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3篇からなる短編集だけど、どの作品も発想力がすごい。現実に起こりそうで怖くなった。
あらすじ(背表紙より)
今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変化する。表題作他三篇。
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ディストピアものに入るのかな?
殺人が罪ではなくなる世界。
その罪を正当化する方法として
10人産めば1人殺すことができる
という決まりができる。
人ひとりを殺した罪は10人を生み出すことでイコールになるのだろうか?
疑問はあるが、創作としては他作品も表題作同様作者のユニークな視点が楽しめた。
2017.3.16
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10人産んだら、1人殺せる。「産み人」としての「正しい」手続きをとらずに殺人を犯せば、女は埋め込んだ避妊器具を外され、男は人工子宮を埋め込まれ、一生牢獄の中で命を生み続ける、「産刑」という最も重い罰が下される。命を奪うものが命を造る「殺人出産システム」で人口を保つ日本。
これだけでもうひぃ…ってなる。
表題作他3篇。どれも世界の変化のなかで自分だけが異物になった気分。
目が離せない作家さん。
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今から100年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪う者が命を造る「殺人出産システム」によって人口を保つ日本。会社員の育子には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは彼女の殺意。昨日の常識は、ある日突然変化する。表題作、他三篇。
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以前本作が何かで紹介されていて、興味があった本。こないだ芥川賞獲った人か。
すごい発想力。作者はどんな頭の中してるのか。天才じゃなかったらひねくれてる(褒めてる)。
短編集だけど、どの話もぶっ飛んでる。何十年後かの仮想の世界。今の常識を覆す。
ぶっ飛んでる割に、設定がしっかりしていてついつい読んでしまう。決して共感はできないけど、なるほどね、と思わせられる。
100年後、結婚・出産・殺人に対しての価値観はどう変わってるんだろう。100年前には堕胎罪とかあったくらいだしね。
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introduction───
蝉の声が聞こえる。
会社が入っている灰色のビルの裏手にある街路樹には、毎年沢山の蝉が棲み着いて騒音に悩まされる。女子トイレはちょうどその木の真ん前にあるので、曇りガラスの窓ごしに、壊れた電子音のような喧しい声が響いてくる。
─────────
10人産んだらひとり殺せる。
ひとり殺すためには10人産めばいい。
産まずに殺人を犯した人間には産刑が与えられ、
死ぬまで産み続けることになる。
本来産む性ではない男性にも
等しくその機会が与えられる社会。
100年後の日本。
ある日突然に命を奪われる可能性はいまだって同じだ。
交通事故や自然災害、無差別殺人。
明確な殺意を伴う犯行。
この小説の不気味さは、第二次世界大戦中のそれを彷彿とさせる盲目的な価値観にあると思う。
常識とはなにか。
正義とはなにか。
生命とはなにか。
性と生と死について、この世界で当然とされている価値観は本当に正しいのか、誰にとって正しいのか、容赦なく問いかけてくる。
殺人衝動を満たすために産み人となった環。
彼女にとっての育子はずっと、獲物を連れてきてくれる人間だったのだと思う。
だから殺意を抱く相手ではなかった。
意図したものであるのかわからないけれど、最後の最後で、胎児は人間か否かという点にもさらっと触れているあたりがいい。
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性と命と死ぬことについての価値観ををガンガン攻めてくる。
再読したいかといわれると微妙だけど心には残るかも。
合法的かつ確実に殺せるということが救いになる人の気持ちも分からなくもなくもなく…(合法的に無差別殺人をする人の気持ちは共感できないわな)
出産して子供を手放す事、夫婦関で子供を作る事が減るということ、殺される側の理不尽さやら、倫理観のあたりを突き詰めるとうーん、とうなってしまう。
まあ、小説なのでね。現実に起こったら、ということをつい考えてしまうほどある意味リアル。余命は好き。
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ツイッターで書店員さんがツイートしていた内容に惹かれて思わずポチりました。
10人産んだら1人殺せるーーその設定がすごい。
今の少子化問題にざっくり切込む内容ですよね。
殺したい人間を自由に殺せる権利を手に入れるための出産。そして、その決まりを破って殺人を犯したら、産刑(死ぬまで子供を生み続ける)。
なんか、妊娠出産が「ペナルティ」「やりたくないこと」として描かれているのがすごいな、と。
途中まで中立的だった育子が、最後そっちに行くのかーというのもなんだか意外。
表題作のほか三編もまぁまぁ、いっちゃっててすごい。
「トリプル」も「清潔な結婚」も、どちらも性交渉=子供とならないのがある意味すごい。
グロいなーと思いながらついつい読んじゃう中毒性が高い作家さんだなー。
他の作品も読んでみたい。
