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巧みな構成
2023/02/05 10:04
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
非常に構成が巧みである。冷静な第三者的視点から、問題の多い全寮制の高等学校の実態を描き出してゆく。章ごとに語り部が変わり、複数の視点で描き出す手法で、冷静平等な語りを表現している。特に冒頭部分を始め要所要所に挟まれる学園長のインタビューがとりわけ効果的である。作者似鳥鶏といえば、ラノベ風の軽い文体のものしか読んだことがなかったが、このような作品も書くことができるのだと認識を新たにした。
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スパルタ教育の学校を舞台にした社会派ミステリなのか。
期待と違ってシリアスで現実にもありそうな怖さがあった。軽快さは無く読むのが辛い。
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これまでの似鳥鶏さんのお話とかなり違う印象がある。こういう話も書くのか…。どんな問題児も100%更生すると噂される全寮制の高校の話。読んでいて辛くなるけれど、分厚さが気にならないくらいどんどん読んだ。最後まで読んで、救いがあるのかないのか、よく分からなくなってしまった。
2016/11/22
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うーん。正解のない世界。
だからこそテーマとしては深いし、飽きない構成でぐいぐい読ませてくれました。
しかしこれは体罰否定の極論でしょう。
現在の「体罰」という言葉の持つ意味を考えると、それはもう肯定される要素を一切含まない行為なんだと思う。だから「体罰」は肯定されるべきではない。
でも、やっぱり言ってわからない子どもというのもいる。よく言って聞かせれば最後にはわかってくれるというのは幻想でしかないと思う。
散々暴れた挙げ句、他の児童に怪我を負わせる恐れがある行為に及んでいる児童がいる。
制止するために限界まで声をかけ続けた上で危険だと判断して腕を掴んだベテランの教員が「体罰だろーが!教育委員会に訴えるぞ!」と児童に恫喝され、挙げ句、児童と保護者に対して謝罪するよう校長に諭される。そんな時代ですよ。
この本の松田学園長。クズですが、言ってることの全てが間違っている、というわけではない気がしてしまう。
学校でもいい、家庭内でもいい、あくまで「あの怖い体育の先生」程度のレベルで、顔を会わせると背筋が伸びてしまうような「怖い」存在というのが子供には必要なんじゃないかな。
そういう存在の延長線上に、死んでしまうほどの「暴力」は存在し得ないはずなんだけどな。
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スパルタ教育で有名になった私立の全寮制の学園。「学校」という密室のなかで、軍隊よりもひどい「教育」を受け、洗脳されていく生徒たち。そして事件…… 病死したことにされた生徒の死に不審を抱いたいとこたちが学園を調べ始める。
告発までの流れはうまくいきすぎているが、主眼はそこにはない。有形無形の暴力による洗脳教育の恐ろしさ。そこに子どもを預ける「共犯者」たる親たちのエゴイズム。逃げ場のない子どもたちの絶望。そして喝采する第三者たち。
知性ではなく力に頼ることの恐怖がここにある。それを是とする人がいるという事実。昨今の風潮を思うと、現実とかぶる。告発しようとする人たち、彼らに協力する人たちの良識にかろうじて救われる。その分、ラストには暗澹たる気持ちにもなる。闘いは終わらない。
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全寮制高校の部活中の死亡事件を不審に感じた親戚が学校のことを調べ始める。狂信的な親、教師、疑問を持ちつつもやり過ごすことしか考えられなくなる生徒。読んでて嫌な気持ちになる話だった。具体的な懲罰はもちろん、反論した親の叩かれ方も気味が悪い。信じられないではなく、ありそうって思ってしまうから余計嫌な気分。とはいえ読みごたえたっぷりの作品だった。
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カリスマ教育者・松田美昭が作った全寮制一貫校・恭心学園。高い進学実績、ひきこもりや反抗も治ると話題の学園で健康な男子高校生が突然死んだ――。新生・似鳥鶏渾身のダークサスペンス!
読み切るのがしんどかった。暴行、いじめ、体罰、洗脳のシーンが恐ろしく丁寧でかなりHPを削られた。玄関までたどり着けたから良かったけど、下手したら不審者が生徒を暴行していて、それを捕まえるために全員で捜索してましたって言ってしまえば通ってしまったのではないかと思うと本当に学校の中で何が行われているのかを明らかにするのは難しいんだなと。運が良いというか都合が良いというか、そんなラストではあったけれど、希望あるラストで良かった良かった。ただ大なり小なり学校の中にこういうことはあって、そしてそれは誰も彼もが、理解して知っていることなのだということが恐ろしい。
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私は似鳥鶏氏の作品はこれまで、楓ヶ丘動物園シリーズしか読んでいなかったので、こんなテイストのものも書くんだな、と少し驚いた。
最近の事例なども取り込んでアップデートを試みてはいるが、扱っているテーマ自体は何ら新しいものではなく、どちらかといえば類型的ですらある。
だからこそ、なぜ今出版するのかという意義を示す上では、表題になっている"一〇一教室"の意味合いも含め、あと一段か二段はストーリーを深化させる必要があったように思う。
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いつもと違う作風で面食いましたが、生々しさと重厚的な描写で引き込まれました。
しかし、ストーリーは体罰の噂がある学園でその実態を明らかにするだけなのでミステリとしての捻りは弱く、主題と思っていた一○一教室がらみのシーンもほぼなく拍子抜けでした。
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カリスマ教育者が作った全寮制一貫校・恭心学園。そこで突然死んだ男子生徒。彼はなぜ死んだのか?
