紙の本
我が国のポストモダン文学を代表する作家・高橋源一郎氏の傑作です!
2020/06/22 11:31
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、散文詩的な文体で言語を異化し、教養的なハイカルチャーからマンガ・テレビといった大衆文化までを幅広く引用したパロディやパスティーシュを駆使する前衛的な作風で定評があり、日本のポストモダン文学を代表する作家の一人である高橋源一郎氏の傑作です。同書の内容は、ある夜、突如ランちゃんの前に謎の少女・マホさんが現れます。そして、彼女はランちゃんにある指令を出します。「<世界を守る鍵>である、あなたの弟・キイちゃんが『悪』の手先・ミアちゃんに連れ去られたわ。『悪』からキイちゃんを救い出すのよ!」という指令です。一体、「悪」とは何なのでしょうか??また「世界を守る鍵」とは一体どういうことなのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
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「悪」ってなんなのか。絶対的な「悪」ってなんなんだろうか。
そこまで言えるものってもう個人を超えて「世界」でしかないのだろうか。
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心が洗われていく様な言葉、文、文章。現代思想的な観点から、語る事が出来る作品なのだと思うし、そういった具合に読んでみるとまた違った面白さがある作品なのだと思う。ただ、純粋に一つの作品として素敵だなぁと思いました。イッツ・ショー・タイム!
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簡単なようで、優しくない。
単純なようで、根っこが深い。
常に題名を念頭において、読んでください。
「悪」=?
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今日(7/25)の朝日新聞の論壇時評を見て、最近読み終わったこの小説のことに思いが至った。
「悪」とは何か?ミアちゃんの母親が冒頭に発する「わたしは「悪」と戦っているのです」という高らかな宣言。
「風立ちぬ」と「チェルノブイリ・ダークツーリズム」に共通して描かれる、技術の「善悪二面性」。零戦と原子力発電。新しい技術を産み出すことは、同時に新たな事故の可能性を生む。そういう危うい技術革新によって、今の我々の生活は「便利」を手に入れている。
人間は「善きものと悪しきもの」が混じり合った存在である。小説の主人公ランちゃんは、無邪気な子供という存在にも関わらず、さまざまな「悪」と対峙することになる。
ランちゃんは「病」という「悪」に蝕まれている。しかし「悪」と対峙する中で、この世界には存在しない「マホさん」の力が彼を現実世界へ押し戻す。「悪」とたたかうことにより気付くことがある。存在しない者の後押しがあると分かれば、たたかうことはもはや孤独ではない。
論壇時評の中で高橋は「ぼくたちは不完全な、善と悪が混じり合った存在だから、歴史を学ばねばならない」と主張する。歴史とは、先人が「悪」と戦ってきた時間の積み重ねである。そのような現場を目撃し、我々はエモーショナルな問いかけを得ることができる。悪と戦う歴史に思いを馳せること、それはすなわち悲しみを感じるための「ダークツーリズム」なのだ。
そして、存在しないものの働きというのは、僕らが普段「運」と言っているものと無関係ではない。自然や命の連鎖の中で今生きているという現実。歴史を知ることは未来を想像することと一体である。
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マイノリティは同情を得やすい。マイノリティを責めることは批判されやすい。「イジメられる方にも責任がある」と、声高に叫ぶことは憚られるが、それだってマイノリティを責める結果になってしまうからだろう。「イジメられっ子」は同情されているわけだ。
「悪」とはなにか。本書の中には明確な答えは書かれていない。「解説」の中で中森さんも述べているが、本書で語られているのは「悪」であって、悪ではない。「そもそも」のところで、「悪」とは何なのか、答えは明確ではないのである。その答えは読者それぞれが出すことを求められている。
考えてみると、「悪」とはマイノリティではないか。たとえば『アンパンマン』という作品には「バイキンマン」という明確な「悪」が設定されている。それは「アンパンマン」や「ジャムおじさん」、さらには「カバオくん」といったキャラクターたちが営む平和な世界を害そうとする存在である。しかし、その計画は「アンパンマン」ら「正義」によって、いとも簡単に「潰される」。
『アンパンマン』は、一部エピソードを除けば、圧倒的に「正義」の戦力は大きい。「バイキンマン」=「悪」はマイノリティである。「バイキンマン」は被害者、と見ることもできるのではないか。もちろん、「バイキンマン」にはそうなってしまう責任もあるのだが。
「悪」とは何か。本書を読んで、そういった思索に思い巡らせて欲しい。
【目次】
「悪」と戦う
魔法学園のリリコ
解説 文学にとって高橋源一郎とはなにか 中森明夫
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3歳児ランちゃんが「悪」と戦い「世界」を救う。
童話めいた語り口で、結構深い作品。
解説にあるように「悪」とは何か、最後まで明示されることはないが、作中で表現される「悪」は案外分かりやすい。
「悪」に(仲間とみなされて)引き込まれるのは、パーツは完璧なのに畸形の顔立ちに生まれた「ミアちゃん」。言葉の発達が遅い「キイちゃん」。そして、生まれてこなかった子供「マホちゃん」。
