紙の本
先人たちの勇気に感謝
2020/10/18 08:49
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投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
科学者たちのの底なしの好奇心から病気の人の吐瀉物を飲んだり、性病患者の膿を自分のものに付着したり、真水を持たずに大海原に漕ぎ出したり等々。
私には信じられないことだらけでした。面白いやら気味悪いやら、ぜひ読んでみてください。当初は捕虜や奴隷に残酷な実験をしたのか思ったのですが、そうではなくて、自らの疑問を自らの体で実験した記録です。
多くの犠牲者のご冥福をお祈りいたします。
紙の本
人類の歴史そのものが人体実験の歴史
2021/09/12 15:29
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投稿者:くろくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
原題は、”SMOKING EARS and SCREAMING TEETH”
(耳が煙を吐き、悲鳴を上げる歯)。
「第13章 ナチスドイツと闘った科学者たち――毒ガスと潜水艦」に登場する、
イギリス20世紀の生物学者ジャック・ホールデンのエピソードによるものです。
彼は、”プレッシャー・ポット”と呼ばれる鋼鉄製の加圧室で、気圧が人体に与える実験を繰り返しました。もちろん、自分の身をもって。
これを題名にもってくるあたり、海洋生物学が専門の著者は、同じく生物学者で海にかかわる実験をしたジャック・ホールデンに思い入れがあるのかもしれません。
ちなみにジャックの父、ジョン・スコット・ホールデンも自らの身をもって、有毒ガスの特定など空気の質が人間の健康に与える影響を生涯をかけて研究した愛すべき奇人変人博士です。
その”うっかり博士”ぶりを物語るエピソードに、わたしもこの人物が好きになりました。
過激な邦題ですが、興味本位なネタを並べたものではなく真面目な本です。
といっても、紹介される科学者たちの、その無謀とも思えるチャレンジ精神やどうにもとめられない好奇心の強さは、常人の理解が及ばないという点では、やはりイメージ通り”マッド・サイエンティスト”なのかもしれません。
全17章の本書のうち約3分の2は、医学の歴史といっていいでしょう。
今まであまり行われてこなかった人体解剖をしまくったジョン・ハンターに始まり、
外科手術を進歩させた麻酔、有毒物質と薬の線引き、未知の病原菌、感染症の特定など。
「現在おこなわれている全ての医療行為は、なんらかの形で人体実験を経て、その有効性と安全性が確認されたもの」と、解説にもあるように、
ある意味、人類の歴史そのものが、人体実験の歴史といえるかもしれません。
残り3分の1は、科学技術の発展にともなって行動範囲を深海から成層圏にまで拡大した人類の冒険的試みが楽しめます。
海で遭難したら海水は絶対飲んじゃいけないって言われてきたけど……
紙の本
面白い!
2018/11/02 16:05
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投稿者:リョウ - この投稿者のレビュー一覧を見る
怖いもの見たさのような感覚で購入してしまいました。
人体実験を色々と分類分け?してみたりしていて、「なるほど〜」と思う部分が多々ありました。
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タイトルや帯書きを一見して、いわゆるステレオタイプな”マッド・サイエンティスト”の実話集を想像してしまったのだが、豈図らんや。
本書に書かれたエピソードの大半を占めるのは、研究のために文字通り自分の体を実験台にした、あるいは危険極まりない領域へ自ら踏み込んでいった医師や科学者たちによるもの。
その「研究のため」という目的は往々にして、研究者本人の―傍から見れば常軌を逸していると思えるほどの―強烈な知的好奇心に因って来るものなのだけれども。
詳しくは此方に。
http://rene-tennis.blog.so-net.ne.jp/2017-01-16
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【マッド・サイエンティストの世界へ、ようこそ】性病、寄生虫、コレラ、ペスト……人類を絶滅の危機から救った医学の発展の裏には、多くの科学者による果敢な自己人体実験があった。
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昔の人は偉大だ。(^^;
読む人によっては、気持ちが悪くなるような人体実験(実験者が自分の身体で実験することも多数)が紹介されています。
