共感という言葉では片付けきれない、なんともいえない後味が残る作品でした。
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部屋でくつろぐ。
その充足感。
玄関の扉を開ける。
その安心感。
職場を後にする。
我が家を目指して。