また、ランちゃんが見る「悪」のイメージは、極端ないじめられっ子であったり、性的虐待に遭い障害を持った子供であったり、完璧すぎる美人であるがゆえに自分の内面を誰にも見てもらえない(と思い込んでいる)少女であったりする。
「悪」とは即ちマイノリティであり、「世界」とは彼らにとっては生きづらい、かつ五体満足のマジョリティの価値観に支配された「世界」である。
「悪」は自分たちには決して果実を与えてくれなかった「世界」をは破壊しようとする。
それを止めようとするランちゃんは、幼さゆえにまだ「世界」から果実をたくさん受け取っていないからだろうか、「悪」を本能的に理解し受け入れ愛することができる。
「悪」を受け入れ「世界」へ連れ戻し一緒に暮らすことに成功したランちゃんは、「世界」を救ったことになるのだろう。
でも、そもそも「悪」なんて、「世界」の側から見た一方的な言い方にすぎない。「世界」はマイノリティを「悪」と切り捨てず、世の中には多様な存在や価値観があることを認め、「ふつー」だと思ってる自分にもそれがあると認め、すべてまるっと包含していく懐の広さがなきゃあならない。
まあ、素人の読みではこのへんが限界なわけだが、こういう子供の単純さは大人になるとあっさり失われるもので、子供の目線だからこそはっと気づかされる。
面白いとかいうわけじゃあないんだが、何だか「すごい」と思わせる小説。
ところで、何で登場人物の名前も「」で括られてるんでしょうね。
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めちゃくちゃ読みやすいけど、わからなかった。
ただそれだけ。ただただ悔しかった。
解説で絶賛されていることが、まったく理解に追いつかなかった。
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3歳の男の子、ランちゃんの目の前に、マホちゃんが現れた。「世界を『悪』から救えるのは、あなたしかいないの」。ランちゃんは弟のキイちゃんと、世界を救えるのか?「悪」とは何かを問う問題作。
高橋源一郎、初めて読んだ。タイトルや前評判と、まったくちがう話でびっくり。こういう、SFっぽい話を書く人なんだろうか? もっとリアルな物語を書くのかと思っていた、勝手に。
こういう抽象的な話は苦手だ。悪って、結局なんだったのか。ミアちゃんの正体は? ハッピーエンドなの?などなど。うーん、この人の違う本を読んでみたくなった。
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初の高橋源一郎。
もっと読みにくいかと思ったが、すごく読みやすく、面白かった。
悪とは何か、というテーマを読みやすい文体で重苦しく感じさせずに提起していて、教科書などに取り入れても良いんじゃないかな、と思った。
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単行本ですでに読んでいたのだが、文庫化された際に、単行本未収録の「魔法学園のリリコ」が収録されていたので、購入。
まぁ、この「魔法学園のリリコ」ってのが、20数頁の短編で、書きかけの作品の冒頭部分だけ、というか、次回作の予告編というか、いずれにしても中途半端に終わってしまっている。
正直、収録されていなくても良かったような……。
「『悪』と戦う」のほうは、単行本で読んだ時とほぼ同じ感想を抱いた。
解説の中森明夫氏によれば、この作品が高橋源一郎の最高傑作だそうだ。
僕としては最高傑作と思えるものは別にあるのだけれど、それでも傑作のひとつには違いないと思っている。
ただ、この人の作品らしく、つまらないと感じた人にとっては、とことん「つまらない作品」なのだと思うし、「つまらない作品」と感じた人に対して「わかってないなぁ」と批判することが出来ない、というのもこの人の作品らしいな、と思う。
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小説家の”わたし”には子供が二人いて、一人は言葉の発達が早く、一人は遅い、、、なんだか実体験を交えた話なのかなぁ、と思いつつ読み進めていくと、途中から急に精神世界というか、仮想現実的な話になり、、、これが所謂、”「悪」と戦う”ってことなのですかい? これが所謂、文学ってやつなのですかい?と度胆を抜かれました。
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3.5ぐらい。高橋源一郎だから文学なのだろうと思って読むけれどもポップな童話のような前衛的な感じが、どうにも掴めない。さようならギャングたちよりも話に流れと着地点はあったと思うけど。「悪と戦う」すごく深いことを言っているようで、実は抽象的すぎて、抽象的なアクと概念的にタタカウので、くるくる変わる世界に翻弄された。
姿を変えてやってくるミアちゃん、ランちゃんはガッコの教室で、天才殺し屋でも、ゴミ置場でも戦うのです。世界の隙間に落ちたキィちゃんを救うために、悪と戦う。悪ってなんだ。世界ってなんだ。結局愛は世界を救うのか。
行間の☆☆☆や雪のような✳︎✳︎✳︎を、ごく自然に文章に織り交ぜてくるところってすごいなと思いました。1時間くらいでサクッと読めた。
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2019-3-20 2度目の読了
大学生の時に読み、久しぶりに読み返した。うっすら覚えていた場面もあるけど、ほぼ忘れていて新鮮な気持ちで読めた。
ぽんぽん場面が切り替わってなんじゃこりゃってなるんだけど、最後のマホさんとの別れ?の場面辺りでは理由は明確に自分でも説明できないけど、ぼろ泣きしてしまった。
言葉にしたいけど、よくわからない。
そして、最後のボス?がぬいぐるみな所、いろんな「世界」があって繋がっていることは証明できないけどある、みないなのが、浦沢直樹の漫画(ぬいぐるみの敵「PLUTO」、パラレルワールド「ビリーバット」)を彷彿とさせた。たまたまかな。