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バッハ=魂のエヴァンゲリスト(講談社学術文庫)

バッハ=魂のエヴァンゲリスト みんなのレビュー

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一般書

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みんなのレビュー6件

みんなの評価4.3

評価内訳

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紙の本

シューマンやショパンならば、本を読めばCDを聴いてみよう、って思うんですが、バッハとなると、ちょっと構えてしまう。どうも、バッハの権勢欲みたいなものを感じるのか、それとも宗教臭がいやなのか。一度聴くと、当分はいいや、って思うんです、私・・・

2011/06/30 20:44

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

我が家には大量のクラシックCDがあります。いくら1枚100円で買える時代になったからといって、毎月毎月100枚近く買っていたら、それでなくても本が溢れかえる家の中の混乱は、増す一方。結局、土日ともなれば一日中、古典から近代、現代音楽までの種々雑多な音楽が鳴り響くことになります。

テレマン、パーセル、シュッツ、ハイドン、モーツァルト、パガニーニ、ベートーヴェン、シューマン、シュトラウス、ワーグナー、グリーグ、ブリテン、ディーリアス、マーラー、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、グラス、アダムス。ところがバッハだけは、ピアノ曲とオルガン、そしてカンタータの一部しかありません。

夫に確認すると、リヒターのCDが安価な全集にならないものだから、とりあえず名盤の誉の高いものを単発で買っているとのこと。そうなんです、実は我が家にはまとまったバッハのCDが無いんです。そういえば、夫は以前、こんなことを言っていました「バッハの音楽って、たくさんあるんだろうけれど、聴いてると全部同じに思える。それにあの大げさなオルガン曲」。たしかに・・・

音楽家の事跡を辿るよりは、まず音楽を聴く、それが正しいかどうかはともかく我が家流。でも、唯一の例外がこの本。リヒターのCDが安価な全集は当分出そうにないし、とりあえず有名曲は持っているからあえてダブり覚悟でバッハのCDを買う必要もない。それなら、そのときに備えてバッハのことでも読んでみよう、と。カバー後ろ内容紹介は
           *
なぜ心にこれほど深い慰めをもたらすのか。人生へ
の力強い肯定を語るのか。「神の秩序の似姿」に血
肉をかよわせるオルガン曲。聖の中の俗、俗の中の
聖を歌い上げるカンタータ。胸いっぱいに慈愛しみ
渡る《マタイ受難曲》……。三百年の時を超え人々
の魂に福音を与え続ける楽聖の生涯をたどり、その
音楽の本質と魅力を解き明かした名著、待望の新版。
           *
となっています。待望の新版とあるように、「本書の原本は一九八五年四月、東京書籍より刊行されましたが、学術文庫版刊行にあたり、大幅に改訂を加えました。」と注記があります。全体に手を入れているのでしょうが、比較をしないでも分かるのが補章です。ここに数多くの演奏家の名前がでてきますが、これにかなり最近の情報を見ることが出来ます。補 章に登場する演奏家名を大別して列記すれば

1)ウィレム・メンゲルベルク、アルベルト・シュヴァイツァー、エトヴィーン・フィッシャー、ヴァルター・ギーゼキング、ワンダ・ランドフスカ、パブロ・カザルス、カール・ミュンヒンガー、ヘルムート・ヴァルヒャ、カール・リヒター、グレン・グールド、スヴャトスラフ・リヒテル、タチアナ・ニコラエワ、フリードリヒ・グルダ、グスタフ・レオンハルト

2)ニコラス・アーンクール、フランス・ブリュッヘン、クイケン三兄弟、トン・コープマン、トレヴァー・ピノック、ジョン・エリオット・ガーディナー、クリストファー・ホグウッド、アンドラーシュ・シフ、ヘルムート・リリング、鈴木秀美、ルネ・ヤーコブス、鈴木雅明、小林道夫、有田正弘、寺神亮

となり、2)のグループはどちらかというと最近の演奏家といえるでしょう。曲名を見ても、その楽曲が思い浮かばない私としては、音楽的にピンとくることはないのですが、文學的に楽しむという裏技があります。巻末の楽曲索引で、私が気に入った曲名を列記すれば

世俗カンタータ「201 急げ、渦巻く風たち」「206 しのび流れよ、戯れる波」「214 鳴れ、ティンパニよ! どよもせ、トランペットよ!」

と、なります。それにしても、バッハの作った曲の多さといったら、なんだろう、と思います。ともかく毎日のように作っては、教会で演奏する。この本を読む限り、当時の教会には、特別なことでもない限り、毎回違う音楽をかけるという決まりでもあったのだろうと思います。その一方で、少しでも条件のいいとろに就職しようとする、その猟官とでもいいたくなる活動の激しさ。バッハにとって、教会はあくまで音楽を発表しお金を得る場以外のなにものでもなかったのではないか、と思うほどです。そういう意味では、キリスト教とバッハの関係について、磯山が
           *
とはいえ私は、キリスト教の信仰をもつことがバッハの理解のために必須であるとは思わない。(中略)したがって、バッハの本質を理解する鍵は、信仰の有無や宗派の種類ではなく、その人の人生経験の質であると、私は思う。もちろん、キリスト教を勉強し、ルターを研究することは、バッハを理解するうえで、きわめて大きな助けになる。だが、こうした道を歩んだあげく、かえってバッハから離れていった人も、私は知っている。いっそう重要なのは、バッハがルター派信仰の中からすべての人間の生にかかわる普遍の実質を引き出して芸術化したということである。すなわちバッハの音楽は、きわめてキリスト教的でありながら、同時にすべてのキリスト教を超えた普遍性を持っている。その真髄を直観する可能性は、宗派を超えてすべての人に開かれているはずである。
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というのも分からないではありません。ただ、《クリスマス・オラトリオ》について
           *
もしもこの輝かしい作品がなかったら、われわれのクリスマス音楽のレパートリーは、ずっと寂しいものになってしまうに違いない。
           *
と決め付けられると、日本の一般家庭で《クリスマス・オラトリオ》が流されることは無いはずで、そんなにあっさりと〈われわれ〉なんて括って欲しくないなあ、って思います。やはり、これはキリスト教や教会が、日常生活に溶け込んでいる、特に西欧社会での話で、やはり表現には気をつけましょう、と言っておきます。

ちなみに、我が家が東北の震災直後にドイツ、ウィーンを旅していたのですが、教会に入るたびに、多くに人が祈る姿をみては、宗教というものの彼我のあり方の違いに、ああ、これが、と思いました。そしてどの教会も光と音の演出が見事でした。カバーデザインは蟹江征治。最期に目次を写しておきましょう。

はじめに
第1章 伝統からの巣立ち――誕生からアルンシュタット時代まで
第2章 若き日に、死をみつめて――ミュールハウゼン時代
第3章 オルガンに吹きこむ、人間の生命力――ワイマール時代1
第4章 青春の抒情、新様式のカンタータ――ワイマール時代2
第5章 幸せなる楽興の時――ケーテン時代1
第6章 バッハの家庭と教育――ケーテン時代2
第7章 音楽による修辞学――ライプツィヒ時代1
第8章 ≪マタイ≫へ向けての慈愛の熟成――ライプツィヒ時代2
第9章 時流の外に新しさを求めて――ライプツィヒ時代3
第10章 数学的秩序の探求――ライプツィヒ時代4
補 章 二十世紀におけるバッハ演奏の四段階
あとがき
参考文献
人名索引
楽曲索引

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2011/01/01 22:58

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2014/10/05 06:34

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2013/02/23 21:47

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2013/02/26 16:14

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2013/05/30 20:14

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