病気の原因を探すのに、自分が病気にかかるように実験するなんて無理無理。(^^;
尊敬はしますが、ちょっとしたおかしみも感じますね。
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本屋さんで欲しい本を見つけた後、他になんか面白そうなものないかなあ、とあてもなく棚を見ているときに見つけた。タイトルを見て、面白そうとタイトル買い。
こういう予定にない本に出会えるから本屋さんはやめられない。
性病、麻酔、薬、食物、寄生虫、病原菌など全17章にわたって様々な人体実験の歴史について書かれている。
科学者が自分の予想の確認や新しく創り出す際において、人体実験は欠かせない。勿論、人間に行う前に動物などを用いて実験するだろうが、最終的に人間に使うものなどの確認のためには人体実験せざるを得ない。
本書ではその人体実験の被験者に果敢にも自らなるという科学者がたくさん載っている。
実験が上手くいって自らの仮説を裏付けることの出来た幸運なひともいれば、生命を落としてしまうひとや、危うく生命を落としかけたひともいる。
こういう科学者を、マッドサイエンティストと呼ぶのかもしれない。わたしに言わせてもらえば、自分が厭なものや効果の不確かなものを他人に使えるひとのほうが余程狂っていると思う。
わたしは科学者でないので、自分に明らかに害になるものを試したり、他人試す機会もないけれど、それを行うということは、一体どれくらい強い信念と使命があるのだろう。
この本に出てくる実験は、どれもこれも凄まじく、どれか選んで実験台になれると言われたら、どれもお断りなのだが、科学者でなくても実験台に志願するひともいる。
科学の発展のためという崇高な理由のひともいたかもしれないけれど、多くは報償金や、自らが罹患し放っておいても死んでしまうといった場合が多い。
それしか手段がなければ、実験台になるより他ない。これは辛い。
どれも厭な中でも容易に気持ち悪さの想像出来る、寄生虫を体内に入れるだとか、病原菌を打つは耐えられない。
他にも、患者の嘔吐物を摂取したり、自ら漂流してみたり、どう決意したのかわからない多くの科学者たち。
これならイケるな、とか、これだけはムリ、と単純に楽しんで読んでもいいだろうと思うし、様々な歴史のひとつと真面目に読んでもいいだろう。たとえば、コカインは初期のコカ・コーラ原材料のひとつだった。だから、コカ・コーラなのか?だからコーラは中毒になるのか?(わたしの夫はコーラ大好き、わたしは飲まないので何故あんなに飲みたがるのか不思議だった)
ただ、忘れてはならないことがある。
わたしたちが今、当たり前に飲む薬にも、危ないとわかっている行為にも、それを裏付けするために多くのひとの苦労がある。
薬が間に合わず病によって亡くなるひとたち、実験によって失われた多くの生命、人間の都合によって殺されていった多くの動物たち、数え切れない犠牲の上にわたしたちの生活は成り立っているのだ。
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当然のことが当然のことになるまでの話.純朴な好奇心と利他的な自己犠牲がそれを推進し,知識だけは豊富な「学者」や「専門家」がそれを抑止した.
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うーん。この時代に生きてなくて良かったと思ってしまった。
疫病にかかった患者の体液を飲む医者。スゴイ勇気。
とろ火に掛けられた嘔吐物という字面だけで吐きそう。
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自分自身が被験者になるくらいに実験が好きって…
人間ってどれだけ多くの屍を超えて生きているんだろうと思ってしまった。
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タイトルからマッドサイエンティスト、それも、冷酷に他人の身体を実験に使っている姿を想像する。確かにマッドなサイエンティストと言っていいのだろうが、真面目に、医学、科学の発展に挑んできた人たちだ。
大半は、人体実験の対象は、自分自身だったりする。
こうした、危険を顧みない行為があってこそ、今があることは否めない。
すこし、タイトルが損やな。
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すごく面白かった!
人体実験の歴史といっても、己の体を使って自己実験を行った人の話が多いのでそんなに胸糞悪いエピソードが出てくることは少ない。ちょっと安心。
世界の珍しい動物を食べまくった男の話が面白かった。
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とても面白い!
