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時代小説のイメージが変わった!
2018/01/11 01:59
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投稿者:シオ・コージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ふだん時代小説はほとんど読まず、かた苦しいとか古くさいといったイメージを勝手に抱いていたのですが、この小説にはそんなところがまったくありませんでした。
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★4~4.5だが、二十代という今後の歴史小説を背負って立つであろう才能に感謝の意味を込めて。やはりどんな時代でも才ある若者は出てくるなぁ。
さて本作の感想ですが、確かに筋などに粗い部分はあります。でもそれらを補って余るほどのキャラクターの際立ち方など魅力があり、ぐいぐい読ませてくれる。
特に終盤の写楽という素材の扱い方には感心しきり。蔦屋重三郎を主人公にしていればさもありなんという意見もあろうが、写楽と言う誰もが飛びつきそうな材料をここまで「軽く」描写した作品はあまりお目にかかったことがない(当方の読書量不足はひとまずさしおいて)。
とにかく今後の活躍を切に願う作家さんです。
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日本橋の本屋主人、小兵衛と吉原の本屋主人、重三郎による「本屋改革」の話。
蔦重の読めない言動に翻弄されつつ、時には本屋としての情熱を真っ直ぐに表現する小兵衛のやり取りとそれを取り巻く歌麿、京伝をはじめとする江戸を席巻した絵師達のやり取りが面白かった。
ストーリーに引き込まれるうちに、松平定信の治世における社会状況、吉原の特別な立ち位置など自然と理解することができた。
これほどまで魅力的な人々が登場人物として出て来る話はなかなかない。
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蔦屋重三郎、いわずとしれた江戸時代の本屋で大プロデューサー。吉原での蔦屋、日本橋での蔦屋、数々の当時の文化人との交流とその発信力を丹念に物語としても綴る良い作品。笑い有り涙有り。生き生きと当時を表現した文章は見応えのある映画のよう.おすすめです。
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山東京伝、喜多川歌麿、東洲斎写楽らを擁し、時の老中松平定信による寛政の改革という逆風の中、蔦屋重三郎と丸屋小兵衛は次々と問題作を出版し続ける。出版界にとって疾風怒濤の時代を生きた二人の無垢の信頼関係に心打たれた。
著者谷津矢車27歳の作というのも感嘆せずにはいられない!
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蔦屋というタイトルですが、「蔦屋をめぐる物語」というのが正しいかも。主役はある意味「重三郎」ではないです。
面白くは読めましたが、「これ」とは言えないんですが、なんだかちょっと深みがなかったかな~というのが読後の感想です。
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日本橋の本屋を閉店しようとしていた小兵衛の前に現れたのは吉原の本屋を成功させていた蔦屋重三郎。
寛政の時代、出版統制により弾圧を受けながらも夢を追いかけた2人の物語。
爽やかな読後感。表紙にいるのは引札を配っている重三郎でしょうか?
時代小説の若い書き手として次作も楽しみにしています。
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一度は倒産して、蔦谷重三郎に拾われた日本橋の本屋の元主人の視点から見た蔦谷重三郎の話。
「世の中には色んな人がいます。時代の流れに器用に乗れる人もいます。でもその反面、自分の生き方を自分では変えられない人もいます。偏狭な枠組みの中でしか生きられない人っていうのは沢山いる。それを、あたしァ吉原で知りました。だからあたしァ決めたんです。そいう人たちの側に立つって」
こうして、重三郎の哲学が浮かび上がってくる。
世間から一段低く見られていた吉原で育った重三郎が、江戸中を吉原化して、世間を見返してやろうという壮大な理想の下に物語は進む。
前半は吉原の酒池肉林?の中での気違いじみた乱痴気騒ぎに明け暮れ、その時の人脈を見事に仕事に結び付け、型破りな企画でヒットを飛ばしまくる重三郎。
後半は、前半とは打って変って、寛政の改革で取り締まりにあい奈落の底へ突き落され、苦悩する重三郎。
この落差と、がらりとイメージの変わる重三郎の描写が半端ではない。
最終場面で重三郎から本屋の元主人に焦点が移るのが若干の違和感があるが、こういう描き方もあるかなとも思う。
生き方とは何であるか? 如何に仕事を進めていくのか? 何のために生きるのか? 等々を考えさせられます。
また、登場人物を生き生き描写し、江戸時代にタイムスリップしたような感じにさせてくれる文章は見応えのある映画のようです。
著者は若干27歳にしてこの本を書いたという。
恐るべき逸材だと思います。この著者の他の本も読んでみたい。
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江戸の本屋の版元・蔦屋重三郎が“つまんない世の中”に風穴をあける!!
