逆襲の地平線 みんなのレビュー

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投稿者：ちこ　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

本書は、『暗殺者グラナダに死』（オール讀物推理小説新人賞）、『カディスの赤い星』（直木賞・日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞）、『平蔵狩り』（吉川英治文学賞）などの傑作を次々に発表しておられる逢坂剛氏の作品です。同書の舞台は、1876年の荒々しいワイルド・ウエストの世界を現出させるアリゾナのとある街です。射撃の名手の賞金稼ぎ、記憶喪失のサムライ、天涯孤独の少女のバウンティ・ハンターの三人組に、とある「依頼」が舞い込んできます。莫大な報酬を条件に、10年前、コマンチに掠われた娘を奪還してほしいという依頼です。こうして、壮大なアメリカの大地を縦断する決死の追跡が始まります。逢坂剛氏の超傑作の一冊です！

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投稿者：ナミ　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

往年の西部劇映画を観てるような作品。南のアリゾナから北のモンタナまで約８０００ｋｍにも及ぶ追跡行は、壮大さが売り物の西部劇の醍醐味を満喫させてくれる。時代背景は、インディアンを居留地に押し込めようとして激しい戦いとなり、かの有名なカスター中佐（将軍）率いる第七騎兵隊が全滅するに至る殺伐とした時代で、物語の骨子は実際にあった白人少女誘拐事件をモチーフにしたものとあって実に現実味がある。但し、著者の視点は迫害され続けるインディアンの実情を的確に捕えており、むしろむしろインディアンに好意的なのも嬉しい。また、地図が懇切丁寧なお陰で、如何にも西部を旅してる気分に浸れるのも嬉しい。但し、サグワロ＝ “土方歳三”がスーパースター的活躍をすると期待したのだがそれ程でもないのがちょっと残念。
さて蛇足ながら、評論家・翻訳家の川本三郎の解説にも触れておこう。私的には「西部劇映画を観てるような作品」と評したが、解説者も同じに感じたらしく、解説の中で様々な西部劇映画を取り上げている。まず、本作品のモチーフにもなった実際の事件を題材にした『捜索者』（１９５６年、監督：ジョン・フォード、演：ジョン・ウエイン）。そして諸々の背景を借りてきたと思える作品として『荒野の決闘』（１９４６年、監督：ジョン・フォード）、『裸の拍車』（１９５３年、演：ジェイムズ・スチュワート）、『胸に輝く星』（１９５７年、演：ヘンリー・フォンダ）、『ヴェラクルス』（１９５４年、演：ゲイリー・クーパー）、『レッド・サン』（１９７１年、演：三船敏郎）、『プロフェッショナル』（１９６６年、演：バート・ランカスター）、『星のない男』（１９５５年）、『ゴーストタウンの決闘』（１９５８年）、『壮烈第七騎兵隊』（１９４１年）、『大酋長』（１９５４年）と具体的に題名が羅列される嬉しさ。特に、小粒ながらも私の好きな『プロフェッショナル』（１９６６年）まで挙げられていたのには感激でした。