興味をそそられる内容なのですが、描写がリアルで読んでいると気持ち悪くなってきました…。
残念ながら、途中でリタイアです。
序盤に書いてある、遺体もお金になるという部分は初めて知りました。
墓荒らしが、まだ近い昔の話だったなんて驚きでした。
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面白く、また知的好奇心を刺激してくれるいい本です。
“人体実験”というと、新薬の開発であったり、戦時中の非人道的なものをイメージしていたのですが、それだけでなく人体実験にはその目的や動機によって様々なケースがあることに気づかされました。
その目的には医療、医学的なもの以外にも、人間がどこまでの高さ、深さ、速さに耐えられるのか、などといったものも含まれ、一口に被験者といっても実験者が自ら被験者となる自己実験もあれば、被験者がなんの実験か知らされぬままの悲惨なケースもあり。自己実験者の動機も単純な好奇心や、自説を立証するための探究心であったり、人類の進歩への使命感だったり様々です。
とはいえ、実験の失敗も含めそのほとんど全てが今の世の中に役立っているという事実に驚かされます。
そしてその業績に比べ、死にかけたり、時には死に至ってしまった被験者たちの苦痛が、さほど深く広く知られていないことにも複雑な気持ちに。
どのエピソードも興味深いものばかりですが中でも、それまで外科手術では手のつけられない臓器とされた心臓へのアクセス方法として、血管を通すカテーテルを実際に自分で試したフォルスマンや、「深さ」と「高さ」の両方にチャレンジした天才科学者ピカール博士のエピソードにはより感動させられました。
著者はイギリスの海洋生物学者で、いかにもイギリス的な皮肉の効いた文章が、読書中の興奮をいい具合に冷ましてくれ、クセになります。中には皮肉が効きすぎて笑えないくだりもありますが。
本書原書の副題訳「自己実験という危険な行為を成し遂げた、偉大なる奇人に捧げるウイットに富んだ賞賛」がもっと世の中に知られることを強く望みます。
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人体実験、というとマッドサイエンティストだとか、戦時中の非人道的な行為、というイメージが先行する。
確かに本書に出てくる実験はそういったものもある。
だが、それを、なかったことにできる?
自分に関係ない、と言える?
誰にだって程度の差はあれ、興味はあるでしょう?
私は空気抵抗の実験をしたことがある。仮説はこうだ。
パラシュートが安全に脱出できるのなら、傘でも空気抵抗を実現できるはずだ。
そして私は駐輪場の屋根から傘を両手に持って飛び降りた!
最悪の結果にならなかったが、端的に言えば失敗した。
他にも、「アルコールの摂取量による消化器官と判断力の変化に対する考察」を行ってみたこともある。
が、そんな些細な実験と本書の内容を比べると、比べ物にならない。
音速の壁、ソニックブームの恐ろしさは、思わず電車の中で身震いした。
淋病と梅毒に同時に罹患するよう仕向けたり、炭疽菌を培養したり、漂流してみたり、ありとあらゆる実験がなされてきた!
死骸を食べる実験の章では、日本人にはお馴染みの高級魚(矛盾?)フグも登場!
それにしても、こんな人体実験の数々は、せいぜい20世紀初頭まで、そんなふうにどこか楽観的になってはいまいか?
驚くべきことに2006年、臨床試験中の失敗が起きている。
門外漢の私には、この実験方法が適切だったのかはわからない。
また、募集を見てやってきた被験者たちに問題があったとも考えられない。
当然、臨床試験そのものを否定するものでもない。
しかし、言えるのは、人体実験は功罪併せ持つものであるということ。
医学、科学に従事する人々には心から感謝と尊敬の念を抱くけれども、一方で、一般人の尊厳もやはり忘れてはならない。
本書は、普段ノンフィクションを読まない人、ミステリやホラー好きな人にもおすすめ。
不謹慎?
いや、現実の奇妙さや恐ろしさから現代と自分を省みることができる。
巻末の仲野徹氏の解説までしっかり読み込んでほしい。
「NHK フランケンシュタインの誘惑」でも解説をされている先生だ。