紙の本
働いた事のないオッサンと工場主の息子の与太本
2021/07/22 21:36
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カール・マルクスという男は、まともに働いて妻子と女中兼情婦のヘレーネ・デムートを養った事がないのにブルジョワの生活をしようとした一方、貴族出身の妻を自慢していた俗物であり、フリードリヒ・エンゲルスは父親の工場を相続して一生、独身だった男だ。つまり、彼らは言っている事と「実践」(というより実生活)が矛盾するのだ。ブロツキーを持ち出すのは彼に失礼だが、「プロレタリアートの祖国ソ同盟」でマルクスのように働かないで図書館で「都合のいい」論文を探して読む生活をしていたら、逮捕されてラーゲリに送られてしまう。エンゲルスは言うまでもなく「資本家」として「打倒」の対象だ。
ボリシェヴィキ式の独裁体制は売国行為すら実践してしまう(何故かヴラーソフ将軍は同じ事をしても「裏切り者」と罵倒されるのだが)レーニンの「実践」と職業革命家のような手に汗して働かない経験のないような連中がノーメンクラトゥーラとして人民大衆に君臨するから、だけでなく、19世紀の観念左翼の革命家連中の主張と実生活の矛盾が原点なような気がする。もっと言えばロベスピエール的な頭でっかちな「理性」崇拝と恐怖政治の「実践」の矛盾にまで遡るのではないだろうか。
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近代思想を読もうと思って読んでいます
ウェーバーに続き2冊目
左の思想と言うのは実はぼんやりとしたイメージしかなくて、そのイメージと言うのはいわゆる「理想主義」や「絵に描いた餅」と言ったもので
本当の平等を謳ってはいるけど、その理想には生きている人間というものが存在していなくて、そのせいで結局生まれたのは、共産主義という建前を振りかざしたロシアや中国などの独裁国家だった
というように思っていて、イメージでこんな大事なことを決めつけてはいかんと思い、とりあえず共産主義の生みの親であるマルクスを読んでみようと特に有名な「共産党宣言」か「資本論」を読んでみようと思い、図書館にあったがこれだったので読んでみた
読んでみて思ったのは、イメージと対して違わなかった、ということ
共産主義という思想は確かに素晴らしくて、これが無くなれば貧困というものは無くなりそうな気がするのだけれど、実際にはそうなってはいない
共産主義陣営(これも古い言葉だよなあ)の計画経済はことごとく失敗し、そのせいで司令部は混乱し社会は疲弊し、失敗を認めたくないために思想統制をおこない、軍部が実権を握り、結局、破綻している(でも、中国は違うなあやっぱり鄧小平の力なんだろうか)
それもこれも資本主義陣営(特にアメリカなのかな?)からの妨害でうまくいっていないということもあるだろうけど、結局のところ、方法論が良くないのだと思う
まだ一冊目なのでなんとも言えないだけどれど、一部の資本家が富を独占してその他の労働者は資本家たちに従うしかないという論理は、今の世の中でもある程度は当てはまるとは思う
ただし、現在の日本では底上げが相当されていて、そのせいで資本主義という在り方それ自体に対する批判というものは現実的ではない
あ、でもそもそも日本は官僚支配国家なわけで市場原理なんて(業界による)という括弧付きでしか実現していないわけで、しかも大きな政府とか非常に共産主義ていな考えな気もするし
しかもその大きな政府と言うのはヨーロッパの福祉国家なんかのパクリだったりするわけで、ということはもしかしたら共産主義思想が実は現在になって資本主義と融和して実際的な集団に影響を及ぼしていたりするのかなあ
なんてことを考えさせられた
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「共産党宣言」が発表されたのは1848年。マルクスは既に「経済学・哲学草稿」「ドイツ・イデオロギー」などを執筆しており(当時未発表)、廣松渉に倣えば疎外論から物象化論への転回を遂げつつあった。「宣言」は共産主義者同盟の政治的綱領として作成されたものであり、政治的思惑に制約されていたことも想像に難くない。また、「資本論」に結実する本格的な経済学研究を開始する前でもあり、学問的には不十分な点も見られよう。しかし、1883年ドイツ語版序文でエンゲルスも言う通り、「宣言」の根本思想は後年も維持されているのである。邦訳は岩波文庫版をはじめ多数あるが、エンゲルスの「共産主義の諸原理」を併録する講談社文庫版の方が便利だと思う。