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衝撃的な題名に、ずっと読んでみたいと思っていた作品。
想像よりも猟奇的で薄気味悪い。
10人産めば1人殺せる…
殺人は悪ではない。
みんな普通に殺したい人がいる。
その殺意を持って、10人子を産む。
そしてその殺される人は、死に人と呼ばれる。
いつ自分が死に人に指名されるかもしれない。
殺意を持つことが悪ではない。
が、死に人になることに恐れ、でも受け入れる。
人間の闇を見る。
男性も人口子宮をつけ、妊娠出産ができる。
全てが平等で正しい世界。
今の世界なら、出産は人生において最も幸せな体験。
愛情に溢れた体験なはず。
それが刑罰に値するとは。
背筋がゾッとする。
他三つの短編が収録されている。
どれもゾクッとするような違和感を感じる世界。
私は「余命」が好き。
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現代の常識が時代遅れになった世界の話。
設定は斬新で、新しい常識を描くことは社会風刺のような一面もあった。
ただ、私には設定の奇抜さばかりが目立っていたように感じた。
大枠だけでなく、その中に出てくる一人一人の内面がもっと細やかに描かれていれば、もっと引き込まれるんじゃないかなと思う。
芥川賞受賞作では、そのへんがどうなっているのか気になる。
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「イっちゃってるなぁ…」というのがストレートな感想。だってまずタイトルからしてヤバさ炸裂してないですか?芥川賞取った「コンビニ人間」読んでみたいけど、単行本買うまでではないよなぁ…というわけで手に取ったこの本。「出産」と「セックス」と「死」で構成されていて、出産には崇高さを、セックスには嫌悪を、死には憧れをそれぞれ感じます。奇抜さをグイグイ狙ってる感じが少し気になるけど、【グロ注意】って書かれているスレッドを後悔覚悟で読んじゃう感覚。コンビニ人間、文庫化されるまで1年くらいかなぁ。気長に待ちましょう。
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著者の作品に触れると近未来SFを読むような感じを覚えるのだが、本書に収められた四編はまさにそうした題材ばかりだ。固定観念に侵された頭にとってそれぞれの状況設定を素直に受け入れるのには抵抗があるが、「清潔な結婚」で語られる夫婦生活の煩わしさが生々しくて的を射ている。
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芥川賞のコンビニ人間が読みたくて、予習として。「授乳」よりは読みやすかった。
こういう、もしもの世界の話は割と好き。
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10人産んだら1人殺せる世界。
少子化社会の中、子どもを持つことが一つのステータスになりうることはひしひしと感じる現実があるので、本作の一見とんでもない設定も妙なリアリティーがあるように感じられる。正義とは?正しい、とは?倫理観の転換。
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短篇集。10人産んだら一人殺して良い“殺人出産制度”のある世界を描いた「殺人出産」、二人で恋愛をする(カップル)現実とは異なり、三人で付き合う(トリプル)という選択肢が生まれた世界「トリプル」、ほか2篇。
<表題作>
構図としては『消滅世界』に似ており、「殺人出産制度」を称賛する人、批判する人がいて、主人公がその間に立っている。
異なる点としては、殺人の是非が議論されているように、命の重みについて語られることが多いことだろうか。この世界では、人口減少を食い止める制度として殺人出産があり、それが推奨すらされている。10人産んだ人に殺された人は、「皆のために犠牲になった素晴らしい人」(p.51)扱い。時代が時代なら英霊とでも呼ばれていただろう。大きな時代の流れの犠牲者、と考えると何だか戦争文学みたいだけど、日常生活の中に潜んでいるという点ではこっちの方が不気味。
現実世界の常識に対する懐疑の姿勢は他の小説同様で、主人公のセリフ「今の私は、昔の世界も今の世界も、遠く感じます。大きな時の中で世界はグラデーションしていて、対極に思えても二つの色彩は繋がってる。だから、いま、立っている世界の『正常』が、一瞬の蜃気楼に感じるんです」(p.89)は印象的。
ただ、だからといって、自分を大切にしましょうね・・・的な大団円を迎えさせてくれるわけではない。正常が疑われるべき存在だったところで、正常の本流から外れれば傷だらけになることに変わりはない。殺人出産を批判する女性に対し、殺人のために出産を繰り返す主人公の姉はこう述べる。
「突然殺人が起きるという意味では、世界は昔から変わっていませんよ。より合理的になっただけです。世界はいつも残酷です。残酷の形が変わったというだけです。私にとっては優しい世界になった、誰かにとっては残酷な世界になった。それだけです」(p.84)
この小説においては、残酷な世界に生まれた人間に救済は用意されていない。正常側にいたいという悲しい願いは、ずっとなくならない。
<トリプル>
男女の仲を「カップル」と形容するのに対し、3人での交際を指す「トリプル」。3人で付き合うことが一般化してゆく過程の時期を描いた小説。
本来であれば、2人だろうが3人だろうが好みで選べば良いのだろうが、倫理的なものが絡んでくるが故に面倒なことになる。正しいことを大切にするということは、自分が正しく思わないことを潰しにかかることにもつながりかねない。相手の正しさを尊重するには、適度な汚さや、無関心も必要なのかもしれない。白河の清きに・・・的な。