~そっちの方がおもしろいからに決まっているでしょう?~
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江戸って本当に情熱的で、人間的!
この時代の本屋さんが頑張ってくれたから、今の本屋さんがあるんだなぁ。と、しみじみでした。
実際にいた人物だから、余計に心に残った。
小兵衛さん、みんなのお父さんみたいで、素敵な存在でした!
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歌麿や写楽を世に送り出したことでも有名な江戸時代の版元・蔦屋重三郎の話。…ではありましたが、どちらかというと重三郎と共に働いた丸屋小兵衛の人生の色合いが強く出ていた気がします。松平定信の寛政の改革による言論統制のあたりとか史実から大きく外れることは無く、戯作者や絵師との人間関係も、もしかしたらこんな風なであったかもと思われるようで面白く読めました。
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大田南畝や山東京伝、歌麿に写楽といった面々の仕事をとりまとめたプロデューサー蔦屋重三郎を、相棒となった本屋商売の先輩・丸屋小兵衛から眺めた姿で描き出す。狙いが当たって賑やかな前半が、寛政の改革で鬱屈したものとなり、それとともに小兵衛は自らの来し方を振り返る。人が残すものは何なのか。自分は何を残せるのか。重三郎は何を残そうとしているのか。
形に残るものはなくても、縁を残していくのだな、と感じ入る。
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江戸時代に活躍した版元の蔦屋重三郎の話。喜多川歌麿や東洲斎写楽の登場の経緯や、松平定信の改革で萎縮する出版業界の中での主人公の行動などが面白い。現在のレンタルビデオ大手の名前の由来もここにあり、日本の出版界に大きな影響を残したことが分かる。
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時間かかりましたが、やっと読み終えました。
谷津さんがいつも作中に込めている、既存を壊そうとする力が、はっきり感じ取れる、良作でした。
表現活動は怖いものです。
どんな人がどんな受け取り方をするのか。世に出すまで検討もつきません。
誰かを傷付けるのは確かに良くないことだと思いますが、どの方向に牙を向けているのかも、大事なことのように感じます。
自由と言いつつも、どこかに遠慮してしまうような世界なんて、来なければよいのですが。現代は情報に溢れていて、想定ターゲット以外の人が、場違いな情報を手にしてしまうこともあり、難しいものです。
お気に入りは小兵衛さんでした。
終わりかけた人生……なんて思っていたところに現れた重三郎や勇助、他の戯作者のみなさんも魅力的ではありましたが、正体不明で感情移入できぬところもあり、残念。
ラストには涙しました。
やっぱりね、小兵衛さん目線だったのと、それによる人物の厚みがものを言った感じです。
他の出版作品も積ん読中ですので、ぼちぼち読み進めようと思います。
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蔦重の本、しかもストーリーものなんてあまり見かけない。日本のコンテンツビジネスの原点ともいうべき、面白い人物なのに。ということで、貴重な蔦重小説。
飄々と粋で大胆、アイデアあふれる編集者兼プロデューサーとしてのイメージは裏切られない描写で楽しく読めた。ただ今回は、蔦重よりも春町自死で憤り、編集者としての矜持に震える豊仙堂丸屋小兵衛に共感してぐっときた。
吉原での立ち上がりプロセスや日本橋での展開など、事業での活躍とかがもうちょっと読みたかったが、全体に心理描写や情感に主眼があるから仕方なし。ただ、エピローグはやりすぎというか、私にはちょっと甘みが強すぎた。