おもしろかったんだけど読むのにつかれた…
(でも先は気になるので読んだ)
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2017.1.28.いつもは軽妙な文体が特徴的な似鳥さんの問題小説。何か怒りがおありになったのだろうか。スパルタ学校の描写が怖くて、おぞましかったがとにかく、何か光を見出したくて一気読みした。無抵抗な者に対する体罰は絶対にダメだと思う。暴れまくっている者を制圧するため、正当防衛のためは仕方ないというレベルで容認されるべきとは思うが拡大解釈を恐れて100かゼロかの議論はナンセンスと思う。先日、関西でとても人気のある高校の特集をやっていたが外に出る雰囲気はこの学校と似ていた。なかはそうでないことを願いたい。
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厳しい教育をモットーにした全寮制私立高校に潜む闇を描き出すサスペンスミステリ。いやほんっと、爽やかさのかけらもありませんでした。嫌すぎる。
教育論や日本人の精神論については、たしかにうなずける部分もないではないのですが。だからってこれは酷すぎる! 世間から隔絶された校内での生活は、それこそ刑務所以上の苦行にも思えます。横行する暴力、虐げられる精神。これは本当に「教育カルト」という宗教に似た恐ろしさです。
だけど本当に恐ろしいのは。そういう学校に子供の教育を丸投げして満足してしまう親なのかも……実際にこういうことが起こらなければいいのですが。現実にもこういう事件があるだけに、考えさせられてしまいます。
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スパルタ教育を行う高校の話。
体罰が常習化し、軍隊並みに規制をされている生徒たち。
そういった学校に入れたいと思う親に対する警鐘を鳴らす作品。
柔道部の練習中に死亡した従弟の死について調べていくうちにその学園の特異性がだんだんと明らかになっていく。
物語は主に「現在その学校に通う生徒」「従弟の死の真相を解明しようとする青年」「学園長へのインタビュー」の三つの視点により展開していく。
体罰により苦しむ生徒の視点は本当に息苦しい。青年が早くこの少年たちを助けてくれないか祈るようにしてページを読んでいた。合間合間に学園長の「体罰というのは悪いものではない。成長に必要なものだ」というインタビューが入るのがまた不気味。
ネタバレですが
最期、101教室という拷問部屋に連れて行かれた少年を青年がやっと助けに入り、少年と青年が出会った時にはほっとした。
でもタイトルにもある101教室。本文ではラストにしか出てこない。もう少しネタフリというか、伏線があってもいいんじゃないかな~と思ったり。でもタイトルにあるからこそのその教室が登場しない不気味さというのもあるのかな?
そして学園が週刊誌により報道され、その後学園長やその他体罰死を引き起こした先生が捕まることになる。学園も閉鎖だったか改善されることになるのだが…
そこでラストショッキングな事実が。
以下、超ネタバレです!
小説冒頭から時折組み込まれていた学園長インタビュー。これが実は事件後、新たな学園を作ったことに対するものだった!
大きな事件になりながらも、やっぱりそういった厳しい学園に子どもを入れたいという歪んだ親はいつの時代にも決していなくならないという…。愛情、支配、教育。現実にもあった戸塚ヨットスクールの話も思いだし、ぞっとしてしまう。
でもエピローグでは学園を無事転校できた少年少女のその後(付き合っているらしい)が、彼らを助けてくれた青年の結婚式に参列するために出かけるという幸せなエピソードで締めくくられていて、後味はそんなに悪くなかった。
でももう二度とは読みたくないかなぁ~。
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従弟の藤本英人が亡くなったと聞き、信じられない気持ちで葬儀に参列した藤本拓也。死因を「心臓麻痺」としか話さない英人の両親、誰ひとり参列していない学校関係者、そして何より、出棺まで一度も英人の顔を見せてもらうことができないなんておかしすぎる。話題の恭心学園に入り、順風満帆だったはずの彼に一体何があったのか。同じ疑問を抱いたという従妹の沙雪と共に、拓也は恭心学園をさぐり始める。
隔離された空間、両極端な昨今の親たち。しつけと暴力の境目が難しくなっているこの世の中、反対に「これくらいやってほしい」という親たちの願いが具現化された恭心学園のような学校が、本当にありそうで怖い。沙雪の正体や、なぜ金尾先生のような人がそもそも赴任しているのかとつっこみどころもあるけれど、果たして生徒たちは無事に抜け出せるのか、拓也らは恭心学園の内情を世に暴くことができるのか、気になってぐいぐい読み進んだ。
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体罰を根元から否定できない
世間体が気になる
暴力をふるうのはいつだって
自分の感情が追いつかないときだ
こどものためではない