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【期間限定価格】憂鬱なハスビーン みんなのレビュー

    一般書 第49回群像新人文学賞 受賞作品

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    みんなのレビュー17件

    みんなの評価3.0

    評価内訳

    3 件中 1 件~ 3 件を表示

    紙の本

    「かつて何者かだった自分」という呪縛

    2013/01/19 17:36

    1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

    投稿者:ちゃき - この投稿者のレビュー一覧を見る

    東大卒、大手外資系企業に務め、夫は弁護士、
    ルーフバルコニー付き4LDKの新築マンションに住む
    「勝ち組」人生を絵に描いたような凛子。

    嫌みなハローワークの事務員を言い負かしたり、
    セミナー会場側の不備に対し理路整然と
    クレームをつけたりする凛子の高飛車な態度に、
    どうもいけすかない女だなぁ、と読み始めの頃は思っていた。

    夫は出来過ぎなくらい優しく、理解ある義父母にも
    とても大事にされている。
    それでも彼女は決して満たされてはいない。

    あまりに出来過ぎた環境に、こんな女のどこがいいんだろう、
    とびっきりの美女なのか?
    などと、つい下世話なことを考えてしまった。

    けれど、凛子がなぜ自分自身を「ハスビーン」だと感じているのか、
    その理由が徐々に明らかになるにつれ、彼女のことが身近に感じられてくる。

    母親に褒められることが嬉しくて、
    周囲から羨望の眼差しで見られることが誇らしい、
    ある種とても素直な動機から努力を続けた真面目な少女。

    「学歴は裏切らない」という母の教えを疑うことなく、
    自分自身の資質にも自信があったはずなのに、
    なにがいけなかったのだろう?
    私はどうすればよかったのだろう?

    自分を取り巻く世界をまっすぐ信じて生きてきた
    彼女の人生がゆっくりと沈み始めた時、
    考えても仕方ないことは分かりつつ、それでもつい考えてしまう。

    母は何故こんな風に私を育てたのだろう?

    愛情や嫌悪、あるいは肯定、否定などという
    一言では語れない、娘が母に抱く思い。

    うまくいかない自分の人生を、
    母のせいにするつもりなどないのだけれど、
    それでもつい頭に思い浮かぶ「たら」「れば」。

    そう、この小説の軸となるのは、
    「キャリアウーマンの挫折と再生」みたいな陳腐なものではなく、
    著者の他の作品でも度々描かれているアンビバレンツな母娘の関係。

    高学歴でプライドが高い凛子に共感しづらそうだと感じだのは
    最初のうちだけで、この小説のキモが見えてくるにつれて、
    その弱さと繊細さに親しみを覚えはじめ、
    読み終わる頃には彼女のことを応援している自分に気付いた。

    小説のラストで、凛子は子供の頃に通った有名進学塾のビルを訪れる。
    それは、彼女の人生の原点ともいえる場所。
    すでにそこに塾はなく、けれど今も残された
    錆びた看板を見上げて彼女は思う。

    “錆びついた青い看板は、まるで私たちのようだ。...(中略)ネオンにぴかぴか照らされたあの日々の熱を帯びたまま、剥がれ落ちることも、塗りなおされることもなく、通行人の誰ひとり、見上げない。だから、Has been、あんな言葉を私たちは、絶対に口にしてはいけない。口にしてしまえば不必要に傷んで、内から静かに蝕まれてしまう。いつまでもいつまでも、こんな小さな看板に、閉じこめられてしまう。”

    これは、「かつて何者かだった」過去の自分との決別ではなく、
    「何者かだった自分」という呪縛から解放される瞬間。

    そもそも「かつて何者かだった」という事自体、本当にそうだったのか?
    そして、人生まだまだこの先長いはずなのに、
    どうして「もう終わってしまった」なんて言えるだろう?

    「だから、Has been、あんな言葉を私たちは、絶対に口にしてはいけない。」

    これは、輝かしい過去のあるなしに関わらず、
    誰にでもあてはまる言葉じゃないかと思う。

    この小説の最後のように、
    人生には、なにも解決してはいないんだけれど、
    ささいなことで、こんな風になにかが吹っ切れる瞬間がある。

    そんな瞬間の風景がふわりと読後に残る作品でした。

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    紙の本

    勝ち負けではない

    2018/05/05 12:47

    0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

    投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

    一流大学を出て裕福な暮らしを送りながらも、どこか満たされることのないヒロインの憂鬱が伝わってきました。本当の意味での幸せについて考えさせられました。

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    紙の本

    誰もがもっている「ハスビーン」

    2010/11/25 16:58

    3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

    投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る

    ハジメマシテの作家さん。なんだか宙ぶらりな感じが気になって、手にとってみた。

    タイトルにある「ハスビーン」とは、「Has Been」とのこと。
    研究社の辞書を引くと
    《口語》 盛りを過ぎた[人気のなくなった]人; 時代遅れの人[もの], 過去の人[もの].
    とある。

    ちなみに本書では、こんな説明が作中でなされている。
    「(略)ガイジンはさ、一発屋のことをHas Beenって言うんだって。Mr.Has been.かつては何者かだったヤツ。そして、もう終わってしまったヤツ」


    主人公の凛子は東大卒の元エリート。同じく弁護士の夫との結婚を機に有名企業を退社し、今は一応専業主婦。お金にも困らず、やさしい夫との安定した生活を送っている。だけど…彼女は日々、いろんなことにいらいらする。やさしすぎるお姑さん、失業保険給付窓口の女性、就職支援セミナーに集う人々…あの人もこの人もあれもそれも…夫でさえも、いらいらの対象になっている。

    読んでいて、イタかった。凛子がイタい。イタいイタいイタい。イタすぎる。なんてヤな女なんでしょうか。と、色々嫌なところが目に付いてしまう。

    凛子がいらついているのはきっと、満たされていないからだ。しかし東大を出て、弁護士の夫を持っても満たされない凛子が「ヤ」なのではない。「ハスビーン」というしがらみにがんじがらめになって、抜け出せないでいる現状に気付くことなく、その捌け口を他者にしか向けられない凛子の幼稚さが「ヤ」なのだ。読んでいてどうしようもなくイライラする。

    だけど、読んでいてわたしは気づいていた――ここまで凛子に腹立たしさを募らせるのは、自分の中にも凛子と通じる部分が少なからずあるからだ、と。

    もやもやっとした日常。解決方法がみつかなくて、試行錯誤の暗中模索の日々。自分に色んなことを問いすぎて、周りが見えなくなってしまった凛子は「ありがとう」や「ごめんなさい」という当り前のことさえ言えなくなっている。

    あぁ、やっぱヤな女だなぁ…凛子。考えれば考えれば嫌な女だ。仮に凛子のキャラが男だったとしても、やはりイヤなやつだ。

    でもそんな彼女も最後には「ハスビーン」から抜け出せるきっかけのようなものを見つける。彼女のこれからがもっと安らかな日々となるよう願わずにいられない。

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